エンジニア・竹井成和さん/コミュニケーションを深めるための、ツールと気持ち【夫婦のチームワークvol.7】
ニュースアプリ『SmartNews』のエンジニアとして働く竹井成和(たけい しげかず)さんは、大手通信キャリアに務める奥様と、もうすぐ2歳の娘さんとの3人暮らし。家事分担には、タスク管理アプリ『Trello』を活用しているといいます。タスクの“見える化”が夫婦関係にどんな影響をもたらすのか、聞いてみました。
タスクや関心事を共有するためのデジタルツール
――この連載では、さまざまに協力しあう夫婦の形について、男性視点から話を聞かせていただいています。ありそうで意外と出てこなかったのが、デジタルのタスク管理。竹井さんご夫婦は、家事分担にアプリを使っているんですよね。
はい。お互いに仕事を持っているので、結婚生活の最初から、家事は分担していました。そのうちにせっかくなら家事にとどまらず、もっと“2人のタスク”をまとめて整理できたらいいな、と。日々のToDoはもちろんですが、たとえば将来したいことをリストアップしたり、面白いと思ったビジネスや子育ての記事を共有したり……いわば“夫婦のプロジェクトに関わる情報”を、1つのサービスにストックしたいと考えたんです。
いろいろとツールを検討して行き着いたのが、僕が仕事でも活用している『Trello(トレロ)』でした。タスクを一覧したり、記事のURLや写真を貼ったり、モバイルでも操作しやすい。でも、あまりこういうサービスになじみのない妻は、最初はとまどっていましたね。僕ばかりいろいろと投稿しすぎたため、通知が多くてうざいと言われたり(笑)。
▲Trelloのタスク管理画面には、買い物リストや娘のインフルエンザ予防接種、気になる記事などのカードが並ぶ
とはいえ、お互いにほどよい使い方が身についてくると、やっぱりデジタルで一元管理できるのは便利なんですよ。日常の買い物も、IKEAに行ったとき探すものも、役所や郵便局などに行く用事も、すべてTrelloを見ればいい。とくに、保活(保育園に入るための見学や申し込みなど)をしているときは、細々としたタスクや共有すべき情報が多かったので、整理にすごく役立ちました。
家族のToDoがいまどうなっているのかすぐにわかり、相手のタスクが滞っているときはおしりを叩ける。そんな実用的なメリットのほか、やりたいと思っていることや興味のあることをシェアできるのも、夫婦のコミュニケーションとしてすごくいいなと思っています。
“見える化”できない部分は、主体的なかかわりでフォロー
――たしかに、やるべきこととやりたいことを見える化してシェアするのは、とてもよさそうですね。妊娠前にある程度の仕組みがつくれていれば、子どもが生まれてからも、すんなり育児にシフトできそうです。
そうですね。産前はどこか形式的な部分もあったけれど、子どもが生まれてお互い本当に時間がなくなったことで、仕組みに“魂”が入ったように感じています。いまは生活をちゃんと回すために、いつも仕組みをブラッシュアップしていこう、と心から思っている。それから、タスクとして“見える化”できないところにも気を配るようになりました。
たとえば、娘のお風呂や寝かしつけを分担しようと思っても、娘は「ママがいい」と言う。妻に頑張ってもらうなら、僕はそのぶん代わりにできる家事を多くやるし、妻がやっぱりしんどそうなときは、娘をなだめつつ僕が頑張ることもあります。こういうことは、単純に分担できませんね。
それから、妻が一人だけで娘の世話をするのはつらいから、まずは夫婦が2人そろっている状況をつくるようにしています。さいわい、僕の会社は理解があるので、リモート勤務や夜の在宅勤務にシフトできているのが大きいですね。調整すれば保育園の迎えも行けるし、普段も娘のお風呂と寝かしつけには間に合うように帰れます。厳密に役割を分担していなくても、とにかく2人いることが大事。手の空いているほうが、そのとき発生したタスクを柔軟につぶしていけるわけです。
――「2人いるということだけで全然違う」って、ものすごくわかります。そのほか、育児で心がけていることはありますか?
最適な方法を考えること、でしょうか。これは僕の性分でもあるんですが、できるだけ自分で考えたいし、いろいろ口を出したくなってしまう。たとえば、授乳は妻にしかできないので、どんなふうにするかはもちろん任せます。でも、お風呂の入れ方や寝かしつけなど、僕にも関係しているところはどんどん最適化していきたい。
お互い働いているわけだから、とくに時間についてはセンシティブになりたいんですよね。この子をちゃんと眠らせることが、僕らの時間を確保するために一番重要。だから、赤ちゃんを安眠させる方法については本を読んだり、ネットで調べたり、さまざまな方法を模索しました。
とはいえ、成長過程やその日の気分によって、昨日うまくいったことが今日は受け入れてもらえなかったりもする。だから、まずは娘の気持ちに寄り添うことが前提ですね。最近は、入眠前に絵本を読んで、一緒に寝落ちしちゃったりも多いです(笑)。
――子育ての情報収集や最適化を考えるのに、夫のほうが積極的というのはすごくいいですね。夫がどれだけ気にかけていても、やはり妻の負担が大きくなるケースがほとんどなので、前のめりな姿勢があるだけでずいぶん違うと思います。
理解が深まる“気持ちのやりとり”を
じつはいま、僕は仕事のあとに大学に通っています。昨年の春から2年間の修士課程です。プログラマーとして働いているけれど、学生時代は脳科学の研究をしていたため、プログラミングの基礎があるわけではない。次のステージへ進むには、ビジネス的な知見も踏まえてしっかり勉強したいと思っていて……仕事がちょうど一段落したときに入学を決めました。
――子育てと仕事を両立しながら、さらに大学! 奥様のリアクションはいかがでしたか?
「いいよ、行ってくればいいじゃん」と、さらりと言ってくれたんです。去年の夏は土日もがっつり授業だったりしたけれど、それでも笑って「母子家庭かと思ったよ~」なんて言ってくれる。妻には本当に感謝しています。
大学に通い始めてからはさらに時間がなくなって、いっぱいいっぱいになることも出てきました。それでコミュニケーションが足りなくなると、やっぱりトラブルにつながってくる。こないだは妻が体調不良だったのに、お正月の家族行事に行きたいと言ったから「そんなことより寝てなきゃダメでしょ」と言ってしまって……。
彼女が家族を大切にしたい気持ちを、ちゃんと理解できていなかったんですよね。最終的には「そんなに行きたいなら、無理のない範囲で行こう。でも、健康を第一にね」というところに落ち着いたんですが、もっとお互いの気持ちを共有できていれば、もめることもなかったなと思っています。
――では、気持ちのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
毎回はやっぱり難しいけれど、感謝の気持ちはできるだけ言うようにしています。マネジメント的な視点で考えてみると「あなたがこうしてくれたから、こんなにいいことがあったよ」というフィードバックをすれば、相手のモチベーションにもなりますよね(笑)。そこに、心からの感謝が乗っていれば、もっといいやりとりになる。
子どもができて、コミュニケーションをとらなきゃいけないところはとらなきゃって思えるようになってきたし、おかげでお互いの理解も深まってきました。「この子のために、ひいては自分たちのために」という、共通目的ができたからだと思います。ときには爆発するけれど、必要なときに衝突できるっていうのはいいことですよね。まだまだ発展途上だけど、これからの僕らにも、心配はしていません。
撮影:池田博美
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