独創的なアイデアが今も光る、ホンダ1代限りの迷車
1周回って、やっぱりいいじゃん! なアイデア車かも
スタイルが独創的な車では、確かに買いたい人が限られる。しかしアイデアが独創的ならば、売れてもおかしくはないのでは。
ホンダの創始者である本田宗一郎も「アイデアが需要を作り出す」と言っていた。実際コンパクトサイズのミニバンやワゴンスタイルの3列シート車、前後左右の駆動力配分が自在な高級車など、これまでに「独創的なホンダ」をイメージさせる車がたくさん登場している。大ヒットを記録したため、他社が似たような車を後出しすることだって結構あった。
一方で、本田宗一郎はまた「成功は99パーセントの失敗に支えられた1パーセントだ」とも言った。成功の裏には数多くの失敗が眠っているというわけだけど、確かにヒット作の一方で、ホンダには1代限りで終わってしまった車もいくつかある。
とはいえホンダ車だ。1代限りとはいえ、もしかして1周回ってちょうど今ボクらが理解できる、なんてこともありそうだ。そこで改めて、1代で終わってしまったけれど独創的なアイデアを持っている、そんな3台をピックアップしてみた。
【ホンダ クロスロード(2代目)】デビューは2007年2月、わずか3年後の2010年8月に生産を終了した。全幅は1755mmとわずかに5ナンバーサイズに収まらないが、最小回転半径は5.3mとフリードの5.2mと遜色ない。
空力を考えた流線型が中心の今どきの車と違い、スクエアなスタイルもいいよね。2WD/4WD車ともに走行距離5万km以下が総額100万円以下から狙えるけれど、2Lの4WD車はちょい高め
人気のコンパクトミニバン・フリードより約30mmだけ長いボディに、3列シートを収めていたコンパクトSUV、クロスロード。最近のSUVがモデルチェンジのたびに大きくなっていく中、今でも、というか今こそ貴重なSUVではないだろうか。
最低地上高185mmやアプローチアングル23.9度と悪路走破性が高いから、サーフィンやスノボーと、アクティブな週末にはピッタリ。
最大7人乗れるから仲間とワイワイやりながら移動できる。それでいてコンパクトだから普段の街乗りもラクラク。2WDもあるけれど横滑り防止装置やヒルスタートアシストが付く4WDの方がオススメだ。
【ホンダ エディックス(初代)】2004年7月にデビューし、2009年8月に生産終了。全長は4285mmとフリードとほぼ同じだが、全幅があるため3ナンバー車に。当初は1.7Lと2L車だったが、2006年11月のマイナーチェンジで2Lと2.4L車へ。
3席のリアシートはそれぞれ収納することができ、かつ床がフラットになる。走行距離が10万km超だと車両本体価格が1ケタ万円も。最高値でも100万円以下だ
ミニバンというと3列シートが当たり前、という既成概念を覆したのがエディックス。正確には覆せなかったので1代で消えてしまったのだけれど。横3人掛け×2列を用意した6人乗りミニバンだ。真ん中の席が後方へ少しズレているため、3人がヨコに並んでも窮屈に感じることはない。
運転席のそばにチャイルドシートがあると安心、と子育てファミリーはよく言うけれど、真ん中の席にチャイルドシートを備えれば、パパとママが両側から子共を見守れる。
また、全幅が1795mmと広いため走りに安定感があり、走りが好きなパパたちからも人気があった。一方で最小回転半径が4.9m(1.7L車。2Lと2.4L車は5.2m)とフリード以下なので、街中で取り回しやすく、ママも運転しやすいはずだ。
【ホンダ エレメント(初代)】アメリカの若者向けに開発された北米生産モデルで、2003年4月に日本へ輸入開始、2005年12月に輸入終了。2.4Lエンジン搭載でガッチリしたデザインだが、全長は4300mmしかない(全幅は1815mm)。最小回転半径5.2mと取り回しもいい。
リアシートは左右に跳ね上げて収納も可能。走行距離15万km前後でやっと支払総額100万円以下と、中古車での人気が高まっているよう
海や山へガンガン遊びに行きたいんだよ、という人はエレメントを検討してみてほしい。シートやフロアが防水加工されているから、サーフィンで濡れていても、スノボーで雪が付いたままでもちゅうちょなくドカッと乗り込むことができる……というのは、他の車でもある。
ところがエレメントの両サイドはセンターピラーのない観音開きドア。高さ1140mm×幅1550mmの大開口だからボードを抱えたままでも車内へアクセスしやすいのだ。
また、テールゲートは上下分割式で、下側は大人2人が座れるよう強化されている。ここをイスにして、その前にアウトドア用のテーブル(実際オプションで用意された)でも置けば、着いた先でエレメントをちょっとしたベースキャンプに使えるってわけだ。
いずれも登場から10年以上がたつけれど、そのアイデアは今も価値があるんじゃないかな。しかも1代限りの車だけに、街でカブる心配が少ない希少車だ。中古車でしか手に入らなくなった今こそ、注目してほしい。
text/ぴえいる
photo/尾形和美、編集部
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