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NY Issue : Interview with B.Thom Stevenson

NeoL_BTHOM_PORTRAIT_BW : Photography : Diego Garcia

BRAIN DEADへの作品提供やアウトサイダーアートのMary T. Smithとの二人展でも注目を集めるアーティスト、B.Thom Stevenson。イラストレーションから油絵、彫刻に至るまで様々な表現方法を探求する彼は、大きな窓から美しい景色を眺められるスタジオで、幼馴染の妻と賢い犬と共に作品を生み出すことができる今が一番充実していると言う。

——今どんな作品を作っているんですか。

B.Thom「新しくキルト・ペインティングを始めたり、油絵もたくさん描いている。ドローイングもね。僕はペイントやドローイング、彫刻など、一度にいろんな作品に取り掛かって、それぞれを作っていくスタイルなんだけど、そうすると次々に移っていけるのがいいんだ。最近はノンストレッチのキャンバスにペイントして、後で伸ばすってことをやっている。ストレッチャーは高いし、伸ばすのに労力と時間も使うから、いざ描こうとする頃には貴重なものに感じて緊張してしまうんだ。だからもっとリラックスして自由に作品を作れるようノンストレッチに描いていた。こういう絵やアブストラクトな油絵もやっているんだ。Josh Smithの作品に似ているけど、本能的ではありながら何を描くか考えているからそれよりはもう少し意図的な感じだと思う。こういう修練を楽しんだり、この夏は締め切りなどにあまり縛られないようにしようとしていた。もうすぐショーがあるからもう少し準備するべきなのかもしれないけど、他の作品に気を取られていたんだ。なんだかアートバカンスみたいだった」

——もともと絵を描くのが好きでしたか。なんでも家族の影響が強いそうですね。

B.Thom「うん、家族に影響されているアーティストは多いと思うよ。僕は大家族で育ったんだ。子供の頃はすぐ気が散っちゃって、ちょっと問題児だったんだけど、アートをやらせておいたら他のことから気をそらせることに気づいたんだと思う。クリエイティヴな親戚は多いんだ。キルトは、祖母の影響が強い。祖父母はアイルランドから渡米してしてきて、家族のためにブランケットを作っていたんだ。便利だけどすごくクリエイティヴなブランケットだった。祖母は賢くて、すごく素敵な作品を作っていたから、それを見てキルト・ペインティングのアイデアも浮かんだんだ。小さな作品を繋げて大きな作品にしてるんだけど、それって家族みたいだろう?」

——子供の頃に作ったもので自慢の作品は?

B.Thom「3年生の時にあったアートコンテストの作品かな。透明のお城を描いてコンテストに出したかったんだけど、どう作ればいいか分からくてイタズラ好きの祖父に相談したんだ。そしたら、『何も描かないんだよ』って言われて、空白の作品を出した。銀色のマイラー(ポリエステルフィルム)に白い絵の具を塗ったんだ。おじいちゃんは大爆笑して、誇りに思ってくれたと思う。振り返ってみると、3年生にしてはちょっとスマートな発想だったかもしれないね。おじいちゃんに認められたかっただけなんだけど、この作品はWooster Art Museumに展示されることになった。もしアートへの興味が深まった出来事を一つ選ばなくてはいけないとしたら、その絵にまつわる出来事かな。小学3年生にしてはすごくコンセプチャルな発想だったよね。ただ生意気に楽しんでいたんだ」

——アートスクールでイラストを専攻したのはなぜ?

B.Thom「入学当初はグラフィック・デザインを専攻していたけど、一学期しかやらなかった。僕の親はアートで生活できるとは思っていなかったから、アートスクールに通うことに反対していて、それをグラフィック・デザインは儲かる職業だからって説得して入学したんだよ。でもクラスメイトと話していて親の許可なしでも専攻を変えられることを知ったから、彫刻に変更した。まだ18歳になったばかりだったから、何をするにも親の許可が必要だと勘違いしていたんだけど、自分で学費を払っていたし、親の人生ではなく僕の人生だからってことで変えることにした。でもしばらくしたらペインティングをやりたくなって、また専攻を変えて。ペインティングは悪いプログラムじゃなかったけど、僕には合わなかった。そのプログラム出身の友達で素敵な画家もいるけど、みんなフィギュラティヴ・アートを作っているんだ。僕ももしペインティングを続けていたら、今はフィギュラティヴ・アートを作っていると思う。で、どうしようと迷っていた時にKurt Vargo教授と話したら、彼が『イラストレーションはアブストラクトな問題解決方法なんだ』って言ってて、アブストラクトな問題をアブストラクトな方法で解くというのはすごくいいなと思った。僕は作品を通して直線的ではない話を伝えたり、実在しない問題に対してアブストラクトな答えを出しているんだ。デタラメな言語で事実を伝えている感じ。イラストレーションを専攻しなかったら学ばなかった技術もあるし、素早く作業をできるようにもなったから良かったと思うよ。なんかいつの間にかこうなっていたんだ」

BTHOM_STUDIO_BW : Photography : Diego Garcia

——文字が入っている作品もありますが、その場合の文字はデザイン的要素として捉えているのか、言葉の意味まで考えているのかどちらですか。

B.Thom「両方だと思う。でも、まずは見た目かな。ほとんどが意味よりデザイン性で選んでいる。アブストラクトな物に意味を持たせたら、イメージを補うキャプションのようになるし、人々がそれを見てどう反応するかが面白いんだ。抽象的な物の意味や自分自身について考えさせたいんだよ、ロールシャッハテストみたいにね。僕自身は作品の意味はあんまり考えずに潜在意識や無意識に任せて作っている。早いスピードでまとめあげているから考える暇がないんだ。METALという文字が入ってる作品は、買い物リストにたまたま書いてあった文字が目についたから取り入れたんだよ(笑)」

——壁やキャンバス以外にもいろんな素材に作品を描いたり、飾ったりしていますが、それはなぜ?

B.Thom「わからないな。ある場所に飾ることを目的に作ることはあまりなくて、おもしろい素材があったら使う感じだね。例えば、あの木に飾ってあるのは下描きのスケッチなんだ。コピーやコラージュでの習作が多いから応用できるものが好きなんだと思う。Tシャツを作るのも、応用できたり機能的なアイデアが好きだから。美しいイメージはキャンバスに描く必要も額に入れる必要もないと思う。電信柱を絵で包むのも、ドラム缶や波型金属板に描くのもいいね。波型金属板からはノスタルジーを感じるんだ。Shrineというギャラリーのショーのために電信柱に作品を飾ったんだけど、電信柱を見ると自分が育った場所を思い出すんだよね。そこに意味や効果が必要ではないし、作品の一部としては見ていない。ラジオステーションが二局同時に流れちゃった時のように、たまたま被さった感じかな」

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