150万円で買える!? 格安別荘の活用法と注意点
別荘はお金持ちの贅沢――。そんな固定概念を覆すような物件をしばしば見かけるようになった。例えば長野近辺の別荘地で土地建物込み150万円、といった別荘が売りにでていることも決して特殊ではない。こういった別荘を活用する方法はあるのだろうか? それとも何か落とし穴があるのだろうか? 別荘保有者と専門家に聞いた。
現在の別荘のトレンドは? 専門家に聞いてみた
“別荘が高級”というイメージは、既に過去のものかもしれない。日本の人口減にともなって空き家が増えているが、それは別荘に関しても例外ではない。軽井沢などの著名な別荘地でさえも100万円台の物件を多く見かけるようになった。憧れの別荘ライフが格安で手に入るとなると、飛びつきたくなる人は多いだろう。では実際、こういった物件はどのような人が買っているのだろうか。
リゾート物件のポータルサイト「別荘リゾートネット」を運営する唐品知浩(からしな ともひろ)さんは、「現在の別荘事情は二極化してきている」という。
「格安別荘ばかりではなく、昔からあるイメージ通り、広々として暖炉があるような、高級な別荘を保有する文化は健在です。一方で、リーズナブルな別荘を購入してセルフリノベーションするなど、お金をかけずに別荘ライフを楽しんでいる人も増えてきているのも確かです。別荘地を管理する側も多様化しており、2018年6月15日から施行された『民泊新法』に則ったかたちで、民泊を運営できるようにしている別荘地もあります。例えば『オーナーズフォレスト白河別荘地羽鳥湖高原』などは、管理会社が一元化して民泊の運用を管理しています」(唐品さん)
都会での生活に息苦しさを感じ、自然豊かな場所にも拠点を持ちたいと願う人は、若い世代にも多い。そんな新しいタイプのニーズに、柔軟に対応している別荘地もあるようだ。
しかし実際に別荘を購入するとなると、普通の住宅購入とは違う注意点や、普通はかからない経費がかかることもある。特に格安別荘に多い築古の別荘は、安いからと飛びつくと失敗することもありそうだ。実際に築古の別荘を所有する人に聞いた。
安く別荘を手に入れるときに、気をつけなければならないことは?
「150万円や200万円の格安別荘に安易に飛びつくと、思ってもみなかった経費がかかるかもしれません」。そう話すのは、別荘保有者で不動産関係のライターもしているアサクラさん。
「僕の場合は親戚が保有していた築50年の別荘を譲り受けたのですが、維持管理には思った以上の経費がかかっています。僕の別荘ライフを見て『自分も別荘を持ちたい』と決意した友人もいるのですが、一緒に150万円の別荘の内見に行ってみると、修繕にも管理にも経費がかかりそうで、安易に格安の別荘を購入するのは危険だなと思いました。もう100万出して250万円で設備の整った物件を買った方が、その後の経費を考えると安くつく場合もあるのです。 結局その友人は予算をアップして約300万円の別荘を購入しました」(アサクラさん)
アサクラさん自身は祖父から受け継いだ別荘を所有しているが、築50年の家を修繕するのに、結局250万円程かかったそうだ。それに加え、所有にともなうランニングコストも必要になってくる。
築古の別荘を購入後、どのくらいコストがかかった? 所有者に聞いてみた
アサクラさんは東京西部の山間部に、祖父から受け継いだ築50年の別荘を持ち、春は月に1回、夏は毎週のように家族とそこを訪れ、仕事をしたりくつろいだりして、活用している。なんとも羨ましい生活だが、築古の物件を実際に住めるようにするまで修繕するには、かなりの金額がかかったそうだ。
初期修繕費用の詳しい内訳を教えてもらった。
2009年「シロアリ駆除と床下換気扇の設置」約98万円
2011年「ハクビシン駆除」約15万円
2011年「足場を組んで屋根の修繕と外壁塗装」約77万円
2015年「離れの床の補強工事」約9万円
2016年「シロアリ防除剤・防カビ剤の散布」約32万円
2018年「水道管と水栓の修理」約24万円(と、その先の出費も)
総額250万円以上かかり、譲り受けた物件とはいえ、格安別荘を購入する以上の費用がかかっている。
「格安別荘を購入したとしても、メンテナンスの悪い物件を購入すると、同額かそれ以上の修繕費がかかることは覚悟しておかねばならないでしょう。なかでも注意したいのは屋根のコンディションと水まわりです。屋根は僕も77万円かけたように、修繕が高額になりがち。また水まわりの修繕も高額です。下水道のない場所に住む場合には浄化水槽を取り付けるのが一般的ですが、この設置には100万円程かかるのです。ですから屋根の葺き替えが必要だったり浄化水槽がなかったりする物件は、その後に必ずかかってくる費用を価格に上乗せして考える必要がありますね」(アサクラ さん)
また一般的な住宅でも必要な、税金やライフラインなどの維持コストもかかる。参考までにアサクラさんの、年間の別荘維持経費の内訳も教えてもらおう。
火災保険や固定資産税 約8万円
水道光熱費 約9万円
交通費や通信費 約19万円
アサクラさんの場合、別荘の維持コストは年間に約36万円かかっているということだ。当然住んでいる間にどこかが壊れれば、その修繕費もかかる。使わないと家が荒れるため定期的に訪れる必要があるが、そのための交通費もばかにならない。
また物件のある場所が別荘地にあれば、その地域を管理している会社に管理費を払う必要があると指摘するのは唐品さんだ。
「管理会社によって価格はさまざまですが、ゴミ収集や道路の整備は管理会社に委託するので、その為の費用がかかります。加えて留守中の窓開けや、寒冷地であれば冬場にバス・トイレ・湯沸かし器など水を使うところが凍って設備が使えなくなってしまわないよう『水抜き』といって、水を抜く作業なども頼む場合は、追加の費用もかかります」(唐品さん)
家や所有地のメンテナンスには手間がかかる。別荘地に物件を持ち、それらを代行してもらう場合にはそのための費用がかかり、アサクラさんのように自分で行う場合には、交通費などの費用や手間がかかるということだろう。
別荘を持つということは、購入費用以外にもかなりのお金がかかることが分かった。しかし唐品さんもアサクラさんも、「別荘を持つことは、人生を豊かにする」と口をそろえる。確かに、都心の喧騒を離れて、自然と触れ合える居場所があることは貴重だ。またその地で新たな人間関係を築くことができれば、人生の幅も広がりそうだ。
現代は、セルフリノベーションを楽しむことで修繕経費を削減したり、民泊などの制度を利用して使わない間はシェアしたりと、なるべくお金を使わない別荘スタイルも生まれつつある。加えて、唐品さんによれば「今は団塊の世代が別荘を手放すタイミングなので、市場に出回っている中古の別荘の物件数は多い」とのこと。
決して安易な選択肢ではないが、都心で家を買うことを考えれば、別荘を持つ金銭的ハードルが低いことには変わりがない。これを機に新たなスタイルで別荘を使いこなしてみるのも、面白いかもしれない。
●取材協力
・なんでも大家日記@世田谷
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