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【10-FEET インタビュー】“これで最後やぞ!”と信じ込ませて制作に取り組んだ

結成20周年を迎えた今年、実に5年振りとなるオリジナルアルバム『Fin』を完成させた10-FEET。ライヴキッズが狂喜するハイテンションな曲から、しっかり聴かせる深みのある曲まで、10-FEET節全開の燃えて泣ける全15曲です!
L→R KOUICHI(Dr&Cho)、TAKUMA(Vo&Gu)、NAOKI(Ba&Vo) (okmusic UP's)
何をやっても妙に様になる感じが 自分たちらしさかもしれない

──7月に開催された『京都大作戦』をはじめ、今年もたくさんの夏フェスに出演しましたが、アルバムはいつ制作していたのですか?
KOUICHI
「アルバムって括りで本格的に取り組み始めたのは5月くらいかな? そこからフェスの合間にレコーディングして、つい最近まで作業してました。今年の夏はなかなかでしたね(笑)。」
──去年からシングルのリリースが3枚続きましたが、アルバムを意識し始めたのは?
TAKUMA
「アルバムが見えたのは久々のシングル「アンテナラスト」(2016年7月発表の15thシングル)を作り始めたくらいです。それまではシングルを出すのに精いっぱいでアルバムというところまで気持ちがいかなかったんですけど、周りの人が口々にアルバムを意識させてくれたり。いつもは2枚シングルを出してアルバムという感じだったんですけど、もう1枚出さないと分からんなと思ってたんです。“アルバムの前にシングルを3枚出してみたい”という気持ちもあって、実際に3枚出して計9曲を発表した時、続けて曲を作っていくリズムだったので、その推進力のまま、アルバム制作に入ることができました。」
──「アンテナラスト」のリリース前に「ヒトリセカイ」(2017年2月発表の16thシングル)の原曲ができていたと聞きましたが、やっぱり曲作りモードに入ると新曲も生まれてくるものなのですね。
TAKUMA
「前のアルバムをリリースした翌年くらいにも制作に取り組んでたんですが、何を作ったらいいのかよく分からない中での曲作りだったというか。「ヒトリセカイ」はその時から素材としてずっとあった曲で、アイデアが出てから曲になるまで過去最高に長かったかもしれないですね。アレンジまでしながら、なかなか完成せずに進んでいったというのは、あの曲が初めてでした。今回のアルバムに入ってる「Fin」や「way out way out」も同じ時期に作ってたんですけど、シングルをリリースした時は“今出すんやったらどういう曲やろう?”ってところにこだわって、“めちゃくちゃ良い曲やけど、今じゃない”みたいな話をしながら曲を選んでたんで。それくらいからアルバムを意識し始めて、“作れる時に作っておきましょう”みたいな感じで曲を作っていって。アルバムはアルバムで制作期間を京都で設けて、ある程度かたちになってから東京でレコーディングに挑んだんですが、シングル制作で得たテンポ感、リズム感、制作の呼吸がそこで合っていって、構えることなく、気が付いたらアルバム制作に臨めたというのは、ほんまに良かったですね。」
──そして、完成したアルバム『Fin』ですが、シングルの流れだと少し重い作品になるのかなと思っていたら、1曲目「1 size FITS ALL」から10-FEETの真骨頂と言える激しい曲で、“やったー!”と両手を挙げて喜んじゃいました。
TAKUMA
「“やったー!”って? ありがとうございます(笑)。」
──で、15曲聴いて思ったのは、すごく10-FEETらしいアルバムだなということで。シングル3曲で奥の奥まで掘り下げることができたから、真逆に振り切ったアッパーな曲やふざけた曲もすごく映えているし。10-FEETがいろんな角度から見えるアルバムになったんじゃないかと思うのですが。アルバムが完成しての感想はいかがですか?
