宝くじの悲劇!? 「年末ジャンボ1億円当選男」最悪の顛末 – 第3回 –
第1回
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ジャンボ宝くじで2等の1億円を手に入れた西田春夫さん(仮名・56歳)の元には、近しい兄弟や宗教信者の親戚、難病を抱えた遠縁の親類、ボランティア団体などが金の無心にやってきた。数千万を半年以内に失った彼。さらに災難は続くのだった。
絶対におまえのトコに投資なんかせん!
まあ、当選してから半年くらい経ったときのことですわ。自分の金を預けてた地元の銀行の支店長が、僕の家にやってきたんです。菓子折り持ってね。高級スーツのインテリ風の男やったんですけど、まぁ仕事が趣味みたいな奴でしたわ。
自宅に上がり込むなり、何を言い出すんかな、と思ってたんですけど、モミ手でいきなり「当行の投資信託の商品にぜひ預金を!」と……。
渋った顔をすると、土下座して頼んでくるんです。地銀の3,000万円は手つかずやったのは確かですけど、その情報片手にノコノコやってくるのが気に入らんかった。もう、人なんか信用してないし、腹立ってきてね。
「そんなもん金持ちなんかほかにもぎょうさんおるやろ! なんでオレんところにくるねん!」
「非常にいい商品なので、ぜひと思いまして!」
「ほかにいかんかい! なんで、投資なんかせなアカンねん!」
「あのぅ……お言葉ですが、宝くじに当選されたほとんどの方が当選金を3年以内に無くされるというデータもありまして」
「おぉぉぉぉ、おまえぇぇぇ~! なんでそれを!」
「このあたりのエリアのみなさんには有名な話です、よ……」
よく考えたら、この支店長は僕のことを考えてくれてたんかもしれんのですけど、このときの僕はそれどころやない。
「か、か、か、か、かぁぁ、帰れぇぇ!」
みんな知っている。近隣の住人はみんな敵や、そんな感覚でしたね。人間いうのは、恐っとろしいもんですわ。
それで、すぐさま断ったんですけど、銀行で金を下ろすたびに副支店長が頭を下げて、いちいち応接室に連れて行かれますねん。さすがに、こっちもキレてしもうて、あるときに支店長をどやしつけてやったんです。
「おまえ、人の米びつ覗くような真似しやがって、ええ加減にせえよ!」
「私は、当選金を今後の人生に有効利用されるように……」
「それが大きなお世話やと言うとるんや! 誰がおまえのところに投資なんかするか! アッホ!!」
「……」
苦虫を嚙み潰したよう顔になった支店長の拳が強く握られてました。
それからですわ、信託会社や資産運用会社を名乗った怪しい電話が1日に10件以上かかってきはじめたのは。たぶん、あの支店長が僕の個人情報を流したんやないかな、と思っとります。
でもね、僕もこのときは保身のことを強く意識してたんやと思いますわ。投資の商品になんてまったく興味なかったのに、毎日毎日電話がかかってくると、意識も変わってくる。電話のひと言めに僕の心をくすぐるようなことを言いよるんですよ。それで、絶対に素人が手を出してはイカンものに興味をもってしもうたんです。
それが“先物取引”ですわ。
いやでもね、はじめは断るつもりやったんですけど、あんまりしつこいもんやから、ひと言説教してやろうと直接会うことにしました。まずは「コラぁ!」とかましたろうかなと思ってたんですけど、それが甘かった……。
投資してくれないなら損害賠償の裁判をする
若い20代後半くらいの営業マンが、喫茶店のテーブルに資料を並べはじめたときに、開口一番、「オレは投資する気はまったくない!」と突っぱねたんです。そしたら、その男が烈火のごとく怒りはじめてね。
「西田さん、フザけてるんですか! 先物取引の話に興味があると思って、こちらは遠方からここまで足を運んできたんです! それにこれだけの資料を集めるのに、どれほど時間がかかったか! 何を考えているんですか!」
「は、は、はぁ……」
いきなり大声出されてワケわからんようになってしまいました。
「この資料を急遽用意するのに、うちの会社の調査部がどれほどの経費をかけたかわかりますか? こうなれば仕方ありませんね、うちの顧問弁護士を立てて、損害賠償請求の裁判を起こさせていただきます!」
「あわわわわぁぁぁ、そ、そんなぁ……」
「狙うのは、これからが熱いシカゴのコーンです! とうもろこしの市場はとにかく今後の狙い目です! やり方は簡単です、30万円から投資できますので! 必ずきますよ!」
気が付いたら、銀行に向かっていて、現金を引き出している自分がいました。預かり証と引き換えに、その営業マンに金を渡したんです。とりあえず、捨てたもんやと、示談金やと思って渡したんですけどね。でも、それがなんと1ヵ月後には45万円になっとったんですわ。その営業マンが配当金と元金を現金で持ってきよってね。
「こないなりますの?」
「ええ。投資すれば投資しただけ、配当金は大きくなりますよ! その45万円どうしますか? 次のにチャレンジしてみますか?」
ボロい、ボロすぎる! そう思った僕はその45万円と追加の55万円を彼に渡して、砂糖につぎ込みました。そしたら、すぐさま180万円になりましてね、そりゃ驚きましたよ! みんな先物取引すれば働かんですむのに……と、アホらしいので、会社を辞めてしまいました。
≫≫『損害金2,000万円、金に踊らされる妻、フィリピーナに500万円』へ続く
(C)写真AC
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(執筆者: 丸野裕行) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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