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クリッカーゲーム『MEGALOMANIAC』世界の支配者として地球を破滅させるまで買い占めろ!

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『クッキークリッカー』はいまだにジョークなのか皮肉なのか判断がついていない。ひたすらクリックすることでクッキーを作っていくことからスタートし、おばあちゃんに手伝ってもらったりしながらたくさんのクッキーを作っていくうちにやがて農場開拓から工場設立と大量生産へとグレードアップ。鉱山が出てきたあたりから話が変わりクッキーはお菓子か別の意味に変わっていく。やがて宇宙船を飛ばし、異世界へのポータルを開きながらクッキーを集める中で、クッキーは元来の意味を失い、万物を構成するマテリアルへと変貌していく…すいません、ここまで書きながらやっぱりジョークだと判断します。
 
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『クッキークリッカー』はインフレを起こしていくうちに元来の意味が変わってしまうめちゃくちゃな面白さが評判となり、数年前にはSNSをはじめとしてネタとして消費されていった。以後もこのフォーマットを利用した、いわゆるクリッカーゲームはいくつも現れた。

そんなクリッカーゲームのジャンルで、現実への皮肉に舵を振り切った作品がリリースされた。『MEGALOMANIAC』。この作品でクリックして増えるのはクッキーじゃなく、お金だ。なんだお金をクリックで増やすだなんて何のひねりもないじゃないか…と思うかもしれない。でも、クリックする矢印が指し示すのはドル札ではないんだ。あなたのお父さんなんだ。
 
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左が主人公・まだ自信なき18歳のリッチ・サベージ。右のお父さんの顔をクリックして金をもらう。

化物の誕生

時は1970年代。グローバルメディアの御曹司として生まれたリッチ・サベージは18歳を迎えると同時に自らも資産運用を始める。プレイヤーはリッチ・サベージとなり、まず手始めにお父さんの顔をひたすらクリックしてお金を増やす。そう、やることは完全に父親へのタカリだ。
 
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偉大な父親の死去。それを皮切りにリアルタイムでゲーム内の時間が進みだし、リッチの獰猛な活動が始まる。
 
なんとそれをお父さんが死ぬまで続ける。しかも、死んでからが本当の始まりである。グローバルメディアのトップの死去は大きなニュースとなり、リッチ・サベージはそのまま事業を引き継ぐ。ここまでにせしめた資金を使い、本格的に買収に乗り出していくのだ。

通常クリッカー系は延々と遊び続けることができるが、本作は違う。時間制限がある。リッチ・サベージが18歳になってから死ぬまでの期間でどれだけの資産を獲得し、世界のトップの資産家に名を連ねるかを競う。見方を変えればおおよそ70年代から現代、それから少し未来にかけての世界経済の動向を皮肉ったものでもある。

まず手始めにメディア系の買収に乗り出す。タブロイド紙や地上波テレビのネットワーク、新聞社を買収していく。買収後は1秒ごとに獲得できる資金が増えていくという、クリッカー系ならではの仕掛けだ。

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40代を迎えたリッチがブロガーを一瞬で買収する図。圧倒的な現実は誰が本当に消耗しているかさえあいまいだ。
 
泣けてくるのはメディア系でもブロガーを買収できることで、しかもかかる資金はどんなメディアよりも安いことだ。著名なブロガーがどんなに地方でで消耗を抑えようとも自分の頭で考えようとか本を出していかに自分が独立した個性的な存在であるか語ろうとも、巨大メディアの前ではワンクリックで雌伏してしまうこと教えてくれる。

情報の支配

クリッカーゲームが中盤に差し掛かるころにはスケールが大きくなることでクリックしてる対象が別物になってしまうことだと先述したが、本作に限っては一気に禍々しくなる。買収の対象がメディアからさらに広がり、食品業界や工業、ファストファッション業界にも進出する。果てはソーシャルメディアからVR業界まで手を出す対象まで留まるところを知らない。
 
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こんな乱暴な買収を重ねたとするとどうなるか?当然、 トラブルが起こる。食品業界など各分野で頻繁ににトラブルが発生するようになる。だが問題ない。序盤にメディアを買収してきたのは何のためか?
 
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食肉業界を買収後に発生した問題の解決法は…なんとメディアを使って「もっと肉食え」キャンペーン。
 
そう、こうしたトラブルをメディアを使って無かったことにしていくのだ。もちろん、それなりのコストを支払うことになるのだが、放置してしまうと収益が減少してしまう。さらに法曹界も買収していくことで、もっと厳しい問題も無かったことにできる。自分に都合のいいフェイクニュースをバラまいていくのである。

獰猛な欲望

リッチ・サベージが高齢になっていくと髪は白く染まりそして抜けていき、醜く老い始めていく。だが世界を買収しようとする男は意地でも健在であることを見せようとする。なんとオプションでカツラを装備することが可能。「リッチ・サベージは永遠に全盛期なのだよ」とアピールするのだ。でも顔に広がる染みやほほのたるみのような隠しきれない加齢はどうする?問題ない、顔にプラスチックを埋め込んで整形するのだ。
 
かつら
後半の億万長者にランクした後も健在を示すためにビフォーアフター。
 
リッチの獰猛な買収は留まるところを知らない。やがて政府にまで

彼が成人して死ぬまでに駆け抜ける時代は70年代から現在までの新自由主義やグローバル社会の拡大の歴史そのものだ。あらゆる思想や主義が資本主義を超えることなく敗北し、そのままグローバル社会に突入するもビル・ゲイツを代表にわずか数十人の大富豪が世界の富のおよそ半分を独占してしまうというあまりにもな現実を前に識者は資本主義の限界を説くような、そんな時代を皮肉っている。
 
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地球をそのものを買収する直前。もはや地球環境は毒々しい状況に…
 
しかし本作の最大の問題はここまでの皮肉ですら現実が超えてきていることだ。本作が開発されたのはおよそ2年前くらいからなのだが、当時はまさか本当に不動産王が大統領になり、しかも現在大変危険な国家と緊張状態にある最中である。一番びっくりするのは本作で「地球温暖化は嘘だ」とメディアを使って世論を操作するイベントもあるのだが、本当に少し前にも地球温暖化に対してそれを嘘だと切り捨てパリ協定を離脱するなどもはや現実がブラックジョークになってしまったかのようだ。

ではこれが陳腐になってしまっているか?というとそうではない。リッチ・サベージが地球ごと買収する段階まで行く後半、あるサングラスのアイテムが追加される。それを装備すると世界は灰色に染まりあまりにも禍々しい裏側に突入する。全登場人物の化けの皮がはがれ、自分たちが買収していた対象から裏のメッセージが表示される。この恐怖感ばかりは、現実で実現しないことを願うばかりだ。

そもそもの本作のタイトル『MEGALOMANTIC』とは“誇大妄想狂”の意味。主人公リッチ・サベージ(Rich Savage)という名前だってそのまま”残酷な金持ち”。資本主義の持つ地球を滅ぼすまで獰猛に食らいつくす欲求を止めることができない。そんな体験になるのだ。

【作品情報】
タイトル:MEGALOMANIAC(公式サイト
制作者:James William Foulser
クリア時間:1プレイ1時間前後
パブリッシャー: Rich Savage Global Media
対応OS:PC,ios
価格:PC版:498円
ios版:120円

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