NAOKI
「どんなアルバムができるかっていうのは、まったく想像できなかったですね。曲が揃って曲数や曲順とか決めながら、やっと全体が見えてきたというか。15曲入りっていうのも初めてやったんですけど、結果、どれも必要な曲やったし、この曲数と曲順がベストだと思います。激しい曲もあれば、聴かせる曲もあって、それは今までもやってきたことでもあるんですけど、いろんなベクトルの曲があるからこそ客観的に聴いても飽きずに何度も聴けるアルバムになりました。」
KOUICHI
「みんなで曲を選んで、曲順を決めた最終形にすごい満足してますね。一曲一曲がしっかり立っててキャッチーなんで、こんだけ曲数があっても聴けるんやろうなって。サッカーで例えたら、全曲がペレみたいな。」
TAKUMA
「キーパーも? ペレはキーパー苦手やろ(笑)。」
──わはは。“10-FEETらしい”ってところで、20周年を迎えた現在、ライヴも作品も10-FEETにしかできないことが意識せずともできているように見えるのですが。
TAKUMA
「前までは独自の音楽とか、曲作りみたいなところの“らしさ”に探究心を持ってやってたんですよ。その目的というのは、“何をやっても10-FEET”にする自分作りやったと思うんです。そのために右脳も左脳も磨いて、感じて考えて曲作りをしてきたと思うんですけど、今はそれをくっきり音楽要素に組み込むような作業ではなくて、何か違うことをやっても、それが妙に様になる感じというか。ばっちりと様になるんじゃないけど、その妙に様になるってのが面白いと思うし。何をやっても様になって、ちょっと癖があって、ものすごいカッコ良い音楽を作りたいという思いが強いんですよ。そういう自分たちが作りたくてやってきていたんかなと少し思います。だから、筆跡みたいなもんですよね。僕、ものすごい字が汚いんで、筆跡の力をよく知ってるんですよ。ひらがなを書いても、漢字を書いても、カタカナを書いても、“これ、絶対あいつの字やん”みたいな。そういう表現ができるようになったら、あとは全力で楽しんで、全力でふざけて、全力で真面目にやって、ライヴで楽しめればいいんじゃないかって。」
──東京スカパラダイスオーケストラをフィーチャリングした「HONE SKA」も、ちゃんと10-FEETの曲ですからね。
TAKUMA
「「HONE SKA」はスカパラ先輩に付き合っていただいて、曲のグレードが7段階くらい上がりました(笑)。」
「アンテナラスト」に感じた 新しい10-FEETの始まり

──レコーディングはどうでした? 楽しかったですか?
NAOKI
「いや、苦しかったです(笑)。ひとつの曲に対してのアプローチやったり、曲を膨らませていくのにどう自分を出していったらいいのか試行錯誤する時間も多かったし。「1 size FITS ALL」は頭の中に浮かんだベースラインがすぐかたちになったりしたんですけど、ずっとテンポの速い曲をやってきたので、「ウミガラスとアザラシ」とかテンポが遅い曲になると、そこからの広がりを見せるパターンも増えて、今までやってこなかった表現方法を出していかなきゃいけなかったんで。“どれがええんやろう?”って判断に苦しんだり。」
KOUICHI
「「ウミガラスとアザラシ」とかは待てないんですよ、体が(笑)。速いのに慣れてるから耐えるのに必死でした。今までで一番遅いテンポやと思うんで、ほんま大変でしたね。」
──5年振りのアルバムでやりたいこともあったのでは?
KOUICHI
「ここまで出したシングル3枚でやれたこともあったし、アルバムで“これをやろう!”とか具体的なものはなかったですね。あと、4年振りに出した「アンテナラスト」で、過去のシングルではリード曲にしなかったであろう曲をリード曲にして、みんなに受け入れてもらったことで“新しい10-FEETの始まり”みたいな気がちょっとして。実際「アンテナラスト」以降、曲の作り方とか出したい曲とかも変わったと思います。」
NAOKI
「“久しぶりの新曲だから10-FEETらしい、激しいアッパーな曲がいいんじゃないか?”とか、意見も割れたんですけどね。約4年の期間が空いての新曲ってところで、勝負したい気持ちもどこかにあったし。「太陽4号」(2017年7月発表の17thシングル「太陽の月」収録曲)もですけど、ああいうテンポ感でシングル切ったのはあまりなかったし。「太陽4号」は緊張感のある曲やし、僕自身も今までやったことのないタイプの曲だったから挑戦やったし。そこからアルバム制作に臨んだ時、自分の中で新しいことをしなきゃという気持ちはあって…“こういう曲やったら、こういうフレーズだよね”ってところから、さらにもうひと掘りしたところでフレーズを探しながら作業を進めることができましたね。」
──そう考えるとシングルの存在って大きかったですね。
NAOKI
「そうですね。僕らにとっての新しい部分も出せて、それを受け入れてもらえたのが、すごく大きかったと思います。「太陽4号」は未だにライヴでやる時に緊張しますからね。」
KOUICHI
「緊張する、雰囲気もあるし。」
NAOKI
「僕ら、突っ走ってなんぼのところがあるんで、KOUICHIが言ってたみたいに、前に出たい気持ちを我慢してます(笑)。」
──わはは。「Fin」というアルバムタイトル曲もありますが、今回アルバムに“Fin”というタイトルを付けた理由は?
