Excelsior,Stan Lee スタン・リーの世界(The Spirit in the Bottle)
今回は 小覇王(スサーデス)さんのブログ『The Spirit in the Bottle』からご寄稿いただきました。
Excelsior,Stan Lee スタン・リーの世界(The Spirit in the Bottle)
11月13日未明、寝れずにいた僕がツイッターを覗いていたら突如飛び込んできたのが「マーベルレジェンド、スタン・リー95歳で死去」というニュースだった。
寝れずにツイッター覗いたらスタン・リー逝去のニュースが…クリストファー・リー、水木しげると同じ年に生まれたマーベルマスターがいなくなってしまった…RIP
Marvel Comics Co-Creator Stan Lee Dead at 95 https://t.co/oQHWQAZ2QA @TMZより— 小覇王スー for Vendetta (@susahadeth52623) 2018年11月12日
寝れずにツイッター覗いたらスタン・リー逝去のニュースが…クリストファー・リー、水木しげると同じ年に生まれたマーベルマスターがいなくなってしまった…RIP
Marvel Comics Co-Creator Stan Lee Dead at 95 http://www.tmz.com/2018/11/12/stan-lee-dead-dies-marvel-comics/ … @TMZより
お陰でその日1日は何も手につかない精神状態だった。何しろ95歳、いつかこんな日が来る、というのは覚悟はしていたし、この歳ならどんな亡くなりをしたとしても大往生といえるだろう。ただ直前には映画「ヴェノム」のカメオ出演で元気な姿を見せていたし、それでよりショックだったのも事実。以前に水木しげるが亡くなった時の記事にも書いたが水木しげるとクリストファー・リー、そしてスタン・リーの3人(ついでにいうと亡くなった時期は大きくずれるが山田風太郎も)はともに1922年生まれ。この怪奇とファンタジーの偉大なる創造主が相次いで亡くなってしまった事となる。先述した通り3人共90歳越えの大往生。その意味で寂しさはあるが不思議と悲しさは少ない。最後まで知的好奇心を保ち続けた人に特有の飄々とした人柄もあってまたすぐにひょいっと姿を表しそうな気もする。何より彼らが生み出した幾多もの作品たちが今後も僕達を彼らに会わせてくれる。
僕にとってはスタン・リーはクリストファー・リー、ブルース・リーと並ぶ世界三大リーでもあるわけだが、この「スタン・リー」と言う名前は本名ではなく産まれた時の名前は「スタンリー・マーティン・リーバー」だった。編集人、コミック作家としてのペンネームとして「スタン・リー」を生み出した。本名はいずれ小説家として偉大なアメリカ文学をものにした時用に取っておいた、という理由は有名だ。ニューヨークに生まれ、1939年にタイムリーコミックス(後のマーベルコミックス)に入社、編集や原作(脚本)に関わるようになったリーはまさにゴールデンエイジ※1 から業界にいる生き字引だったわけだが、やはり彼をアメリカンコミックス界における伝説にしたのはシルバーエイジを牽引したことだろう。シルバーエイジは1956年のDCの二代目フラッシュの登場から始まるとされているが、1961年にスタン・リーがアートのジャック・カービーとともに「ファンタスティック・フォー」を誕生させたことが大きい。これまでの完全無欠なヒーローに対し新しいヒーローたちは、人間関係や経済的な悩みも持ち、口げんかも多い人間的な苦悩を備えた存在だった。1963年には打ち切りの確定した「アメイジング・ファンタジー」誌15号に「スパイダーマンをデビューさせる。最初の話は蜘蛛の力を手に入れた科学オタクの少年(ピーター・パーカー)がその力を正しいことに使わなかったばかりに愛する人(ベンおじさん)を失う、というヒーロー物というよりは教訓めいた民話のような物語だったが、これが人気を博し、マーベルを代表するキャラクターとなる。以降スタン・リーは「ハルク」「アイアンマン」「ソー」など現在でも映画などで大活躍するヒーローを次々と生み出し、また「キャプテン・アメリカ」や「サブマリナー」といった戦前から存在するヒーローにも新たな活躍の場を与え、コミックスのルネッサンスを創出することなる。
