ハチスノイト、ロンドンからの近況報告―OTOTOYメールインタビュー
2017年に日本からロンドンに拠点を移して活動を続けているシンガー、ハチスノイト。
渡航後も、ロンドンのポストクラシカル名門レーベルErased Tapesからアナログ盤『Illogical Dance』をリリース、ヨーロッパ各地の音楽フェスへの出演等、精力的な活動をしている彼女に、メールインタビューを行い、現地での活動の様子を綴ってもらった。
――現在はロンドン在住のようですが、どのようなエリアに住んでいるのでしょうか。
現在、私が住んでいるのはイーストロンドンと呼ばれるエリアです。ロンドンの中心の観光地からは少し離れていて、比較的静かで中心地に比べると家賃が安いので、アーティストの人たちがたくさん住んでいるエリアです。こちらに引っ越してきて1年と少し経ちました。やっと英語や生活にも少しずつ慣れてきたところですね。
――海外に移って良かったと思うこと、逆に苦心していることは?
こちらに引っ越してきて良かったなと思うのは、自分とは違う文化や価値観の人たちに囲まれて暮らせることですね。とても刺激になります。国籍だけで言っても、周りを見たら「生粋のイギリス人」なんて半分もいないような気がします。ロンドンは特に移民が多いので、そういう意味では過ごしやすいです。
音楽面で良かったことは、私のようなジャンルでも、ちゃんと正面から受け入れて評価してもらえることです。日本と比べるとインディーズのシーン自体が大きくてしっかりしているので、みんながみんなメジャーやポップスを目指さなくても、それぞれの音楽で生きていける土壌があるのはすごいところだと思います。
またインディーズでも、アーティストとそれをサポートする周りの人たち(マネージャー、PR、ブッキング、権利の管理など)の役割分担がきっちりしているので、アーティストが自分の制作に集中できる環境があるのは素晴らしいと思います。それと印象的なのは、日本では音楽と社会的、政治的なことを結びつけるのを避ける風潮がありますが、こちらのミュージシャンは社会的な自分の立場を活動の中ではっきり主張することが多いことです。
例えば、(企業の広告塔にはなりたくないという意味で)企業のタイアップを受けたイベントなどで企業ロゴがステージにある状態で演奏するのを嫌がったり、企業のCM音楽は作りたくないという人も結構いるんです。日本では自分の曲が大きな企業のCMに使われるってすごいことみたいなイメージがあったので、真逆の発想というか。そういう意味では自分はどういう立場でどういう考え方をするのか? を常に考えさせられます。
――SNSに活動の様子を時折アップしていらっしゃいますが、ライヴ・レコーディング等、海外でどんな活動を経験してきましたか。
今年はイギリス、ドイツ、イタリア、エストニア、ラトビアなどのフェスティバルに出演しました。こちらの人たちは都道府県を移動するみたいな感覚でヨーロッパの国々を行き来してライヴ活動をしているので、こういう環境は本当にいいなと思います。最近、ロンドンで初めて女性クワイヤとのコラボでライヴを行ったのですが、久しぶりに大人数のチームで編曲、練習、本番という過程を経験して、本当に楽しかったです。
また、こちらのレーベルメイトのピーター・ブロデリックやルボミール・メルニクのライヴやレコーディングに参加したり、去年レーベルの10周年コンピに参加した時はベルリンのスタジオにこもってみんなで曲を作ったり、ニルス・フラームの制作現場にお邪魔したり……そういう経験や環境は、自分の制作にも本当に良い刺激になっています。
――今後はどんな活動を予定していますか?
現在アルバム製作中です。来年2019年には出せれば良いなと思っています。また、制作ではないですが、この冬Meredith Monk(メレディス・モンク)のニューヨークでのワークショップに参加することになりました。一つの夢でもあったので、とても楽しみです。
———————————————————————————————————————————–
今回、フェス出演などで多忙な中、結構な無理を言ってメールでお答えいただいたのだが、アーティストの制作環境や、活動に対する姿勢等、なかなか興味深い話を聞くことができた。海外での活動から、どのようなアルバムが生まれるのか? 今後の活動に注目していこう。
メール取材・文:岡本貴之
・ハチスノイト Facebook
https://www.facebook.com/info.hatisnoit/
・ハチスノイトの作品はOTOTOYから配信中
https://ototoy.jp/_/default/a/95222
・ハチスノイト『Illogical Dance』特集ページ
http://ototoy.jp/feature/20151210
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。