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日本が人手不足なら、なぜ私たちの給料は増えないのか?(note)

つまり人手不足のはずなのに、ほとんど賃金は上がっていないのです。労働市場が不正常なのか、実は人手不足ではないのか、経済が活性化すれば給料に反映されるという考え方が間違っているのか、果たして何故でしょうか。有効求人倍率、失業率という2 つの指標をまず調べてみましょう。

有効求人倍率の急上昇はどうすれば説明できるのか

求人倍率は、経済統計指標のひとつです。仕事を探している人1人あたり何件の求人があるかを示しています。求人倍率が1.0以上であれば、仕事を探している人数より企業が欲している人数が多い状態を示しています。

求人倍率には2種類あります。新規求人倍率と有効求人倍率です。新規求人倍率とはその月新たに取り扱った求職者・求人数を示し、有効求人倍率とは先月からの繰越分を含めます。一般的には有効求人倍率が用いられるでしょう。

では、1993年から2017年までの25年間の、有効求人倍率の推移を見てみましょう。次の図6-3の通りです。

有効求人倍率の推移

雇用形態は正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員、期間工、労働者派遣事業、請負、嘱託などの非正規雇用も含まれます。そのため、2005年からは正社員のみの有効求人倍率も計測するようになりました。

パートを含めると2014年、パートを除けば2015年、正社員のみでも2017年に有効求人倍率が1.0を超えています。ものすごく右肩上がりの急上昇とも言えます。

では、現状は人手不足だと理解して良いかと言えば、違和感を覚える点が幾つかあります。有効求人倍率は有効求人数と有効求職者数で求まるので、まず、それぞれの内訳を表示してみましょう。時系列で過去と比較ができるよう、1963年から2017年現在までの推移は次の図6-4の通りです。

有効求人数、有効求職者数、就職件数の推移

推移を見ると、有効求職者数は2009年をピークに下がり続ける一方です。ここまでの低さは1993年までさかのぼる必要があります。他の民間の事業も同じように求職者数は右肩下がりなのでしょうか。そんな訳ないですよね。

有効求職者数は「仕事を探している人数」ではない?

そもそも有効求職者数とは、職業安定所(ハローワーク)に登録した求職者数のみを指します。企業に在籍しながら転職した場合や、民間の求人広告・雑誌経由の就職は数字に含まれていません。果たして転職活動にしろ、パート・アルバイトにしろ、職業安定所での就職活動が選択肢に入っている人は、いまどれくらいいるでしょうか。

そのヒントになるのが、有効求職者の就職件数です。有効求人数のうち12万人から最大でも18万人ほどしか就職していません。しかも2012年の18万人をピークに14.5万人まで減少しています。

もっとも違和感を覚えるのは、有効求人数の急激な伸びです。景気の良かったバブル時代、実感無き景気回復と言われた小泉政権時代を大きく上回っています。アベノミクスの成果だと考えても、果たしてこんなに求人数が増えるものでしょうか。そもそも有効求職者がここまで右肩下がりに減り続ける中、職業安定所が「良い求職者照会先」とは思えません。それなのに、企業が職業安定所に求人を出す理由は何でしょうか。

そもそも有効求人数では「とりあえず求人を出した」場合と、「本当に人手不足でどうしようもなくて求人を出した」場合の見極めがつきません。就職活動で言えば、とりあえずエントリーシートを提出した企業なのか、本当に第一志望の企業なのか、企業からすれば見極めが付かないのと一緒です。

正社員の有効求人数、有効求職者数、就職件数の推移

ちなみに、正社員のみに絞ったデータでも見てみましょう。上の図6-5のような推移になりました。

リーマンショックで一気に求職者数は増えましたが、以降は右肩下がりです。おそらく全体の傾向としてこうなっているのでしょう。

有効求人倍率とは2つの指標を割り算で算出して、求職状況を見るのが目的です。しかし、分母に当たる「求職者数」が目に見えて減り、分子に当たる「求人数」が明らかに異常な伸びを示しているのに、素直にこの有効求人倍率を受け止めて良いのかは疑問に感じます。

「一億総活躍」= 非労働力の労働力化

次に失業率を見てみましょう。

失業率の定義は所管する厚生労働省が単独で勝手に決めているのではなく、国連の専門機関である国際労働機関(ILO)が国際基準を設定しています。その国の特殊事情に鑑みて一部変更されていますが、基本的には同じです。

求め方は、失業者を労働力人口で割った値です。労働力人口とは、15歳以上、かつ労働する能力と意思をもつ者の総数を指します。一方で、15歳以上でも家事従事者、学生など労働能力はあってもその意思をもたない人、あるいは病弱者・老齢者など労働能力をもたない人も存在します。こうした層を非労働力人口と言います。労働力人口と非労働力人口の合算が、15歳以上の日本の人口と考えれば良いでしょう。

ちなみに労働力人口と非労働力人口は図6-6のように推移しています。

労働力人口と非労働力人口の推移

労働力人口のピークは1998年に迎え、以降は緩やかに下降していました。しかし第2次安倍政権後、再び労働力人口が上昇し始めています。その理由として、計測以降一貫して上昇していた非労働力人口の活用があげられます。女性活躍、一億総活躍と謳われていますが、要は減少を続ける労働力人口を補うために、非労働力人口に分類されている人たちを労働力に組み入れることが目的の政策だったと、このデータからは言えます。

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