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「デジゲー博2017レポート」おじぎしかできない空手家。21世紀の空手はアボカドでインスタ映え。『KARATE URANAI』

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デジゲー博は個人製作ゲーム系のイベントの中でも、日本国内の即売会イベントで発達してきた同人ゲームの流れが大きいイベントだ。個人製作が多様性なのはもちろんだが、やはりイベントごとに一定の傾向はある。

英語圏を中心とし、世界的にダウンロード販売を中心としているインディーゲームのイベントを比べると、おおよそ日本語圏に限定され、比較的パッケージやCDなどフィジカル媒体での販売が多い同人ゲームの文化とでは若干のカラーの違いはある。メインビジュアルの傾向がアニメ・イラストレーション調が特徴であり、既存のアクションやシューティング、ビジュアルノベルなどはっきりとしたジャンルのフォーマットに乗っ取っている。

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そんな中で異色なのはksym氏と内田氏の制作した『KARATE URANAI』である。3DCGにピクセルアートのようになるシェーダーが魅力的なビジュアルで、ふたりの空手家が岩場の上で向かい合い、獣がその周りを歩いている。

さあどんな格闘ゲームなのだろうか?…ところが、そんな21世紀の空手道についてksym氏はコントローラをもった筆者にこう説明した。

Aボタンで礼…Bボタンでアボカドを投げつけます

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…そう、プレイヤーの操作する空手家は正拳突きも、空手家であり総合格闘家の菊野克紀の放つような三日月蹴りも操作することはできないのである。ふたりの空手家は勝手に闘いだす。格闘ゲームに擬態した、ジャンルに括れないゲームだ。

じゃあこのゲームの目的はなんだよ?というと、タイトル通り「占い」である。空手家が崖から落下することで運勢が現れるのだ。

だけど、崖に落ちるまでにある行動を取るとある程度運勢を変えられる。しかしそれは、謎の獣(どうやら虎らしい)がボトボトと落としているウンコを空手家が踏むことで運気が上昇するとのことだ。ウンコを踏んで運を上げる。恵まれたビジュアルから放たれるコロコロコミック読者層のようなダジャレに言葉を失うのと同時に、龍がふたりの空手家の後ろで舞い上がった。ksym氏はすかさず説明する。「龍もウンコするんですよね」

さてこのゲームいつスタートになるのかと思ってたら、なんと最初から始まっていた。試遊待ちで隣から画面を見ているとき、身も心もデモ画面だろうなと思っていたらそれはプレイ画面だったのである。何を書いているのかわからないと思うのでこの点を明らかにしておくためにksym氏にうかがったところ、

「そうですね“運命”…っていうのは、自分で決められるものではないので、プレイヤーが介入できる余地を限りなく下げているんです

何も分からなかった。運というワードで韻を踏んでいること以外は。画面上の空手家たちはウンコを踏み、アボカドをぶつけられ、岩場から落下しつづけている。いま「吉」が出た。

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筆者は、うれしかった。
 
散乱するアボカド群、そして占いというテーマ。淡々とKsym氏は説明してくれた。「“女子力”ってのがキラーコンテンツなので」そして「インスタ映え…狙ってますね」F1層へのマーケティングは万全だ。

Ksym氏は続ける。「すべてにおいて哲学的な意味を根底に持ちながら作っているので、『KARATE URANAI』の場合はなぜ“戦う”のか。あるいは、なぜ“戦わない”のか。playすると戦えって思うんですけど、人間の秘めたる“戦争”が起こるってのはそういう気持ちが根底にあるから。自分自身と向き合うという視点も持ってほしいかなというmessageが込められていますね。」

氏の語るとおり、人間の持つ闘争心、戦争への疑念が占いの中で表現される。アボカドを投げすぎると、なんとアボカド農家が激怒しているとの忠告が表示されるのだ。そうすると運が下がるという。空手家どうしの闘いではなく、外野の問題から秘めたる戦争の火種が生まれるというのは格闘技イベントPRIDEが選手同士の闘いではなく裏社会との関係をリークされたことから消滅につながった現実から知られているように、まさに普遍的な問題を描いていると言える。

ツッコミ不在の文章はともかく、ここまでビジュアルとしてもプレイ内容としても毛並みが違うのは訳がありそうだ。制作されたKsym氏と内田氏の背景をうかがったところ、二人ともデザイナー出身だという。筆者はアートやデザイン系出身のゲームデザイナーとして飯田和敏氏の『アクアノートの休日』などを思い出すという話を伺ったところ、「ああいう目的のない系、だけどいいエモーションが得られるみたいな。そういう面を重視していきたいなと思っています。」と答えていただいた。また「現状のゲームでは、たとえばソーシャルゲームなどはプレイした時の初期衝動が失われている感じがあります」という。
 
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他の作品ではiosAndloidで配信中の『UTU』などが展示されていた。巧みなデザインとビジュアルから繰り出される、作品ごとの躁鬱のふり幅が印象深かった。今回紹介した『KARATE URANAI』は体験版も用意されており、格闘ゲームに見せかけた謎の占いがどんなものなのかを確かめてほしい。体験版はこちらから

作者Ksym氏の公式サイト

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