離れがたい居心地のよさがある、星野リゾート【OMO7 旭川】現地ルポ
「地元民がお勧め」、「地元民が太鼓判」などという言葉には、独特の説得力がありますよね。旅先で「地元の人が通う」と聞けば、それだけで行ってみようかなという気持ちになれます。ましてや、旅先に友人や知人が居て、その「地元の人」に案内してもらえるとなれば、これほど心強い味方は他に居ません。しかし、日本全国、あるいは世界各国に友人・知人が都合よく居るはずもなく、道行く地元の人に気軽に声をかけてお勧めのお店を聞いて回るほど度胸のある人も少ないはず・・・。
OMO7 旭川
そこで今回は、星野リゾートが立ち上げた新ブランド「OMO(おも)」を紹介します。星野リゾートと言えば「星のや」、「リゾナーレ」、「界」などのブランド展開で宿泊施設を運営する企業ですが、「OMO」は星野リゾートが新たにスタートさせた都市観光ブランド。まさに「地元民」しか体験できないようなディープな体験を、ホテルのスタッフが独特なスタンスからサポートしてくれるサービスが売りとなっています。
今回は2018年4月28日にオープンしたばかりの「星野リゾート OMO7 旭川」、その魅力を紹介したいと思います。
『ホテルから半径1km圏内』の場所に約3000軒もの飲食店がある旭川
OMO7 旭川
旭川という町を訪れた経験はありますか? 札幌に次ぐ北海道第2の人口34万人都市で、市役所の広場で話す機会のあった土地の古老によれば、明治35年に陸軍第7師団が置かれてから、軍都として急速に発展した歴史があると言います。師団の戦車、大砲、ほろトラックが沿道の家々を揺るがしながら通過すると、子どもたちが軒先に飛び出しては、行き交う軍人を見守っていたのだとか。
その師団が行軍したメインストリートを師団通りと呼び、その通りは歴史と共に名称を変え、今も旭川平和通買物公園として市民に親しまれています。名称からも分かる通り、昭和47年に日本初の「歩行者天国」(歩行者専用道路)として買い物客を楽しませてきた歴史を持ち、現在でも周囲にはさまざまなショップ、飲食店が建ち並びます。
旭川平和通買物公園
特に旭川平和通買物公園が3条通と交差する地点から少し歩くと、一帯には通称「さんろく街」と呼ばれる、札幌のすすきのに次ぐ歓楽街が広がっています。聞けばホテルから半径1km圏内に3,000軒の飲食店が密集しているそう。人口190万都市の札幌にあるすすきのの飲食店が6,000軒と言いますから、人口の比率で考えると、驚くべき数字ですよね。
地元の新聞社が命名したとも言われるその「さんろく街」の周辺を実際に歩いて見ると分かりますが、同地はまるで「迷宮」のよう。雑居ビルのアプローチが中小路の入り口になっていたりして、旅人には攻略が不可能なエリアになっています。
夜の繁華街
しかし、旭川には道内有数の規模を誇る旭一旭川地方卸売市場があり、日本海、オホーツク海、太平洋の魚介類が集まる土地となっていて、畜産業も農業も盛ん。おいしい食材の宝庫ですから、地元民も絶賛するようなディープなグルメスポットに飛び込んで、北海道の食をとことん満喫したいですよね。そうした旅人のニーズに大いに応えてくれる案内サービスが、星野リゾート「OMO7 旭川」のユニークなサービス「Go-KINJO」になります。
ホテルスタッフが現地の名店を案内してくれるサービス「Go-KINJO」が売り
「Go-KINJO」とは、スタートしたばかりのユニークな取り組みで、「とにかく都市観光を楽しみたい!」というゲストに提供される、ご近所案内サービスになります。主なサービス内容は、
・宿泊者に限定で配布されるご近所マップの提供
・館内ロビーに掲示された直径2mのご近所マップによる情報提供
・ホテルスタッフがガイド役を務める道案内サービス
などが含まれています。
特に注目は、スタッフがガイド役を務め、一緒に街を歩いてくれる案内サービス。「ご近所専隊OMOレンジャー」と称し、普段はフロントやバルのソムリエとして勤務するホテルスタッフが、無料、あるいはプログラムによっては有料で街歩きに同行してくれます。
筆者が取材初日の夜に一緒に繰り出した「OMOレンジャー」は、青色のパーカーを着た「OMOブルー」。専門は旭川の定番グルメになります。さすがに普段から街中の飲食店を食べ歩き、日参してお店の側と連携をとっているだけあって、レンジャーの紹介してくれるお店はどこも外れがありません。
例えば1軒目に連れて行ってくれたお店は、5条通7丁目にある「ふくろう亭」、手元の資料によると27年の歴史を持つ地元の名店になります。
出てくる刺身は鮮度が抜群でうまみに優れ、地元の酒米を45%まで精米して作った、高砂酒造の純米吟醸酒「大雪」とのマッチングも最高でした。道産のアスパラガスをシンプルにバターしょう油でいためただけの料理も、参加した筆者らをとりこにします。
筆者を含めた参加メンバーは2階の座敷席に通されましたが、空間を分け合うように2階には団体が入っており、会社の慰労会のようなうたげが盛大に開かれていました。1階のカウンター席にも、常連風のお客さんが常に入っています。人気のほどが分かりますよね。
2軒目のジンギスカンのお店「ひつじ家」も大当たり。保存の段階で一度冷凍をしている生ラムを炭火で楽しませてくれるジンギスカン屋で、サッポロビールクラシックが進む見事な味わいでした。酒に弱く顔がすぐ赤くなってしまう筆者は取材中なので酒量を自制しましたが、臭みのないラムとご飯にビールが最高にマッチして、「プライベートでまた来よう」と心に誓ってしまうほど。
案内された小上がりの席からテーブル席を振り返ると、地元の常連客とおぼしき男性が、「一人ジンギスカン」を楽しんでいます。地元民に愛される名店といった雰囲気たっぷりですよね。一般の観光客は予約できないケースもあるほどの人気店との話ですから、お得な気分にもなれます。
無料のお散歩ガイドとの街歩きも楽しい!
