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「相変わらずすっとぼけて……あなたって本当にひどい人」急死の一報! 甦る過去の忌まわしきデジャヴ……死んでも終わらぬ愛執の凄まじさ ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

祈りがついに神仏を動かしたのか、数ヶ月間まったく反応がなかった物の怪がついに動き出し、僧の連れてきた憑坐(よりまし。物の怪を憑りつかせる霊媒)の少女に乗り移ります。と同時に、紫の上は息を吹き返しました。

源氏は嬉しくてたまらない一方、またこのまま息絶えたらと思うと気が気ではありません。取り憑かれた少女は暴れながら「皆は去れ。殿お一人にお話することがある……」と意味深なことを言います。

源氏は髪を振り乱して泣き叫ぶ少女の姿に、おぞましいデジャヴを感じつつも、彼女の手をつかんで暴れないようにし、再び取り憑かれないよう、紫の上を静かに別室へ移動させます。

「まことにその人の霊か。狐狸物怪が故人の名を語り、良からぬことを言うとかいうが、はっきり言え。私しか思い当たらない秘密を言ってみろ」と脅すと、物の怪はボロボロと泣きだします。物の怪にもなりすましっていうのがいたんですね。

「私はこんなに変わり果ててしまったけど、相変わらずすっとぼけて……あなたはまったく昔のままね。ひどい方……本当にひどい方……」。

そのどこか妖艶な表情は、かつて葵の上に取り憑いた物の怪にそっくり。ああやっぱり、この霊は六条御息所だ! 何という嫌なデジャヴだろうと、源氏はウンザリです。

「いつだったか紫の上に、私のことを”重苦しくて付き合いにくい面倒くさい女”と言ったでしょう? 死んだ人間をかばうどころか悪く言うなんて許せない……!!

そう思ったらあの人に取り憑いてしまったのよ。彼女には何の恨みもないけど、あなた自身は神仏のご加護が強すぎてそばに近寄れない。今もぼんやりと声が聞こえるだけです。

(秋好)中宮のことは親として感謝しています。でも親としての思いよりは、女としての情念が強く残ってしまったみたいで、未だにあなたへの愛執が消えません。

これからはどうか私の罪が軽くなるように祈って下さい。読経も祈祷も私にとっては地獄の業火のようで、とても苦しい。中宮にもどうかよくお伝え下さい。男女のことでの禍根を残さないように、と……」。

死霊となった六条は未だ成仏できず、せっかくのお祈りもかえって逆効果で、炎のように苦しいばかりだと言います。それもこれも源氏への愛憎ゆえ、何という情念でしょう。彼女の愛執は死んで終わりではなかった。死んでも終わらないならどこに終りがあるのか、それは一種の永遠なのか?考えるとものすごいことです。

「もしや君も?」道ならぬ恋に生きる青年の直観

源氏が物の怪に応じている頃、祭り見物の帰りがけに紫の上の訃報を聞いた上達部(政府高官)たちは、ウワサ話をしながら弔問へ向かいます。

「大変なことになったな。パラパラと雨も降りだした。涙雨というやつだ」「やはり何もかも素晴らしい人は早く亡くなるんですね」「そうそう、桜は散るからこそ美しい」「これで女三の宮さまがようやくご寵愛をお受けになるだろう」

柏木も「家にいてもクサクサするだけだし」と、弟たちと一緒に祭り見物に来ていましたが、この噂を耳にしドキリ。死を悼む悲しみとは違う胸騒ぎがし、急いで二条院に向かいます。

到着すると女房たちの泣く声が響き渡り、紫の上の実父・式部卿宮が呆然と中に入っていくところでした。一般の弔問客も押し寄せて、あたりは混乱の極みです。

「やっぱり亡くなられたんだ」と驚いていると、ちょうど夕霧が出てきて「ああ、君も来てくれたんだね。でも大丈夫だ。息を引き取られたということだったが、祈祷の甲斐あって蘇られた。今は容態も落ち着いているそうだけど、まだなんとも言えなくて。本当においたわしい……」。

柏木は「とても信じられなくて来たが、誤報だったんだな。よかった」と言いつつ、親友の表情が気になります。ずいぶん泣いたらしく夕霧の目は真っ赤。今も涙をふきふき喋っています。

「おかしい。紫の上さまとは疎遠のはず。親しくもない継母の死にそんなに泣くなんて、もしや……」。道ならぬ恋に燃える柏木は、夕霧も紫の上に横恋慕していると推察したのです。蛇の道は蛇といいますが、ビンゴ!

「紫の上死去」の一報だけが独り歩きし、高官たちも弔問に来たというので、源氏はここでコメントを発表します。

この度は重病人の容態が急変したため女房たちが取り乱し、このような誤解を招く結果となってしまいました。情報が錯綜し、大変お騒がせいたしました。私自身もまだ気持ちが落ち着つきませんので、お見舞いのお礼は後日改めて申し上げます」。なかなか情報の訂正が広まらないのは、今と変わらないですね。

この通り一遍のコメントにも、柏木はビビりまくりです。こういう事でもなければとても源氏のところへなんか来られない……。宮との密通の後ろめたさ、紫の上の死が真実なら源氏が出家するだろうという期待。清廉潔白だったはずのエリート貴公子の心は、すっかり変わり果てていました。

簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。
3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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