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著しく短縮して語る著作権延長問題の歴史と、これからどうなり、何をしていくのか(骨董通り法律事務所)

(3)付言すると、今回の延長論議の際、一部権利者団体などは「延長とバーターで屈辱的な戦時加算を撤廃できる」と喧伝した。戦時加算はサンフランシスコ講和条約上の義務であり、今や対象国民の私有財産権なので現実味は薄く思えたが、現在まで法的撤廃は実現していない。数ヶ国との間で交換公文が作られただけで、そこには「戦時加算の対処のための民間主導の対話を奨励し歓迎する」「この文書に法的拘束力はない」と記載されているのみだった*18 。
*18:「TPP交渉参加国との交換文書 」『内閣官房』
https://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/13/151105_tpp_koukan.pdf

なお、今回の延長はTPP上の義務ですらなかったが、こうした国際条約(特に多国間協定)での知財・情報ルール作りの課題は、「ポリシーロンダリング」と「硬直性」だろう。つまり、条約上の義務として政府が国外で合意してしまうことで、国内での賛否の議論を回避できてしまうのだ。加えて、情報社会の現実など5年も経てば大きく様変わりするが、条約上の義務は国内法に優先するので、いったん批准してしまえばもう国内法をもってしても覆せない。いわば、情報のルールメイクの力を我々は失うことになる。

この間にとられた対策

大量なコンテンツの権利処理に各国が頭を悩ませる今、国内議論を尽くして守り続けて来た「死後50年」を、条約上の義務もメリットもなく延ばす政府には、今後ますます作品の流通を促進して死蔵から守る責任があるだろう。
実際、この間政府と民間は協力していくつかの作品の活用策を実現して来た。それは延長のデメリットを埋めるには全く十分ではないが、この間進んだオーファン対策やデジタル・アーカイブ振興策、権利制限規定の拡充などはその成果と言える。最近の動きはこちら*19 参照。
*19:「改正著作権法をざっくり俯瞰する~ガンツ先生なら、はたして何点をつけるのか?」2018年5月22日『骨董通り法律事務所』
https://www.kottolaw.com/column/001689.html

これから我々にできること

更に、今後できることを短く挙げてみたい。

(1)絶版など市場で流通していない作品の活用策:いわゆるアウト・オブ・コマースの作品は、権利者が除外しない限り、非営利のアーカイブなどで保存・公開しやすくする制度を検討すべきだろう。米国で保護期間延長の際に導入された「ラスト20年はアーカイブ化を可とする規定」(108条(h))など、海外例も参考に導入を考えるべきではないか。

(2)更なるオーファン対策:現在、探しても権利者が見つからない作品は文化庁の許可を得て利用できる「裁定制度」がある。運用改善は進んでいるが、事前に供託金を算出し納めさせる制度が利用の壁として残る。現実には不明権利者の出現率は極めて低いので、これは撤廃を検討すべきだろう(今次改正で一部のみ撤廃)。

(3)集中管理の推進:権利の集中管理は大量コンテンツの権利処理が時代の要請である以上、進めるべきだろう。デジタルライセンス市場の整備もしかりだ。ただし、今や公共インフラと言ってよい集中管理団体の運営には、ますます公正さ・透明さが求められる。特に集中管理団体が自ら権利期間を延ばすロビイングを行うような場合、政府、そして社会はより厳格な姿勢で臨むべきだ。

(4)意思表示・パブリックライセンスの更なる促進:青空文庫は、「保護期間中でも作者・権利承継者の申し出があれば応じて公開を進めたい」と書いている。自ら公開や活用を希望する権利者の声が、もっと簡単に利用側に届く仕組みが普及すべきだろう。

(5)戦時加算の解消努力

出来ることはまだまだある。延長くらいで意気消沈していては先人達に恥ずかしいのだ。だよね、富田さん。

以上

 
執筆: この記事は福井健策さんのブログ『骨董通り法律事務所』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2018年12月4日時点のものです。

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