夜には「OMOブルー」に旭川の定番グルメを紹介してもらいましたが、翌日の昼には緑色のパーカーを着た「OMOグリーン」にも、無料で旭川の街歩きをサポートしてもらいました。やはり、「ブラタモリ」(NHK総合)を見ても分かりますが、ガイドと共に歩くかどうかで、町の見え方は全く変わってきますよね。「OMOグリーン」の場合は、町の歴史、通りの由来、地元で人気のカフェ、雑貨屋、チーズ屋などを歩きながら次々と紹介してもらえます。
「おいしいラーメン屋は?」と聞くと、「google」や「食べログ」よりも豊富な情報量と確かさで即答してくれますし、逆に街を歩いていて、おいしそうな店構えの店舗があっても、「ここは?」と聞くと、味と評判が伴わなければ「ここは・・・」と、やんわり否定してくれます。
また、レンジャーに限らず「OMO7 旭川」の従業員は、地元に根差した方々が大勢居る印象があります。「OMOグリーン」との街歩き取材に同行してくれた広報スタッフの1人も、筆者が入りたいと希望した人気カフェに一緒に入店した際、カフェオーナーの珍しい名字からお互いの子どもが同じ習い事をしていると気づき、地元トークを開始していました。
筆者も地方都市に暮らしていますが、地方都市らしい「世間の狭さ」が感じられて、思わず笑ってしまいました。なんだか旅先の「見知らぬ地元民たち」に、人間味と生活の背景が感じられて、急に親密さを感じた瞬間でした。
「OMO7 旭川」は旭川「No.1」のホテルをリニューアル
もちろん、「OMO7 旭川」の魅力は、「ご近所専隊OMOレンジャー」だけではありません。まずホテルそのものの歴史と格式が挙げられます。地元テレビマンの古い友人に取材の空き時間で再会して聞くと、旭川に要人が訪れるとき、滞在先は決まって「旭川グランドホテル(現OMO7 旭川)」、その次に「アートホテル旭川」になるのだとか。
数年前に安倍晋三首相が旭川に訪れたとき、「アートホテル旭川」に宿泊したため、「あれ、なんでグランドホテルではないの?」と疑問にすら感じたと言います。地元ではそれだけ、伝統と格式のあるホテルなのですね。
ロビーにある読書スペース「ブックトンネル」
手元の資料によると、ホテルの始まりは大正9年。昭和、平成の時代を経て名称が何度か変わり、新築、増改築が行なわれていますが、平成6年には旭川グランドホテルとして道北随一の高層建築のホテルに生まれ変わります。その後の平成29年4月に星野リゾートが運営を引き継ぎ、現在の「OMO7 旭川」にリニューアルとなりました。
リニューアルに際して内装も大きくリノベーションされています。例えばパブリックスペースのロビーラウンジには、北海道の森をイメージしたシラカバのテーブルと丸太の椅子が配置されました。旭川家具の机と椅子、300~350冊の地元に関する書籍を集めた読書スペース「ブックトンネル」、カフェ&バルも設けられています。
全237室ある客室のうち115室は、シングルルームをリノベーションを経て18㎡のツインルームに変更されています。2つのベッドをL字に配置して、ベッド間にカウンターテーブルを設けるユニークな空間。
18㎡とは都会の単身向けワンルーム、もしくは1DKのアパートと一緒くらいの広さですが、壁紙の色が空とラベンダーを象徴する青と紫になっているせいか、どこか癒やされる雰囲気があり、窮屈さは感じません。ベッドの下も巨大な収納空間になっているため、大きなスーツケースも簡単に蹴り込め(押し込め)ます。部屋が荷解きした持ち物で圧迫される心配もありません。
部屋のコート掛け。備え付けの部屋着もつるされている
窓からの展望も見事です。「OMO7 旭川」は上述した通り、旭川で最も高層の建築物になります。景色を遮る建物が周囲にほとんどありませんので、遠景には上川盆地(旭川盆地)を囲む山並みを、中景と近景には直線で構成された都市の景観を一望できます。
ガーデンルーム (C)Hoshino Resorts Inc.
