「自分だけの自転車」を街中へ オーダーメイド自転車メーカー「Cocci」CEO・勝俣俊二

access_time create folder生活・趣味
勝俣俊二

自分のやりたいことを仕事にしたい。誰もが持つそんな思いを実現している社会人は、何を考え、何を経験し、目標を叶えてきたんだろう。インタビューを通して「バイトで学んだことがその後のキャリアにどう役立ったか」「人生の岐路に立ったとき、どんなモノサシで自分の道を決めたのか」を聞いてきました。

今回紹介するのは、神奈川県にある自転車メーカー「Cocci」CEOの勝俣俊二さん(33歳)。オーダーメイド自転車の製造と販売を手掛けています。フレームにホイール、タイヤなどのパーツの色を自由に選んで自分だけのおしゃれな自転車を手に入れられるこのサービス。学生や若手ビジネスパーソンの間で人気を博しています。この独創的な事業を生み出した勝俣さんは、どんな道を歩んできたのでしょうか。

 

自分でデザインするオーダーメイド自転車を、たくさんの人へ

勝俣俊二

――どんな自転車を売ってらっしゃるんですか?

「Cocci Pedale」というブランドのオーダーメイド自転車です。シンプルで美しい、街乗りに適した自転車を追求して独自の設計を採用しました。最大の特徴はパーツの色を選んで自分好みの自転車をつくれること。フレームやタイヤ、サドルはもちろん、ペダルにチェーン、ロゴマークまで20のパーツそれぞれの色を14パターンから選べます。その組み合わせは天文学的な数字になりますよね。まさに世界に一つの、自分だけのおしゃれな自転車を手に入れられるんです。

――学生や若者から支持されているようですね。

事業をはじめるとき、若い人がどんな自転車を欲しているのかを調べるために渋谷の街や大学のキャンパスでアンケートをしました。300人以上の話を聞く中で、おしゃれな自転車ならお金を出して買いたいという意見が多いことに気がつきました。さらに、自分仕様にデザインをカスタマイズできるものへのニーズが大きかったです。出せる金額は5万円程度。この結果をもとにCocci Pedaleを立ち上げ、おかげさまで学生や20代の社会人の方を中心に好評をいただいています。

――店舗では販売していないのだとか。

はい。すべてインターネットで注文を受けて生産し、お客様のもとへ発送しています。ホームページ上でイメージを確認しながらパーツの色を選択して、自分の自転車をデザインしてオーダー。どの色を選んでも価格は5万5000円です。無数の色の組み合わせを用意しているので、本体は色が生きるようラインを細くしていますし、ブレーキの位置や配線、タイヤの幅などもデザインを邪魔しない設計になっています。製造は職人がひとつひとつ手作業で行います。塗装、部品の組付け、検査を自社工場で行い、出荷となります。また北海道から九州まで、各地のカフェや美容室、シェアオフィスとコラボして、試乗やメンテナンスの拠点も設けています。今後も長く大切に乗ってもらえるおしゃれな自転車を多くのお客様に届けたいと思っています。

「Cocci Pedale」のホームページ

 

美容師になるためにダブルスクール バイト時代に得たもの

勝俣俊二

――以前は美容師をされていたそうですね。

そうなんです。上京して大学に入ったのですが、美容師になりたいという気持ちが強くあって、大学2年次に通信制の専門学校に通うことにしました。全日制よりも学費が安かったですし、ダブルスクールも可能だったのが理由です。ただ専門学校の入学資格のひとつが「美容室で働いていること」だったので、学校の近くにあるサロンでバイトを始めました。

――ダブルスクールに加えてバイトをするのは大変そうです。

休みも少なくて給料も安いですし、それなりに大変でしたね。やらせてもらえるのは裏方の仕事ばかりでしたが、とにかく技術を盗んでやろうという気持ちでがむしゃらに働いていました。美容師になるという目標がはっきりしていたので、それができたのだと思います。

――バイトで学んだことは。

美容室には毎日、年齢も性別も違うたくさんのお客様がいらっしゃいます。美容師はそのすべてのお客様を必ず喜ばせなくてはいけないミッションを背負っています。単一のサービスを提供すればいいわけではないので、それを遂行できるかは限られた時間でお客様のことをどれだけ理解できるかにかかっています。たくさんのお客様と接したことで、空気を読む力というか、相手を理解する能力がつきましたね。

 

人気スタイリストを退き、上海へ

勝俣俊二

――卒業後はバイト先へ就職、スタイリストになられたんですよね。

4年ほど働いていましたから、少しずつお客様がつくようになっていました。独立開業したいという気持ちがあり、もう少し自分を成長させたいとも思っていました。自分に必要な成長とは美容技術なのか人間性なのかを考えたときに、お客様を喜ばせることができるのは「人間としておもしろい美容師だ」という答えにたどり着きました。そのために、3年間海外で視野を広げ、帰国して独立することを決めました。

――なぜ、上海に?

