佐藤秀峰の「BOOKSCANに行ってみた」

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いや、そうでしょう、そうでしょう。

…と、思ったら違いました。社内向けのiPhoneアプリを開発しており、アプリを起動させてiPhoneのカメラに本をかざすと…。

なんと例の自炊代行問題に絡んで、自炊代行拒否を表明している著者の書籍の場合、エラーサインが出るようになっているのです。

書籍をチェックして本が選別されます。

ここでも作家に配慮がなされていました。

…て言うか、選別用のアプリを開発してしまうってすごいですね。

選別された本は段ボールに詰められ、改めて優先順位などを決めて、納期の予定が組まれます。

こっちは裁断される運命の本。

こちらは自炊代行拒否リストに引っかかり送り返される本。

データ化されて読まれ続ける本と、居場所を失い送り返される本とどちらが幸せなんでしょうね?

予定表に従って、本が裁断されていきます。

自社開発した裁断機に本をセットし、ボタンを押すとサクサクと本が分解されていきます。

さっきから何度も同じ言葉ばかり繰り返していますが…、スゴ〜〜イ!!!

こんな本格的な裁断機を持っている自炊代行業者さんって、恐らくこちらだけですよね。

本当にサックサクなんですよ。

まるで柔らかい粘土でも切るように、本がスルスルと機械に飲み込まれてはバラバラになって出てくるのです。

本の代わりにちくわやかまぼこをセットしても、キレイに切れそうですね。

1日にデータ化できる本の冊数は非公表ですが、「国会図書館を丸ごとデータ化してくれと言われれば、頑張って体制を作ることは可能です」とのことでした。

実際に大学の研究室の依頼を受け、蔵書を丸ごとデータ化するようなことはよくあるそうです。

首都圏を中心に多くの大学研究室の蔵書をデータ化しているそうな。
ここに来て、僕は段々と分かってきました。
先ほどの書籍の選別アプリと言い、裁断機を作ってしまう行動力と言い、彼らの成功は単なるラッキーではないのです。

タブレットPCの登場に合わせて、いち早く書籍のデータ化の需要があると気がついたから、という理由だけで成功した訳じゃないのですよ。

要は状況に対する対応能力がすごいのです。

サービスがヒットしたらすぐに事務所を拡張し、機材を増強し、同時に管理システムを作り上げ、アプリを開発し、さらには裁断機まで自社開発してしまう。

170台のサーバーをきれいに動かし、そして、それをわずか2年で構築、特許技術を開発し、海外にまで進出してしまう。
それをやりきってしまう!

やりきれてしまう!!

これは成功すべくして成功しているだけの話です。

これだけのことを2年でできる能力があれば誰でも成功するわ〜〜、と思うと、もう自分の小ささに下を向いてしまうほどです。

さて、顔を上げますと、裁断機の向こうにスキャナが見えます。
裁断が終わると今度はスキャンです。

これまたスルスルと本がスキャナに吸い込まれていきます。

スキャンデータは目視確認され、問題が発見された場合は再スキャン、その後、本番サーバーへアップロードされます。

そこでもチェックが行われ、承認されると依頼者であるユーザーに通知が届きます。

ユーザーはマイページにログインしデータをダウンロード。

これにて納品完了です。

チューニングラボと呼ばれる特許サービスを使えば、各端末用にデータを最適化することもできます。

品質に納得がいかなければサポートセンターに連絡し、再スキャンを依頼することも可能。

本当によくできたシステムだな、と感心しました。

これは彼らを追い越す技術を手に入れることは追従者には無理なんじゃないか、という気さえしてしまいましたね。

そして、それを惜しげもなく初対面の僕に見せてしまえる自信と余裕。

僕は漫画家で、世間じゃクリエイターだなんて呼ばれ方もしますが、これ程クリエイティブな仕事が自分にできているのだろうかと考えると、まさにこれこそクリエイトなのではないかと…、自分は何の役にも立たない漫画を描いているだけではないかと…、いえ、別に自分を卑下する必要はないのですが…。

だって、本当にすごいんだよ〜〜!!
感動したんだよ、僕は〜〜!!

ハァ、ハァ…。
えー…、以上でレポートは終了です。

BOOKSCANさん、貴重な現場を見せていただき、本当にありがとうございました。

 

さて、ここからは私見です。

今年4月2日、出版各社が出資して(株)出版デジタル機構(Pubridge)という会社が設立されました。

出版デジタル機構は、電子出版ビジネスの市場拡大をサポートするための公共的なインフラを整え、読者にとってよりよい読書環境を育むことを目的とし、電子出版、電子書店などへの新規参入を容易にし、誰もが電子出版による言論表現活動に参加できることを目指す会社です。

 

5年後には電子出版の市場規模を100万点、2000億円に拡大することを目指しており、すでに出版社274社が賛同や参加を表明していると言います。

官民ファンドの産業革新機構は3月29日、この「出版デジタル機構」に最大150億円を出資すると発表し、出版界がこぞって結集することで、電子書籍のコンテンツ不足の解消が大きく前進する可能性が期待されていますが、一方で具体案が発表されていないのが心配な所です。

「出版業界が大小合わせて連合を作って、公的援助も取り付けて、予算もたっぷりあるぞ!」という以上に、 具体策がまったく聞こえてきません。

約9万点の書籍の電子化の仮申請があったとの報道もありますが、これらは事前に著者に許諾を得た物とは考えにくいため、またひと騒動あることは容易に想像がつきます。

じゃあ、どうやって書籍をデータ化するの?と質問したら、彼らに「国会図書館を丸ごとデータ化してくれと言われればできますよ」と即答できるとは思えません。

では、すでにそれをできる人たちがいるのに、なぜ協力を求めないのでしょうか。

まだ失望するのは早いとも思っていますが、電子書籍時代において、出版社連合が自炊代行業者潰しに夢中になり、著作隣接権を主張したり、データの原盤権を主張したり、既得権益をどうにか守ろうと動き回っている間に、取り返しのつかない時間とお金を浪費してしまうのではないかと危惧しています。

世界では電子書籍が主流になり始めているのに、日本は国内で利権争いをしているとは何とも残念な気がします。

日本国内の電子書籍事業が進まないのは、自炊代行業者がいるからでも、作家が紙に執着しているからでもなく、出版業界が電子化の流れを拒んできたからではないでしょうか。

日本語の書籍は縦書き、右開きも多いので、その電子化には他の言語にはない工夫が必要です。

それだけに、海外の企業は日本より先に他のアジアの国々での書籍の電子化に力を入れています。

気がついたらアジアで電子化が進んでいないのは日本だけ、という状況が産まれてもまったく不思議ではありません。

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