ADHDと診断された営業マンが明かす当事者のリアルとは?
スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ……。「発達障害」という言葉がメディアを賑わせる昨今、彼らのような名だたるIT企業の創始者や、かのエジソンやアインシュタインといった偉人や天才も発達障害だった、という言説を目にする機会も多いのではないでしょうか。
しかし、本書『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』著者の借金玉(しゃっきんだま)さんは、自らの半生を振り返り、以下のように述べています。
「僕を失敗に導いたのは、まさしくそのような発達障害者たちの神話でした」(本書より)
実は借金玉さんも、大学生の時に発達障害「ADHD(注意欠陥多動性障害)」の診断を受けたものの、発達障害の自分には常人にはない特別な才能があるかもしれない、という根拠のない自己認識のまま、発達障害の対策を取ることもなく、適性のない業界に就職し、その後に起業するも失敗。
「僕はジョブズではない。エジソンでもない。社会の中で稼いで生きていくためには、己を社会の中に適応できる形に変化させていくしかない」(本書より)
失敗を繰り返した結果、ようやく自身の問題と向き合った借金玉さんは、一歩一歩努力を重ねる日々を送り、現在は営業マンとして新しい職場で働くことができていると言います。
もちろん、発達障害を持つ人々の中には秀でた才能を持ち、科学者や学者など研究職や専門職、会社経営者など、自分の適性を生かせる環境で力を発揮している人も存在しますが、そのような成功者はごく一部。ほとんどの発達障害者が、何らかの生きづらさを抱えながらギリギリの生活を送っているのが現実であり、”発達障害者=天才”神話を鵜呑みにしてしまうことにはリスクがあると指摘。発達障害に対する誤解を招くほか、自分の特性を客観的に把握することが困難な当事者が、障害と向き合うことからますます遠ざけてしまうと述べられています。
本書では、著者自身の試行錯誤の体験をもとに、当事者が感得することが難しい”暗黙の了解”を、「部族の掟」や「見えない通貨」に例え、明快に言語化。当事者目線で社会生活を円滑に営むためのルールを解説するなど、当事者本人はもちろんのこと、職場の人間関係に悩む人々にとっても役立つ1冊と言えるでしょう。
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