デキないことを「デキる」と言ってしまうことは最大の“悪”であるーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

デキないことを「デキる」と言ってしまうことは最大の“悪”であるーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第15回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「月に石を投げても1億パーセント当たりっこない。それは絶対に不可能なことだ」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア19より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

仕事には「頑張ればできることと、頑張ってもできないことがある」

50代の中堅工作機械メーカーの設計エンジニア・斉藤の転職を成功させようと、履歴書を添削していた井野。ところが、話を聞いてやってきた海老沢に咎められてしまいます。「そんなことをやっていても1円にもならない。なぜなら、ウチは大手とはいえ、扱っている求人は35歳までの若手が中心。50代エンジニアの求人は、ほぼゼロに等しいからだ」と。

「ウチの現状からすると、彼を就職させることはまずムリ。真実を言わずに、こちらの誠意だけで何とかしようとしても、かえって相手の時間を浪費させることになるだけだ」と海老沢は言います。

「月に石をぶつけようとしても、絶対にできない。ビジネスとは、できることとできないことを見極めて、できることをいかに最低限の時間とコストで達成させるか?だ」と話すのでした。

ビジネスとは「受けるか受けないか」の選択から始まる

海老沢の「できないことを『できない』と告げることは、非情なことでも何でもない」という言葉は、ビジネスの本質を突いています。人は、同情や誠意だけでは相手を助けることができません。どんなに言葉を尽くしたところで、具体的に相手を助ける術を持っていない限りはどうしようもない、ということです。

また、「大手企業といえども万能ではない」という言葉も、核心に触れています。これは、要は「すべての顧客の希望に応えることができる企業はない」ということを意味しています。よって、ビジネスをスタートさせる段階で、「相手の依頼が自分たちにとって可能か不可能か?」を正しくフィルタリングすることが肝心です。「仕事は入り口=受ける時が重要」だということです。

ですから、くれぐれも「売り上げが欲しいから」とか「何とかこの顧客をモノにしたいから」といった理由で、仕事を安請け合いしてはいけません。自分の時間が有限である以上、「いい仕事をしたい」と思ったら、「自分がより大きな貢献ができる仕事は何なのか?」「新たなチャンスにつながる仕事はどれなのか?」といったことも考えていく必要があります。

ただし、ここにも例外はあって、自分ができなくても自分が持つ人脈(リソース)を活用するなどして、納期までに形にする確信があれば問題はありません。実際、今は大企業になったかつてのベンチャー企業が、そうして大きな仕事を取ったというエピソードは巷に溢れています。

デキる人は「自分の勝ちパターンを持っている」

そうなると、「どうやって仕事を受ける能力を上げていけばいいのか?」ということが、次の課題になってくるでしょう。もちろん、ある程度の経験がモノを言うのは当然です。とはいえ、経験するだけでは必ずしも十分ではなく、その都度、振り返りを行って、「うまくいった場合」と「いかなかった場合」を比較するようにします。そうやって成功事例をパターン化することによって、自分自身に落とし込んでいきます。

万一、自分だけでパターン化ができない場合は、「上司や先輩の力を借りる」というのも1つの方法です。デキる人を観察してみると分かりますが、必ず自分の中に勝ちパターンを持っているものです。そういう人に「今回、仕事がうまくいった理由を、自分ではこう考えています。先輩はどうお考えでしょうか?」というような問いかけをしてみるといいでしょう。

成長にとって、一番の起爆剤は、先人からのフィードバックです。先輩から「本当は、ここをこうしたらもっとよかったんじゃないか」などとアドバイスがもらえれば、行動をパターン化する際の大きなヒントになります。他には、先輩の口グセを真似したり、「技を盗む」というのも非常に効果的です。

本当に怖いのは、自分の適性がわかっていないこと

もし、実際に「顧客や上司からの依頼を断る」場面に遭遇した場合、それを実行するのは確かに勇気のいることです。「ここで断ると、次の仕事がこないかもしれない」という思いがよぎることもあるでしょう。断る際のコツとしては、「断る理由をきちんと話す」ようにすることです。これなら相手も納得しやすく、できないことを「できない」と言うことで、かえって信頼関係が深まる場合もあります。

怖いのは、いただいた仕事を断ることよりも、自分が「何ができて」「何ができないのか」が分かっていないことの方です。意外に、自分の能力を真に把握できている人は少ないのが現実ですから、それができるようになるだけでも、周りとの差別化ができる材料を手にしたことになるのです。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は39万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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