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来年、130年ぶりの大改訂!「新しい1キログラムの測り方」は何が変わる?

来年、130年ぶりの大改訂!「新しい1キログラムの測り方」は何が変わる?
J-WAVEで放送中の番組『GROWING REED』(ナビゲーター:岡田准一)。5月27日(日)のオンエアでは、計量標準総合センター長の臼田 孝さんをゲストにお迎えし、2019年に基準が変わる「1キログラムの測り方」をテーマにお話を伺いました。

臼田さんは世界の科学者18名からなる国際度量衡委員会のメンバーの1人で、重さや長さなど測量の基準に関する科学的な取り決めをする重要な役割を担っています。まずは、4月に出た臼田さんの最新著書『新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる』のタイトルにもなっている「新しい1キログラムの測り方」について訊きました。

■体重はどうやってはかる?

臼田:岡田さんは格闘技をやられているので体重をすごく気にされていると思いますけれど、体重計ってどうやって「60キロ」とか「70キロ」とか出していると思われますか?
岡田:何かと比べて何個分とか……?
臼田:おっしゃるとおりです。なんでもそうですけど「測る」というのは、身長が1.75メートルということは「1メートルの1.75倍」ということですよね? 体重が65キログラムというのは、「1キログラムの65倍」。元になる1キログラムとか1メートルという基準が必ず最初にあって、それとの比較で重さを、正確には質量ですけど、みんなで共有できるわけです。その基準が変わるのが来年ということで、それを象徴的に「新しい測り方」というタイトルにしました。
岡田:それって革命的というか、「今まで1キロはこれだよ」といっていたものが変わるって、すごいことですよね。
臼田:そうですね。ただし誤解していただきたくないのは、岡田さんの体重、世のどなたの体重も、今日測った肉の重さも、今と改定後では変わりません。

「新しい1キログラムの測り方」を知る前提として、「これまでの測り方」について臼田さんに解説していただきました。

今の質量の1キログラムは、パリにある「国際キログラム原器」というものを基準にしています。メートル法がフランスで作られたときに、長さと重さの単位が決められ、キログラムも誕生しました。1キログラムは、パリにある国際キログラム原器が1889年に作られ、「これを1キログラムにしよう」と世界で決めました。なので体重が65キロということは、この国際キログラム原器が65個分ということになります。

1キログラムは、日常的に使いやすい重さの単位として、「水1リットル分に相当する質量」として決められました。ちなみに1リットルは、1メートルの10分の1=10センチ立法の升に入れられた水を1リットルとしましたが、水は温度によって膨張したり蒸発するので、それに相応するものを金属で作り、1キログラムが決められ、今日まで使われてきたのだそうです。

■キログラムの改定について…何が変わる?

2012年から国際度量衡委員会の18人の1人となった臼田さん。委員は各国の有識者の推薦や立候補で決められ、国籍の違う18カ国の委員が選ばれます。キログラムの改定に関しては、臼田さんが加わる前から議論を続けていたそうです。質量の何が変わるのか、変えるに至った事情について伺いました。

岡田:変わるといっても、今の63キロは2019年になっても63キロで変わらないとおっしゃっていました。その変化は微々たるものなんですか?
臼田:全く変わらないように、極めて慎重に質量の基準を変えるということになります。決まりごとを変えるということになります。
岡田:それは何が変わるんですか?
臼田:それが大事なことなんですけど、パリにある国際キログラム原器のそもそもの基準がもし不安定で、質量が変わっていたとしたらどうなりますか?
岡田:錆びたりとか?
臼田:錆は幸い発生していないようなんですけど、実はその原因はよくわかってないんですが、この世界にひとつしか無い分銅「国際キログラム原器」。これと同じときに同じように作った兄弟、姉妹たちがあって、それらを比較してみると段々ズレてきてるんです。おそらく空気中の蒸気とか不純物が付着したり、使うとき、測りにのせるときに容器から出して洗うんですね。もしかしたら増えているかもしれないし、洗ったときに何かが剥がれて減っているのかもしれない。その理由はわからないんですけど、同じ時期に作られた兄弟、姉妹と比べると、100年間で指紋1個分くらい、1億分の5くらいなんですけど、そのくらいの違いが認められたんです。作った当時は予想できなかったズレが起きているし、そのズレが当時と違うハイテク社会においては問題になってきたということになるわけです。
岡田:原子レベルで話をすると、だいぶ色々な原子がくっついていく世界を僕らは知ることができるようになっているから、誰もわからない変化でも微妙なズレが大量な原子を測れるようになったりとか……。
臼田:おっしゃるとおりですね。本のタイトルにもあるように「科学が進むことによって単位が変わった」ということになるわけです。

■この世界に不変なものは存在する?

トーク後半は「新しい1キログラムの単位をなぜ変えるのか」というお話を伺いました。

臼田:たとえば牛肉100グラム300円で、0.1グラム違っていても文句は言わないかもしれないですけど、分子10個分が何千万円もするような画期的な薬だとか、ガンがたちどころに治る新薬、でもものすごく合成にお金がかかるし、それを正確に混ぜないといけない。そういう分野では今までのキログラムの測り方ではゆらいでしまって正確にできないかもしれない。そのために今変えて、未来永劫ぶれないような測り方にしようと、そういう局面になっているんです。
岡田:「2019年5月に質量の単位の定義が130年ぶりに変わる」。怒られるかもしれませんけど、この世に不変なものってあるんですか?
臼田:それをおそらく科学者はずっと探しているんだと思います。実は長さについてはパリに基準があって、「これが1メートル」というものさしがあったんですけど、そのものさしは役目を終えて、長さというのは「光の速さ」になっています。光の速さが長さの決まりになっています。
岡田:へえ……ということは、どういうことですか?
臼田:未来永劫変わらないものはあるのかとおっしゃいましたけど、少なくとも今までの物理学的、科学的な観測結果から変わらないだろうと目されているもののひとつとして「光の速さ」があります。絶対ぶれないというものが基準になって長さは今決められている。ところがキログラムは揺らいでいるらしい。揺らいでいるいないにかかわらず、壊してしまったらどうにもならない。世界にただひとつのものですから。そういう問題が今後はなくなるというのが来年の5月ということになります。

■新たなキログラムの定義

新たなキログラムの定義について臼田さんは「既知の同じ原子をある数だけ集めて、その数を数えられる技術が今はあるので、原子何個分ということでキログラムを実現できます。今までは『国際キログラム原器』を基準にしていたものが、新しい定義だと、たとえば『シリコンの原子何個分が1キログラムです』と言えるようになります」と解説してくれました。

臼田:少なくとも我々が文明社会を維持するタイムスパンであれば(原子は)不変ですから。その数を決めてしまって、数を集める技術を持っています。130年前はなかった技術です。ここでも科学が進んだことによって単位が変わって、それを実現する手段を我々は持ったと。絶対変わらない基準、もし何かの不注意で壊しても全く同じものを作れる、そういう時代になるのが来年2019年の5月以降になります。

130年ぶりの大改訂に関わることについて、臼田さんは「私はたまたまその瞬間に立ち会えるということで、とても光栄ですし責任も感じますけど、私だけがなしたわけではないわけですから。先人の業績に敬意をいだきつつ、その瞬間を迎えたいと思います」と話していました。

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【番組情報】
番組名:『GROWING REED』
放送日時:毎週日曜 24時−25時
オフィシャルサイト: http://www.j-wave.co.jp/original/growingreed/

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