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ドローンにデータ活用―農業×IoTで革命を起こす笑農和の挑戦【#Techスタートアップ 特集】

IoTの力で、「遠隔稲作」を可能に

――笑農和(えのわ)のビジネスについて教えてください。

下村:スマート水田サービス「paditch(パディッチ)」の開発をメインに行っています。水田の水位調整を目的としたIoT水門機器です。

水田は水の管理がすごく大変で、日照時間や雨の有無に合わせて毎日細かい調整をしなければならないんです。農家は通常、複数の水田を持っていますので、これだけでも大仕事なんですね。一人じゃ回れないので、さらに二人雇って回ってもらっている人もいます。

さらに、台風が来たりすると夜中であっても見回りに行く人が多いんですが、富山県の農業用水路の幅が太いので、増水すると急流になってしまいます。富山県は水田の見回りに行って亡くなる人もいて、「水難事故死者数が全国最多」という不名誉な記録を持ってまして……。

そういった問題を解決できないかと思って開発したのが、paditchです。IoT用のSIMカードを搭載し、スマートフォンアプリ経由で、水門の開閉を行うことができ、遠隔での水位調整が可能となります。

――paditchを開発される前は、ネットを使った販促支援サービスがメインでしたね。高齢で、ネットリテラシーがそこまで高くないであろう農家のみなさんに売り込むのは難しくありませんでしたか?

下村:最初は本当に苦労しました(笑)。まだまだ農業にはアナログな工程が多くて、絶対ITが必要だという確信をもって営業に行ったんですけど、農家さんを回ると、こっちの思いとはかけ離れた現場感なんです。

どんなに説明しても「パソコンを売りに来た人」だと思われて、「違うんです。パソコンやスマホにソフトを入れるんです」っていう話をしても、「パソコン使うんでしょ?」って言われるばかりで……いや使うんですけど(笑)。そんなところからはじまりました。

なんとかとっつきやすいところからと思って、うちの商品じゃないんですけど、まずはタブレットの導入からはじめてもらいました。これで写真を撮って、音声で入力すれば作業日誌が簡単に書けますよと。

さらに、ハウスにセンサー置くと温度を自動で記録しますみたいな、できるだけ仕組みが単純なところから理解を深めてもらって、ようやく今、インバウンドでのご相談もいただけるようになった状況です。「今度ハウス建てるんだけど、スマホで温度取れる?」なんて言われると、随分変わって来たなと思います。

株式会社笑農和 代表取締役 下村豪徳氏

エンジニアチームは5人。富山に4人、神奈川に1人

――エンジニアチームは、どんなメンバーでしょうか?

下村:いま5名で、たまたまですが全員富山出身者です。ひとり、神奈川で在宅勤務をしている社員がいますが、あとはみんな富山在住です。入社動機はさまざまで、実家が農家なのでうちのビジネスに興味があるという人もいれば、IoTをやってみたかったからという人もいます。平均年齢は高くて、36歳ぐらいですね。上は50歳で、一番下が22歳です。

――みなさん、御社のどこに魅力を感じて入社されたのでしょうか?

下村:将来性だと思います。農業IoTだけで100%売上を立てている会社ってまだ世の中にないんですよ。農業IoTとは別事業をもって、そっちの収益をうまくまわしながらやってる会社がほとんどで。うちも似たような状況です。

それでも来てくれているのは、将来性があると判断してくれたからだと思います。会社の成長とともに社員も成長して、役職も給料もついてくるというのが理想ですし、そうなるようにしていくつもりです。

paditchの取得するデータが、次の農業を作る

――今後のビジネス展開について教えてください。

下村:うちはハードを作ってはいますが、それによって取れるデータにこそ、価値があると考えています。

農家の技術って極めて再現性が低いんです。ベテランでいいものを作る方ほど「経験と勘」を頼りにされている感じで。それはそれで素晴らしいのですが、このままですとその優れた技術が後世に残らなくなってしまいます。

また、異常気象への対策も深刻な問題です。例えばコシヒカリは、高気温が苦手な品種なんです。富山県の農家は95%が米農家で、そのほとんどがコシヒカリで食べてますから、このままだと全滅してしまいます。なので、今後、温暖化が続いても美味しいお米が収穫できるように、富山県は今、「富富富(ふふふ)」という品種への切り替えを推奨しています。

品種が変わると、ベテランの「経験と勘」は活かせません。新しい品種についていろいろ試すにしても、稲作は極めてロングスパンのプロジェクトで、PDCAを回すのも年単位になってしまいます。

paditchが数万単位で導入されれば、データの蓄積によってこれらの問題を解決することができます。導入さえしてもらえればデータが勝手に記録されますので、「雨が降ったらこう」、「気温◯度以上が◯日続いたらこう」、「富富富はこうしたほうがうまい」というように、ノウハウを言語化し、再現性を持たせることができます。

また、蓄積したデータを活用することで、水田に限らず、あらゆる工程をスマート化していくことができるのではないかと思っています。既に実用化しているドローンでの農薬散布もそうですし、いずれは種まきや稲刈りにもIoTの技術を活用できるのではないかと考えています。

次に実用化できそうなのは、田んぼと田んぼの間にあるあぜ道用の、草刈りロボットですね。開発が進んでいる企業があるので、そこと組む計画を立てています。これは3年以内に実用化できそうです。

さらに海外でも、三年以内にpaditchで実績を作りたいと思っています。展示会に出ると、すごくリアクションがいいんです。需要があるのはわかっているのですが、ネックはコスト。IoT用の格安SIMが出てきたように技術革新によって下がるコストもあるでしょうが、一番インパクトがあるのは生産台数の増加だと考えています。コスト抑えるためにもまず、国内での販売数を増やさないといけません。

大事なのは、能力よりも農業への関心

――——どんなエンジニアと一緒に働きたいと考えていらっしゃいますか?

下村:前向きで向上心のある人がいいですね。現時点での能力よりも、伸びしろを見たいと思っています。IoTやドローンに興味がある人もいいですが、不可欠なのは農業への関心です。現場にしか課題はないので、同じ工場のラインを歩いても気づく人はちょっとした違和感に気づくとか、農業はそういうのがいっぱいあるんですよ。

技術は学べば身に付くんですけど、その「気づく力」はセンスであり農業への関心の高さなので、そういった志向を持つ人に来ていただきたいなと思います。

(取材・執筆:今井雄紀[ツドイ] 撮影:飯本貴子)

株式会社 笑農和

2013年設立。スマートフォンで水田の水門を遠隔操作するサービス「paditchの開発・運営をはじめ、農業分野のIoT開発、IT活用コンサルティングを行うスタートアップ。北陸の企業で初めてKDDIの起業家支援プログラムに採択された富山発の注目企業。日経新聞、Yahoo!などメディア掲載も多数。

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