老人力はポジティブに捉える!? 笑って読める病気のしくみ
「医学」と聞くと、医者や看護師ではない私たちはどうしても身構えてしまうもの。「病理学」という言葉にしても、「むずかしいに決まってる」とハナから拒否してしまう人も多いかと思います。
けれど、病気とは誰しもがなるもの。なぜ私たちは病気になるのか? 病気とどのように付き合っていけばよいのか? これは知ることができるものなら知っておいて損はない……どころか、生きるうえで得することがいっぱいではないでしょうか。
本書『こわいもの知らずの病理学講義』は大阪大学医学部で教鞭をとる著者・仲野徹教授が、学生相手におこなっている病理学総論の内容を「近所のおっちゃんやおばちゃん」に読ませるつもりで書きおろしたもの。「いろいろな病気がどのようにできてしまうのか、について、できるだけやさしく、でも、おもしろく、書いていくつもりです」と最初に宣言しているとおり、ボケとツッコミ、しょうもない雑談をはさみながら、病気のしくみを笑いとともに解説するという知的エンターテインメントとなっています。
実際にどれほど面白いかというと、たとえば第1章「負けるな! 細胞たち」に出てくるアンチエージングについて。毛髪に不自由をしているという著者は、日本で認可されていない薬を米国留学中の後輩から送ってもらい、使っていたことがあるといいます。「が、ある日、ふと思ったのです。いつまで続けるのか、と。そして、こんなことしていいことがあるのか、と。抜け毛をある程度は防げても、着実に毛は減っていきます。主観的には抜け毛が減ったといっても、客観的にはハゲは着実に進行しているのです」(本書より)。
というわけで潔く生きていこうと決めたそうですが、著者はこれは育毛だけでなくアンチエージング全般に似たようなことがいえるのではないかと投げかけます。アンチエージングをもてはやすのではなく、「老人力」をポジティブに捉えて、日々老いに関する新たな発見をしながら上手に老いていくのが望ましいのではないか、と。ハゲネタを自身で果敢にいじる姿勢に笑いを禁じえないとともに、同時に現代の過度なアンチエージング信仰について考えさせられるものがあります。
さて、第1章では細胞について、第2章では血液について書かれている本書ですが、第3章・第4章では「がん」についてかなりのページが割かれています。
おそらく私たちがいちばん恐れている病気であり、実際に死因の1位となっている「がん」。本書では「がんってなに?」に始まり、「良性と悪性のちがい」「がんと遺伝」「がんの進化」といった私たちも気になる項目が並びます。さらに子宮頸がん、肝臓がん、胃がんと各がんについても丁寧な解説が続きます。
こうしたページが続いたあとで、最後に著者は「がんは運である」と言います。それは、どの病気にかかるか、どのような死に方をするかは運に左右され、私たちが選ぶことはできないからです。
ではむやみやたらとがんを恐れ、がんにかかったら恐怖とともに死ぬしかないのかというと、けっしてそうではありません。「がんは運である」と著者は言いますが、「しかし、運なのだから何も考えなくていい、という訳ではありません。がんに限ったことではありませんが、運を味方にするには、正しい知識を持って、自分の頭で判断することが重要です」と説いています。そう、知識があれば、自分のがんがどのようなものか理解し、最善の治療法を探りつつ、自分の生き方を考えることも私たちにはできるのです。
そう考えると、やはり病理に対する知識は持っておいて損はない。むしろ、持っていたら儲けもの。それを医学知識がない人にも面白おかしく読めるように書かれた本書は、病気にかかる可能性がある私たち誰しもが読んでおくべき1冊と言えるかもしれません。
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