上述した115室とは別に、旭川で有名な上野ファームの上野砂由紀さんとコラボした、36.8㎡のガーデンルームも4部屋あります。地元の優れた人材と積極的に関係を持ちながらホテルを運営する星野リゾートらしいコンセプトルームで、後に近所の上野ファームにも実際に足を運んでみましたが、ファーム内で感じた道北の初夏の快さが、室内でも表現されている気がしました。都市の中でよりリゾート感を満喫したい場合は、真っ先にチョイスしたい部屋ですね。
共有スペースの居心地の良さが格別な「OMO7 旭川」
「OMO7 旭川」の魅力は、1階ロビーにあるOMOカフェ&バルの飲食にもあります。ディナーはありませんが朝食とランチが充実していて、特にビュッフェ形式の朝ごはんのおいしさは、同行した取材陣が後先の仕事を考えずに「食べ過ぎた」と口をそろえるほど。手作りのワッフルからとろろ昆布入りのみそ汁に至るまで、いつまでも居座って全料理に手を伸ばしたくなるような味わいでした。
ランチでは、「ホテルと言ったらおいしいサンドウィッチ」という総支配人の思いの下で誕生した、ぜいたくすぎるサンドウィッチが楽しめます。取材時に提供されたサンドウィッチは、肉厚でジューシーなホッケのフライを、カレー風味のタルタルソースで味付けしたボリュームたっぷりのサンドで、ふんだんに挟み込まれたちぎりレタスの鮮度も申し分なく、歯を入れると気持ちよい音を立てていました。
ホッケフライのサンドウィッチ
16:00~22:00に設定されたバータイムの魅力も見逃せません。取材時には地元のディープな名店をはしごする前に、パルマ産生ハムと北海道のワイナリーの希少な赤ワインを楽しませてくれました。バルに立ち寄って、ワインと生ハムを楽しんでから、ほろ酔い気分で初夏の街に繰り出すなんて、ぜいたくな体験ですよね。
OMOカフェ&バルは22時(ラストオーダーは21時半)までやっていますから、逆に街歩き後に道産のフルーツをふんだんに使ったパフェで1日を締めくくる楽しみ方もあります。パフェをつつきながら道北の旅を振り返れば、ついつい長居したくなりますし、バルが閉まった後も「このまま眠るのはもったいない」という名残惜しさまで感じられるはず。筆者は仕事のため部屋に戻りましたが、プライベートで来ていれば、きっとパブリックスペースのテーブルかどこかでコーヒー片手に過ぎ越し方を旅の仲間と語り合っていたと思いますよ。
以上、旭川にある星野リゾート「OMO7 旭川」の魅力になりますが、いかがでしたか?
先ほどは部屋に戻ったと書きましたが、実際は取材の当日、部屋に戻り、シャワーを浴びて、ブラジル代表対コスタリカ代表のサッカーW杯1次リーグの深夜放送を見ながらブラジルの劇的勝利を目撃すると、「やはり、このまま寝ている場合じゃない」と、結局一人でロビーに戻ってしまいました。勢い余ってそのまま、再び夜の旭川の散歩にも繰り出します。
ロビーに置かれたシラカバのテーブル
その時点で街歩きのプロである「OMOグリーン」の案内は受けていませんでした。しかし、飲み歩きのプロである「OMOブルー」に軽くホテル周辺の解説を受けていたので、その情報を頼りに旭川駅の方を目指して歩いてみます。
深夜の旭川平和通買物公園は若者がスケートボードを楽しんだり、「バス終わっちゃったよ」とつぶやきながら、隣の女の子と何事かの展開を期待している男子学生が居たりと、とてもいい雰囲気。
街角には女性2人組のストリートミュージシャンが居て、声をかけるとコーヒー世界の豊かさについての歌を歌ってくれます。素敵な歌声をベンチに座って聴いていると、自然と心が落ち着いてきて、「カフェオレでも買って帰って寝るか」という気持ちになれました。
パブリックスペースに離れがたい居心地の良さがある「OMO7 旭川」。おかげで「おまけ」の深夜の街歩きまで楽しめましたよ。
OMO7 旭川
https://omo-hotels.com/asahikawa/
住所 北海道旭川市6条通9丁目
電話 0166-29-2666(OMO7 旭川宿泊予約 10:00-19:00)
[Photos by Masayoshi Sakamoto]
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