本来裏方であるはずのクリエイターを前面に出すようにしたのもスタン・リーが最初だ。表紙などにライターやアーティストの名前をクレジットするのはもちろん、末頁には自身と読者の通信欄なども作った。こうした中で「スタン・リー」という名前が世間に浸透していくこと成る。
マーベル・メソッドと呼ばれるアメコミ独特の創作方法を生み出したののもスタン・リーで、これはほぼ一人でマーベルのコミックスのライターをやっていた時期に、プロットだけアーティストに渡し、アーティストはそのプロットにしたがって作画をする、帰ってきた作画に後からセリフを入れていくという日本のネーム先行とは逆のやり方で、捨てゴマを多く使い、流れるように読む日本の漫画と一コマ一コマの絵に力を入れているアメコミの差がはっきり分かれてきたのはこの方式の浸透によるのも大きいと思う。
自己顕示欲の強い、良くいえば自己アピール能力に長けた、悪くいえば他人の名声をも自分のものとしてしまう人物だったのも確かなようでパートナーとして長年タッグを組んでいたジャック・カービーとも仲違いしたりもした。
スタン・リーはよく「日本でいうところの手塚治虫的存在、彼がいなければ今のコミックシーンはぜんぜん違うものになっていただろう」などといわれる。僕もその意見には異存はないけれど、単に作品の創出する作家としてだけでなく、物語を越えて活躍するヒーローキャラクターの創造という点ではむしろ石ノ森章太郎(そしてそのアシスタント出身でやはり多くのキャラクターを創出した永井豪)の方により近い気がする(もちろん手塚治虫も単にキャラクターの創出という点でも凄いけれど)。ともに作品を読んだことがなくてもキャラクターは知っている人は多いだろう。今年はちょうど石ノ森章太郎生誕80周年であり没後20年でもある。
ここからは僕の妄想で全く根拠は無いのだけれど、以前から日本の誇るスーパーヒーロー番組であるスーパー戦隊シリーズ元祖「秘密戦隊ゴレンジャー(1975年)」には「X-MEN(1963年)」のオリジナルメンバー(サイクロップス、ビースト、エンジェル、アイスマン、マーベルガールの5人)の構成とコスチュームのデザインがアイデアの一助として影響していると思っている。原作版「仮面ライダー」の本郷猛と執事立花藤兵衛の設定は「バットマン」の影響が強いし、当時の漫画家は今以上にアメコミを読んでいるし影響を受けている。
もちろん、「ゴレンジャー」はそもそも「複数の仮面ライダーによるチームヒーロー」というコンセプトが東映側から提案されたり、石ノ森章太郎にはすでに「サイボーグ009」というヒーローチームの金字塔的作品があり、ゴレンジャーから始まってスーパー戦隊の特徴である敵怪人との対決前の名乗り、口上は歌舞伎の「白浪五人男」が元ネタとしてあるように幾つものアイデアが複合して出来上がったものだけどその一つとして「X-MEN」もあるのではないかと思う。
そうでなくても石ノ森章太郎原作ではなくなったスーパー戦隊シリーズ第3弾「バトルフィーバーJ」※2 は東映とマーベルコミックスの提携によって産まれた作品第2弾だし(第1弾は最近逆輸入の形で本家にも参戦した東映「スパイダーマン」)、「マーベル+ゴレンジャー」と言う形で産まれた「スーパー戦隊シリーズ」はのちに「パワーレンジャー」として世界的に展開していくわけで、日本、アメリカのみならず世界中の子どもたちはスタン・リーと石ノ森章太郎の影響を受けずに育つことはないのである(大げさだが実際そうだと思う)。
長年マーベル・コミックスの発行人として活躍し続けていたスタン・リーだが最近は日本との関わりも深く、「HEROMAN」「機巧童子ULTIMO」「THE REFLECTION」などを日本のクリエイターとともに手がけていた。
「HEROMAN 1 (ガンガンコミックス)」2010年3月20日『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757528213/susahadeth-22/
「HEROMAN Vol.1 (初回限定版) [Blu-ray]」2010年8月18日『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003LEQH18/susahadeth-22/
