頑張った自分へのご褒美「アリかナシか問題」。ついに決着か!?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第12回目です。
『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「投資家として一流になりたいのなら、自分の中で絶対に価値のあるもの以外にお金を払うべきじゃない」
(『インベスターZ』第3巻credit.17より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
部員以外にも投資部の存在を知っている者がいた
投資部のキャプテン・神代(かみしろ)から「しっかり市場を見て、投資先を決めるように」と言われた財前。休みの日も調べ物をしに学校にやってきます。投資部に保管されている資料を見ようと部室に行ってみると、そこには見知らぬ同年代の女の子の姿が。先生すら知らない投資部の存在を知っていたその子の正体とは、道塾学園の創設者・藤田金七(かねしち)の玄孫(やしゃご)の美雪でした。
9歳の時から資金運用を始め、今では2000万円の個人資産を持つという美雪は、祖父の口から度々、財前の名前を聞き、興味を持ちます。「一体どんなすごい運用をしているのだろう」と思って会いにきたものの、財前から「年間運用益の目標は8%」だと聞いて、がっかりします。
「100億円を運用していて、たったの8%しか利益を出せないのか」と言われ、何とか見返してやろうと考える財前。美雪が高価な時計を身につけていることに気づきます。「株で儲けた自分へのご褒美に買った」と言う美雪に対して、財前が放った痛烈な言葉が「本日の一言」です。財前に1本取られた美雪は、「絶対に仕返しをしてやろう」と決心するのでした。
「これくらい良いだろう」は正しい判断か?
三田紀房先生のマンガには、必ずと言っていいほど「ベテランの助言者」と「気の強い女性」が登場します。『インベスターZ』の場合は、美雪と美雪の祖父がその役割を担います。こうした個性的なキャラクターと主人公との駆け引きも、物語の大きな見どころの一つとなっています。
さて。美雪は「たくさん稼いだのだから、これくらいいいだろう」と、中学生にして数十万円もする腕時計を買ったワケですが、こうした行動は、おそらく多くの人にとっても、身に覚えのあることではないでしょうか。人は我慢した後に、かえってその反動でムダなことをしてうさを晴らそうとするのは、よくあることです。
『スタンフォード大学の自分を変える教室』によると、人は「自分は頑張った・進歩した」と感じると気が緩み、「ここまでやったのだから、少しくらい自分を甘やかしてもいい」と考える傾向にあることがわかっています。そうなってしまうと、散財を正当化し、「努力してご褒美を手に入れた自分」を誇らしいとすら思うようになります。
このように、目先の衝動に目を奪われていると、人は本来の目標を忘れ、誘惑に負けやすくなってしまうこともあるかもしれません。
お金持ちは、「お金の使い道を決めている」
私の知り合いには、お金持ちの方も複数いらっしゃいますが、彼らには、ある共通点があります。それは「お金を出す場面と出さない場面をはっきりと区別している」ということです。
世間では、お金持ちとは豪華な家に住み、別荘やクルーザーなどを所有し、贅沢な暮らしをしていると思われているかもしれませんが、彼らは「自分のためにも自分の顧客のためにもならない」と思うことには、ビタ一文も出そうとはしません。その代わり、いざお金を出す場面になると「そんなに出すの?」と思うほど、思い切りよく使います。「たくさん持っているから、たくさん使おう」という発想にはなりません。
たとえば、あるお金持ちの友人は、奥さんから「出かける時くらい、少しは服装に気を配って欲しい」と言われるそうです。けれど、ご本人はまったく気にしていません。「自分がお金をかけておしゃれな格好をしたところで、仕事の成果にはつながらないから。人前で話をするセミナーには仕方なくお決まりのスーツを着ますけど」と言います。自分が価値を認めないものには、お金を一切使わないからこそ、お金持ちになれたのでしょう。
お金を活かせるかどうかは「使い道次第」
私は、高級ブランド品を否定するものではありません。高いものは、やはり高いだけのことはありますし、たまにはハメを外すことがあってもいいでしょう。ただし、一流になりたければ、やはり「投資家発想」は外せないと思います。投資家発想とは、お金を使う前に「投ずる以上の見返りがあるかどうか?」と考えることです。ここで見返りとは、何も金銭的なものだけでなく、人生の満足度と照らして考えるべきものです。
もともと、お金自体には良いも悪いもありません。未来の満足のために使うのが「投資」、今の楽しみや維持のために使うのが「消費」、そして、使った瞬間から後悔に向かうお金の使い方が「浪費」。この3種類にどう色をつけるかです。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は39万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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