ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

「どうせならシワが伸びるほど楽しんで」満願成就のお礼参り! 孫活を楽しむ中に芽生えたある決意 ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

とはいえ、実際にこの場に入道がしゃしゃり出てきたら、それはそれでみっともなかったことだろう、と語り手は言います。あくまでも潔く俗世を去ったからこそカッコイイ。それでも妻としては、夫にも今日の晴れのお参りを見せたい気持ちでいっぱいでした。秋の海辺の優雅なひとときは終わり、人びとは名残惜しげに帰京します。

孫活は楽しいけど……深まる妻の心の孤独

子供が少ないのが悩みだった源氏に比べ、女御と夕霧は子だくさん。孫も増えてきたここ数年、六条院では孫活がブームになっています。

どの孫もみんな可愛い紫の上ですが、今は皇太子のすぐ下の妹皇女、女一の宮をひきとって養育中。女御の子供のなかで唯一のプリンセスです。花散里もこれを真似して、夕霧と藤典侍の間にできた女の子をひきとり、互いに孫育てに精を出しています。

右大臣夫人となった玉鬘も、今ではちょくちょく六条院に顔を出し、紫の上や花散里との交流を楽しんでいます。こちらも年とともに、ますます素晴らしい貴婦人になりました。

一方、年月が過ぎても成長しないのが女三の宮。未だにフワフワと頼りなく、精神的には子供のまま。紫の上とはすっかり親しくなったので、六条院の中に険悪さはありませんが、源氏は紫の上を偏愛し、宮に対しては娘を教育するように接しています。

これを心配した朱雀院は帝にも「妹の三の宮を応援してあげてほしい」と要請。帝は父の意を汲んで、妹の皇族としての格を引き上げました。皇族のグレードの中でも二番目に高い『二品(にほん)』にしたことで、更に扱いが重々しくなります。

源氏もこれを無視できず、朱雀院や帝に気を使って、だんだんと三の宮のところで過ごす夜が増えます。紫の上は仕方ないと理解しつつも、今までに経験したことない辛さが堪えます。源氏のいない夜は、幼い孫がいてくれることだけが救いでした。

今の彼女の願いは唯一つ、今のうちに出家を果たすことでした。「今はまだ殿の愛情が私にある。でもそれもいつかは終わるだろう。そんな日を待つよりは、出家して心静かな日々を送りたい」。壊れた夫婦関係は決して元へは戻らない。それならいっそ、夫に縛られない生活をしてみたいと思い始めたのです。

この数年で何度かこの事を源氏に訴えたものの、彼の答えはいつも同じ。「出家は私だってしたい。でもあとに残されるあなたが心配だから実行しないだけだ。どうしても出家するなら、私がした後に決めたらいい」。要するに、「俺を捨てていくな!」というわけです。

出家は生きながら世を去ることなので、どちらかが出家すればそこで夫婦生活は終了です。別れたいと強く願う妻と、それを認めたくない夫。なんだか現代の熟年離婚の様子にも似ていて、笑えない感じですね。

炎上発言で負のスパイラル…薄幸の少女のその後

明石一家のように大団円を迎えた一家もあれば、負のスパイラルに沈む一家もあります。ここで両親の離婚で憂き目を見た、髭黒の一人娘・真木柱のその後について触れておきましょう。

真木柱はどんどん病んでいく実母が嫌で、華やかで美しい継母・玉鬘のステキなウワサを聞いては「あっちに行きたい」と憧れてばかり。髭黒も真木柱を呼び寄せて一緒に暮らしたかったのですが、これには祖父母が猛反対。式部卿宮は「この孫娘だけは私が絶対に幸せにしてみせる!」と豪語し、続々と求婚者が集まってきます。

ところが、おじいちゃんのお眼鏡に叶う人はなかなかいない。式部卿宮としては「柏木あたりが手を上げてくれたら考えてやろうかな」位に思っていたのですが、猫に夢中の彼は縁談に見向きもせず、結局いまだにお嫁さん募集中だった蛍宮に決まります。

蛍宮は亡くなった奥さんのことを忘れられず、でも独身で寂しいのも嫌だと、あまり積極でなく応募したのですが、案外あっさり結婚できてしまい拍子抜け。肝心の真木柱については「悪くはないんだけどイメージと違う」

おまけに結構年が離れています。彼の年齢については言及がありませんが、源氏の弟宮(冷泉帝よりは年上)であることからみても、髭黒と同世代かちょっと下くらいでしょうか。自然と足も遠のき、新婚なのに早くも冷え切った状態です。

こんなはずじゃなかった、期待はずれだと祖父母はガッカリ。結婚に反対だった髭黒も「だから言わんこっちゃない。もともと浮気な人じゃないか」と、それ見たことかと言わんばかり。玉鬘も過去を思い出し「結婚するつもりはなかったけど、もし実現していたらどんなことになっていたか」と思います。

更に、問題発言ばかりするあの正妻(真木柱の祖母・紫の上の継母)が「だいたい宮さまっていうのは、あんまり羽振りが良くない割に、誠実さだけが取り柄だっていうのにね」と言ったからさあ大変。

「失礼な!妻がいた頃にも多少の浮気はしたが、こんな言い草は聞いたことがない!」。蛍宮は怒って、自宅でますます死んだ奥さんとの思い出に引きこもり、一層足が遠のいてしまいます。

孫子のためを思う気持ちは変わらないのに、明石一家とは雲泥の差がついた式部卿宮家。物事が悪い方、悪い方に転がってしまうのは、先見の明のなさか、はたまた炎上発言をやめない意地悪ばあさんのせいなのか。

可愛そうなのは真木柱で、夫に愛されない生活を「こんなものだ」と受け入れ、寂しい若妻となっています。

簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。
3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

前のページ 1 2
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。