インディ500、昨年の覇者・佐藤琢磨に何が起こった? 松田秀士が解説

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インディ500、昨年の覇者・佐藤琢磨に何が起こった? 松田秀士が解説
J-WAVEで放送中の番組『BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE』(ナビゲーター:ピストン西沢・松嶋初音)。6月3日(日)のオンエアでは、インディアナポリス500マイルレース、通称「インディ500」を特集。昨年の優勝者、佐藤琢磨選手の結果や、インディカー・レースの魅力について、元インディカー・ドライバーの松田秀士さんをゲストにお迎えして解説して頂きました。

■レース前半にリタイア…何が起きたのか?

現地時間5月27日にレースが行われた「インディ500」。佐藤さんはレース前半にリタイア。連覇は果たせずに残念な結果となりましたが、レースで何が起きたのか、自身も4度この大会に参戦し、現在はモータージャーナリストとして活躍する松田さんに訊きました。

西沢:佐藤さんは今回、前半も前半のうちに巻き込まれてクラッシュという結果だったんですが、どういう感じだったんですか?
松田:前を走っていた周回遅れのジェイムズ・デイビソンが1台だけものすごく遅かったんですよ。インディは“何秒で走る”と言わないで、そのときのスピードで言うんですけど、平均速度が217マイルとか220マイル、つまり350キロくらいですが、デイビソンは204マイルとかで走っていて、明らかにコーナリングも遅くて、後ろからみんな塊になって追い越して「危ないね」と言っていて。オーバルのレースはあまり遅いとスチュワードが「危ないからピットに入れ」と出るんですけど、「出さないと危ないね」と言っていて。そんな中、第3ターンで佐藤選手がコーナリング中に、イン側から抜こうとしたんですよ。ところが、今年のマシンはエアロキットが完全に変わっちゃってダウンフォースを削っているので、デイビソンの車の真後ろについたときにエアポケットで、デイビソンの左リアタイヤに、佐藤選手の右フロントが追突して、サスペンションが壊れてスピンして止まった。そこで終わっちゃったんです。

佐藤さんのインディカー・レースでの足跡を改めて辿ると、2002年から参戦していたF1から、2010年にインディカーでデビュー。2012年の「インディ500」では、2位で最終ラップを迎え、トップのダリオ・フランキッティのインに飛び込み、スピンからコンクリートウォールにクラッシュするということもありました。2013年にアメリカの伝説的ドライバー、A.J.フォイトが率いるA.J.フォイト・エンタープライズに移籍し、ドライバーとして開花した佐藤さんは、開幕戦でポール・ポジションを獲得。第3戦のロング・ビーチで日本人初優勝を達成します。A.J.フォイトさんは、前年のインディで2位を取らずに果敢に攻めた佐藤さんを「あれがインディ・ドライバーだ」と惚れ込み、ラブコールしてチーム加入が実現したのだそうです。

■「インディ500」は賞金稼ぎだった!?

続いて松田さん自身の「インディ500」の思い出を訊きました。

松田:一番安いときで、僕は予算が800万円しかなくて。普通5000万というのを、ずっと僕は800万で乗っていて、グレッグ・ベック(べックモータースポーツのオーナー)は僕をすごい信用してくれて、「とにかくそれでいいから来い」と言われて。「ホテルのお金もないし、レンタカーも借りれない」と言うと「親父の家が部屋がいっこ空いてるから」とそこにホームステイですよ。
西沢:(笑)。
松田:それでチームでもうひとりドライバーがいて、その人にスリフティというレンタカー屋のスポンサーがついていて、その車を貸してくれて。他のドライバーもたくさん来ていて最後まで乗れるかわからなかったんですけど、バンプデイ(予選の日)の2日前に「秀士、お前乗れるぞよかったな」と。グレッグは僕を乗せたかったんですよ。それで断ってくれてて、800万円で乗ろうなんて言うやつはいないわけで。
西沢:チームもそれだと赤字になっちゃうでしょ?
松田:そうなんですよ。バンプデイに、僕は体が小さいからシートセッティングに時間がかかって土曜日もそれに費やされて、最後の予選の日に初めて1年ぶりにインディ・カーに乗って。ウォームアップで35周くらい走ったら「もうスピードが出てるからいい」と言われて、ビューンとやったら226マイル出て、予選もとおって、その日一番速かった「デイ・オブ・ザ・ポール」に選ばれて。2万5000ドル(250〜260万円)も賞金がでるんですけど(笑)。そのままレースをやったんですけど8位になっちゃったんです。全部合わせて25万ドルもらって、賞金の20%の500万円くらいもらって帰ってきましたね。
西沢:すごい綱渡り人生というか(笑)。
松田:僕がインディに行くのは、完全に賞金稼ぎですよ。1994年から2000年くらいは、インディで賞金を獲ってくるのが生活設計のなかに入っていましたからね。
西沢:それで生活設計しちゃう人もすごいな。ご家族もいて、お子さんも育てたんですからね。お父さん賞金稼ぎ、カッコいいなあ(笑)。
松田:嫁とかは「今年いくら稼いで帰ってくるかな」と思ってたんじゃないかと(笑)。

番組では松田さんに、経験者ならではのインディカー・レースの難しさについて語って頂きました。また佐藤さんの今シーズンに関しては、次のように語っていました。

松田:今年はけっこう悩んでいる感じがするので、この後いかに立て直していくかが彼の実力と努力。でも彼はマネージメントに優れているし、これからのレースを重ねていくと速くなって優勝できる可能性も出てくると思う。「インディ500」がこんな結果に終わったので相当悔しいし、これではいけないと思っているはず。彼は今のチーム体制のなかで「もっといいクルマにしよう」と積極的に進めていくと予想しています。

「我慢の年だけど、きちんと残すところを残さないと来年がないのがプロの世界なので」と厳しい言葉とともに、「彼に続く日本人が本当に出てきてほしい。絶対チャンスがある。ヨーロッパより楽しいから」と若手ドライバーにインディ参戦を薦めていました。

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【番組情報】
番組名:『BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE』
放送日時:日曜 19時−19時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/drivetothefuture/

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