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となりの猫が住み着いた ~まさか!イルカさんの本名~

報道されている通り、只今高知県は、台風、豪雨、暴風雨の毎日。各地の被害も深刻で、防災速報のアプリが鳴り続けています。海が近いですが、ここ矢井賀は何とか無事です。ご心配くださった皆さま、ありがとうございます。

ちなみにオルカさんは雨の日がなにより大嫌い!じめじめしたお部屋を許すことができません。

(除湿いれたまえ!!除湿を!)

このように大変不機嫌でございます。ですから、梅雨から夏にかけて我が家は24時間エアコン稼働しているのですが、そんな贅沢病のオルカさんとは対照的に、過酷な夏も、凍える冬も、果敢に外で喧嘩を売っている猫がいます。

お久しぶりです!イルカです。

彼の名は「イルカさん」。私が勝手につけている名前です。オルカと同じ、ロシアンブルー(たぶん)で、年も同じ8歳(たぶん)の猫。私のコラムでは常連のお猫様です。

私が、この町に来たばかりの頃は、それはそれは厳ついオラオラ系で、泣く子もだまるご近所最強の猫でした。ところが、昨年の夏が終わり、秋が来るとそんなイルカさんに大きな変化がありました。

ある雨の降る夜。我が家の軒先に置いていた段ボールに、イルカが入って寝ていたのです。次の日も、その次の日も、イルカさんは我が家の軒先で過ごしていました。

そして、明らかに以前と変わったのは、体調でした。足はふらつき、風邪をひき、全身がか細くなっている。あの厳つかったイルカの姿は見る影もなく、歩く姿はよぼよぼのおじいさんです。少しの段もあがることができなくなっていました。

どうしよう。
実は、イルカの飼い主さんは、うちの隣の漁師さんなのです。

漁師のおんちゃん(おじさん)に、「猫がうちに来て弱ってるよ、どーする?」と聞くと、おんちゃんはイルカが矢井賀にやってきた経緯や、年齢、最近ご飯の時間しか家に帰ってこなくなったことなど、いろいろと話してくれました。

そして、その時に、衝撃の事実を知ることになるのです。

まさかの本名はなんと…

私が勝手に「イルカさん」と呼んでいたその猫は、実にたくましい名前の持ち主だったのです。

その名は・・・熊。

く・ま・です!

熊って(笑)。

耳を疑いましたが、確かに、「熊」だそうです。
そんな熊はお年を召しているので、もう長くないだろうと漁師さんは言いました。漁師さんのお家の中には、熊専用の寝床が3カ所もあります。それなのに、このところ自宅には帰らず寒い外で過ごしてばかり。

猫はよく、死ぬときはどこかへ行ってしまうと言われるけれど、熊も少しずつ飼い主さんの元を離れようとしているのだろうか。

そして、思い切って漁師さんに病院連れていく?と聞いてみると「熊はもう年だし、おん(オス)だから喧嘩もすらぁね」という返事。治療するという選択肢は、動物病院のない過疎の町ではまだまだ浸透していません。でも、どことなく漁師のおんちゃんは寂しそうな目をしていました。

その後、熊は日に日に衰えていき、立ち上がるのがやっと。いよいよ鼻水で顔もくちゃくちゃになり、とうとう一日のほとんどを我が家の軒下で寝ている状態になりました。

病院へ連れていくのか、このまま自然に亡くなるのを待つのか…。

飼い主ではない私に何ができるのだろう。いろんなことを考えましたが、まずはとにかく暖かくしてやろう。ということで、我が家の軒下に熊のお家を作ってあげることに。猫ヲタ&クリエーターのあいさきちゃんにお願いして段ボールハウスを作成。

ものの10分で完成しました。

nyamazon ハウスはすぐに熊も気に入ってくれました。
中に暖かい毛布をたくさん敷いてあげました。

次に食事。漁師さんのところでも食べていましたが、体力がしっかりつくように、高栄養食を追加してあげることにしました。

あとできることは、こまめに見守ることくらい。

プライドの高い熊は、自分の縄張りに他の猫がくると、ふらふらしながらも外へ出ていき果敢に向かっていきます。そんな時は、私も走って行って、仲裁に入ります(熊が他の猫に勝てる気がしないので…)。

そんなことを続けて数週間。

そのうちに高知の天気が少しずつ回復。晴れる日が多くなってきました。昼間は温かい日差しで寒さもやわらぎ、熊もダンボールハウスから出てきて、日向ぼっこ。

相変わらず足はふらついていましたが、どんどん元気を取り戻していきました。

そしてすっかり復活を遂げた熊が、突然私の前にやってきて、ゴロン。
今まではとてもクールだった熊が、お腹を見せてくれたのです。

喜んだのも束の間。その翌日、熊が段ボールハウスに戻ってきません。不安になり、探し回りましたがどこにも姿が見えません。いよいよ遠くへ行ってしまったのだろうか…。

すると、お隣の漁師さんのお家から大きな声が。
「熊!!ほれ!お~よしよしよしよし!!」

この声を聴いて、すぐにわかりました。熊は漁師さんの家に帰ったのです。そして、そのあとすぐに高知に寒い冬がやってきました。冬の到来と共に熊はほとんど私の前に姿を見せなくなりました。

ごくたまに見かけると…
なんと熊が私から必死で逃げる!!!!

え??なぜ??

熊の足どりはしっかりとして、トップスピードで走り去る!!!私が「熊、くまーーー!」と後を追うと、ニャー!!!と叫びながら自分の家に逃げ帰りました。

ひ、ひどい。

弱っているとき、支えたのはアタシなのに。
結局は元の鞘(さや)に戻っていく熊。
用がなくなればアタシをいとも簡単に捨てるのね…。

そんな捨てられた女の気分を味わいながらも、熊の逃げ去る元気な姿を嬉しく見送りました。

冬がきて、熊は大好き漁師さんと一緒にお昼寝していました。
「熊!!はよもんてこい(戻ってこい)!!!」
と言われれば、急いでお家に帰ります。漁師さんが漁に出ているときは家の前で帰ってくるのをけなげに待っています。そこに私が行くと相変わらずダッシュで逃げます…。おい、熊あんまりだ…(涙)。

お外で飼うこと、病院には連れて行かないこと、都会では問題になるのかもしれない。
でも高知の田舎町でのびのびとプライドもって生きている猫たちに、それが当てはまるのだろうか。

いろんな考えがあって、答えは出ませんが、ただ、熊は今とっても幸せそうです。それ以上に漁師のおんちゃんが、「熊はずいぶん元気になったろう!!」と誇らしさと嬉しさいっぱいのようです。

熊がいた1カ月は、人と猫との関係について、そして、幸せについて、多くのことを考え教えてもらえた貴重な時間になりました。

時は経ち、春をこえて初夏を迎えました。
まだ梅雨の雨を引きずったままの矢井賀です。そして、熊は、また少しうしろ足が弱っていますが、大好きな漁師さんのお迎えと町の見回りは毎日欠かさずしています。

今日も矢井賀のパトロールよろしくね、熊!

著者:Yaika factory代表・井川愛

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