最近の活躍でいえば映画の特に自身が原作としてクレジットされている作品の映画化作品においてカメオ出演するおじいさんとして知る人も多いだろう。2000年の「X-MEN」からほとんどの作品に顔を出し、その特徴的な姿を見せている。マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるスタン・リーはこの世界を観測する役割を持った「ウォッチャー」なのではないか?などという説がファンの間ではまことしやかに語られ「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーリミックス」ではその冗談を受けた出演の仕方をした。僕が好きなスタン・リーのMCUでのカメオ出演は「インクレディブル・ハルク」で、ここではハルク(ブルース・バナー)の血が混入したジュースを飲んで昏倒するという役を演じていて、お陰でハルクの居場所がロス将軍にバレる、というMCUの中ではほぼ唯一物語にも関わってくる役として出ている。
最後に、僕がもっとも好きなスタン・リーの出演シーンと、コミックスを紹介して終わろう。まずはケビン・スミス監督作品「モール・ラッツ」。ここで恋人に振られ「もういい加減大人にならなきゃな」と思っている主人公の前にスタン・リー本人として現れる。興奮した主人公(「FF」のゴム人間リード・リチャーズの股間はどうなっているのか?と執拗に質問する)に呆れつつ自分らしくあることの素晴らしさを説き、主人公を発奮させる。
「Mallrats – Brodie Meets Stan Lee」『YouTube』
https://www.youtube.com/watch?v=YFLlwtqHINs
「モール・ラッツ [Blu-ray]」2012年8月22日『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008BEF5JS/susahadeth-22/
コミックスではやはり”キング”ジャック・カービーとのタッグ作である「ファンタスティック・フォー」のシルバーサーファーとギャラクタス襲来の一連のエピソード。僕はマーベルのキャラクターとしても作品としても「ファンタスティック・フォー」自体は「スパイダーマン」や「X-MEN」に比べるとそれほど大好きというほどでもないのだが、このエピソードだけは別格。友達の持っていた光文社からでていた白黒の翻訳コミックスを借りて読んだ。本来フルカラーであるのに対して白黒になり、小野耕世氏による翻訳は子供向けになっていたが、そのストーリーの壮大さ、個性的なキャラクターの魅力、」ジャック・カービーの力強い絵の魅力とすべてが衝撃だった。僕を決定的にアメコミの道に踏み入れさせたのは間違いなくこのエピソード。
「ファンタスティック・フォー2巻 光文社 マーベルコミックス 」1978年『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B010FMAEY4/susahadeth-22/
とりとめなく書いてきたが少しでもこの偉大なクリエイターのことを知っていただけたら幸い。」そして作者はこの地上から去ったが、作品とキャラクターは残り続けるのだ。作品を読めば、そして見ればそこにスタン・リーは存在する。影響は今後のクリエイターたちにも与え続けるだろう。
EXCELSIOR!
R.I.P Stan Lee(1922~2018)
EXCELSIOR,STAN
「ベスト・オブ・スパイダーマン (ShoPro Books)」2012年10月31日『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4796871349/susahadeth-22/
「スパイダーマンTM 誕生の秘密-スタン・リーの世界- [DVD]」2009年9月2日『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B002EBW7U4/susahadeth-22/
※1:初期の1930年ごろから1938年のスーパーマン誕生を経て始まる最初のコミック全盛期
※2:石ノ森原作でなくなったことや巨大ロボットが登場することからシリーズ初期はこの作品を第1作とすることあった
執筆: この記事は 小覇王(スサーデス)さんのブログ『The Spirit in the Bottle』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年11月19日時点のものです。
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