“伝説の家政婦”の家には調理器具が2つだけ?
「伝説の家政婦」としてテレビなどで話題の、家政婦の志麻さん。注目の理由は何といってもその料理の腕前で、あらゆる材料を無駄なく効率的に使い、わずか数時間で10品以上もの料理を仕上げる手際の良さは、圧巻。もちろん出来上がった料理はどれも美味しそうで、その上どこかオシャレ。その圧倒的なポテンシャルの高さで注目されています。
そんな話題の志麻さんですが、意外に知られていないのがその素顔やルーツ。実は志麻さんの料理には、彼女が料理の研修のために訪れた、フランスでの日々が大きく影響しているのです。本書『志麻さんの何度でも食べたい極上レシピ』は、志麻さんお気に入りのフランス家庭料理のレシピをまとめた一冊。レシピの他にも、彼女が影響を受けたフランスの料理文化などについてのコラムも収められており、志麻さんのルーツも少しだけ垣間見ることができます。
大阪の調理師の専門学校で料理を学び、フランスのミシュラン三ツ星レストランで研修を受けた志麻さんは、その後、有名フランス料理店に料理人として15年間勤務。しかし、その間も忘れられなかったのがフランスで出合った家庭料理なのだそう。日本では「手がかかって高級」なイメージがあるフランス料理ですが、家庭料理はとてもシンプルでおいしく「食べるとしあわせな気分になるものばかり」と志麻さんは同書で語ります。また、現地ではフランス人の食への関心の強さや、意識の高さを感じたと言い、そのエピソードも紹介しています。
例えば、豪華なイメージのあるフランス料理ですが、実は食材を無駄にしない細かな工夫があると言います。トマト缶などを使う際は、ほんの少しでも無駄にしないように、中身を空けた缶に少量の水を注いで鍋に戻す。煮込み料理で、煮込む前に使ったフライパンに旨味が残っているようなら、余分な油をふき取った後に煮込みに使うワインを入れ、旨味をこそげ落として料理に使う。志麻さんは、こうした現在の自身につながるような、フランス料理の効率的で無駄のない調理法を厨房で学んだと語ります。
また、フランス人の食に対する意識の高さは、一般家庭の中にも垣間見ることができたと言います。フランスの子どもたちは大人と同じように自分で料理をお皿に取り分けて食べるのですが、もしお腹いっぱいで食べきれずに残してしまうと、親は厳しく叱るのだそう。それは、自分が食べられる分だけを自分のお皿に取り分けるのがマナーだから。「フランスの子どもたちは食事をしながら食育を受けているのだなと感じることがありました」と振り返っています。
さらにコラムからは、テレビではあまり映されることのない、志麻さんの素顔が垣間見える部分も。
実は志麻さん、フランス人の夫と結婚した当初、仕事やフランスの文化を学ぶのに忙しく、家には小さな鍋と大きなフライパンしか、調理器具がなかったのだとか。そんな中でも夫に美味しいものを食べてほしいと考えた志麻さんは、この2つをフル活用。すると、「この料理も! あの料理も!」と意外なほど何でも作れることが分かったのだそうです。「ずっとレストランの厨房の整った環境のなかでフランス料理を作っていた私でしたが、どこにでもある普通のキッチンで作る家庭料理こそ、私が求めていたものだったのです」と自身の思いを再発見したことを明かしています。
さらにフランスでは、フランス人が男女ともにキッチンに立つ姿や、週末になると家族や友人たちと集まり、何時間もかけて食事と会話を楽しむ様子などが印象的だったと言い、「そうやって、フランス人が食をライフスタイルの真ん中において生活していることをいろんな場面で見て、心の底から『いいな』と思ったことが今の仕事につながっている気がします」と、「伝説の家政婦」の根源が垣間見える一文も登場します。
志麻さんに影響を与えた、フランス家庭料理の魅力が詰まった同書。煮込み料理やオーブン料理、デザート、いつもの料理を”格上げ”してくれるソースのレシピなどが掲載されており、一つでも覚えれば料理の幅がぐっと広がるはず。シンプルなのに、いつもとは一味違って、なんだかオシャレ。そんな志麻さんの料理の”ルーツ”を感じさせてくれる一冊です。
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