上海万博が開催されるなど、当時目覚ましい発展を遂げていたからです。条件も良く、現地のヘアサロンに自分でオファーして働くことになりました。まず驚いたのは、中国人のビジネスに対する感覚です。日本を凌ぐ超ネット社会で通信販売も盛ん。ビジネスチャンスがあると見るやすぐにチャレンジする柔軟性がありました。それにはすごく刺激を受けました。

――いまのビジネスのヒントもそこで得たんですよね。

はい。自転車は長年趣味で乗っていて、イベントに出場したりもしていました。上海では、自転車のパーツを安く工場直売しているところを見つけて、自分で自転車をつくって乗っていました。これが勤務先でお客様の目に留まり、「自分もほしい」と言われて製作したらすごく喜んでもらえたんです。ほしいというお客様がどんどん増えていき、結局半年で50台ほど製作しました。そのとき日本人のお客様の一人に誘われて、一緒にCocciを創業することになりました。

 

幸せな人生を送るために仕事をする

勝俣俊二

――海外へ渡って起業するに至って、仕事観が変化したそうですね。

日本で美容師をしていたときは、ただがむしゃらに、自分を犠牲にしながら仕事第一の生活を送っていました。でも今は、いかに幸せな人生を送るかを追求するようになりました。何を幸せと感じるかはいろいろな尺度がありますが、やっぱり自分と周囲の幸福度を高められるような仕事をしなければいけないと思っています。今後は、自転車以外にもビジネスに広がりを持たせていきたいですね。美容師も嫌いで辞めたわけではないので、機が熟せばなんらかの形で美容にも関わっていきたいと思っています。

――いまバイトをしている読者へアドバイスを

海外で働いているときに感じたことですが、日本人の働き方は「会社におんぶにだっこ」状態になりがちだと思うんです。中国では待遇に不満があれば雇用主にしっかり主張しますし、主体的に働いている人が多いです。幸せな人生を送るには、働き方を自ら考える姿勢は大事だと思います。そのために、スキルを身に着けて、自分に自信をもって働けるようになっていってほしいですね。

 

自分でゴールを見据え、道を切り開く

 

ダブルスクールで美容の道を選び、やがて海外に渡り、全く別の仕事で起業をした勝俣さん。どの選択にあたっても進むべき道を自ら考え、ゴールをしっかり見据えていたからこそ、飛躍につながったようです。人生の幸福度を高めるために主体的に動いているという勝俣さんの姿は、これからのバイトや社会人生活を考えるヒントになるのではないでしょうか。

  勝俣俊二(かつまた しゅんじ)

1984年 山梨県富士吉田市生まれ。大学在学中に美容専門学校に入学し、卒業。都内ヘアサロンで勤務後、独立を目指して2010年に中国・上海へ渡る。帰国後の2014年9月、株式会社Cocciを設立しCEOに就任。

関連記事リンク(外部サイト)

俳優、AKIRAインタビュー「挫折は決して悪いものではない。成長過程の一環なのだから」
「カレーハウスCoCo壱番屋」全国接客コンテスト日本一に聞く! 『接客はお客様を観察することが大事。“状況を把握するスキル”が身に付きます』【バイトの達人】
世界一周で1,000人カット 旅人美容師・桑原淳に聞く、バイトを通して学んだ社会人としてあるべき姿とは

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 「自分だけの自転車」を街中へ オーダーメイド自転車メーカー「Cocci」CEO・勝俣俊二
access_time create folder生活・趣味
fromA(フロム・エー)しよ!!

fromA(フロム・エー)しよ!!

“学生生活がもっと楽しくなるお役立ちマガジン” をコンセプトに、ニュースやコラムをお届け。バイトの探し方、履歴書の書き方、面接のコツなどのノウハウ情報や、インタビュー記事、おもしろコラムを配信中。

ウェブサイト: http://www.froma.com/contents/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。