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作曲家 細川俊夫と振付家サシャ・ヴァルツによるコレオグラフィック・オペラ『松風』、遂に日本上陸

作曲家 細川俊夫と振付家サシャ・ヴァルツによるコレオグラフィック・オペラ『松風』、遂に日本上陸

 新国立劇場が、世界的に活躍する作曲家、細川俊夫のオペラ『松風』を2月16日から3公演上演を行い、満員の客席に万雷の拍手をもって迎えられた。

 一寸先も見えない闇の中静かに幕が上がり、そこに聞こえるのはひいては返す波の音ばかり。ゆれる木の枝と波の動きを想起させる身体の動き。しかしそこに足音が響くことはなく、現実と異界の境は重なり、交錯し、「Yukihira…」と半ば絞り出すように呟くように吐き出された声は、また寄せてきた水の音にさらわれてゆく。

 本作は、世阿弥による能の傑作『松風』をもとに、気鋭の作家ハンナ・デュブゲンがドイツ語で台本を執筆。作曲家細川俊夫の思い描く、音楽とダンスが一体となった舞台を実現すべく、ピナ・バウシュの後継者とも言われる、世界有数の振付家サシャ・ヴァルツと、現代美術家の塩田千春とピア・マイヤー=シュリーバーによるインスタレーションが空間を演出している。

 黒の糸が絡まりあう、夜とも海ともとれる幻想的で美しい暗いキャンパスに、二人の乙女“松風”と“村雨”が月の明かりにのみ照らされて空中を舞いながら歌う。まっすぐに続いてゆく平行五度の和音がしなやかに陰影を作り出し、ニュートラルでモノクローム、光と影の溶け合う世界を幻想的に描き出していた。

 最も印象的な黒い糸が絡み合う巨大なインスタレーションは、サシャ・ヴァルツから塩田へ素材のリクエストがあったり、細川とヴァルツは台本についても意見交換をするなど、その創作の過程は、ダンス、美術、作曲それぞれが相互にアイディアやリクエストを交歓しながらの共同制作であったようだ。各インタビューは新国立劇場公式サイトで読むことが出来る。

 歌い手は空中に吊り下げられながら、ダンサーに混じって演技しながら、また時には勢いよくリフトアップされながら歌わなくてはならない、難役となる。今回の松風、村雨の姉妹役には、本プロダクションに出演歴のあるイルゼ・エーレンス、シャルロッテ・ヘッレカントが迎えられており、ダンサーであるサシャ・ヴァルツ&ゲスツたちの動きとの一体感の完成度は見事というほかなかった。

 コレオグラフィック・オペラとして2011年にベルギー・モネ劇場で世界初演され、その後世界各国で大きな反響を呼んできた『松風』が、7年の時を経てようやく日本初演となった。今シーズンで任期終了となる飯守泰次郎芸術監督は、この上演を非常に喜び、シーズンラインアップ説明会では特にこの上演に触れ「芸術参与として新国立劇場に関わっていた頃からの念願が遂に叶いました。日本人作品の上演は新国立劇場の大切な役割だと思っている」と述べていた。この『松風』のイギリス初演の指揮者でもあった大野和士次期監督が、この流れを更に大きくし、日本人作曲家の素晴らしいプロダクションをワールド・プルミエで見られる日が来るのではないかと期待させてくれる舞台だった。Text:yokano

◎公演情報
新国立劇場 開場120周年記念公演
【細川俊夫/サシャ・ヴァルツ オペラ『松風』】
新国立劇場 オペラパレス
2018年2月16日(金)、17日(土)、18日(日)
全3公演

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