TAKUMA
「“ヒレ”と“ラスト”という両方の意味が入っていて…“ラスト”の意味だったら正確にはピリオドが付くんですけど。今回、自分が思い描いてる素晴らしい作品を作るには、これが最後と思わないと作れないなと思ってて。“これが最後やぞ!”って何カ月も前から役作りするくらいの感覚で自分に言い聞かせて制作に取り組んだんです。今までも毎回、最後くらいの気持ちでやってきたけど、“これが最後”と自分が信じてしまうくらいにならないと、思い描いてる作品にならないなと思ってたんです。なので、毎日毎日自分に言い聞かせて作りました。でも、“これが最後なん?”という意識で聴くんじゃなくて、より良い環境で、より良い気持ちで聴いてほしいという気持ちもあるので、アートワークではヒレのほうの“Fin”を出したりして。」
──そういう気持ちで作ってはいるけど、実際にこれで最後って話ではないですからね。
TAKUMA
「ヒレっていうのは進むにも方向転換するにも重要やし、スキューバとかシュノーケリングをする時に足にフィンを着けるとめっちゃ潜れるし、スピードが出るんですよね。でも、自分で漕がないとフィンの意味はなくて。それと同じで、背中を押してくれる音楽があっても自分の力で動こうとしないとその音楽も意味をなさない。でも、自分で動きさえすれば、それはすごい追い風になってくれる。僕自身もそういう音楽に支えられてきましたからね。そういう力のあるものがひとつ生まれたらいいなという気持ちをタイトルに込めました。」
──歳を重ねると“これが最後やぞ”ってのが、よりリアルに迫ってくるところはありません? そこで“何が残せるんだろうか?”というところで、TAKUMAくんの歌詞には“今だから見える人生観”が散りばめられていると思いますし。
TAKUMA
「そこはいい歳したおじさんでも、グッときたり、ジーンとすることが今もあるわけで。そこから生まれる、おじさんのブルースな感じで(笑)。でも、“みんな、いろいろあるよね”とか言いながら、それを共感できる仲間と飲んでる時の気持ちって、過剰に気にしたり落ち込んだり、過剰に意識してしまう思春期の頃の謎の気持ちにも似ているというか。おじさんになるとそういうことが経験値でカバーできるし、感動したり喜んだりしなくなって、へっちゃらになっていくんですけど、そういう気持ちもあるっちゃあるんですよね。ただ若い頃と違って、そういうのを俯瞰で見ることもできる。同世代がグッとくる曲を作れるのは、ある意味普通やと思うんです。だから、それを同世代だけやなくて、いろんな世代の性格が違う人に同じくらい伝えられたらすごい作品やなと思うし。そこで伝わった内容っていうのは、間違ってても構わないんですよ。どんなかたちでも刺さったり伝わったりしたら、それでいい。今自分が伝えようとしていることが、若い頃の自分に伝えることができたらすごいなと思いますね。同世代だけでなくいろんな人に伝わったり、面白いと思ってもらえたりしたら素敵やなって。」
──その子たちが5年後、10年後に聴いて、全然違う聴こえ方がしてくることもきっとあるでしょうし。
TAKUMA
「音楽って不思議で、聴くタイミングで聴こえ方が全然違ってきますもんね。だから、“メロディーやリズムがいいな”でも何でも良くて、どんな理由であれ引っ掛かってくれたら、何年後かにもう一度聴いてもらえるチャンスも巡ってくると思うんです。『Fin』の曲たちがいろんな人に、いろんな聴こえ方がするアルバムになったのであれば、そういう経験をしてきたリスナーとしても嬉しいと思います。」
取材:フジジュン

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