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「日本人は金だけ出せばいい」その言葉を悔しさに、“自分たち”だからできることを必死に考えたーー“世界の紛争の最前線”で戦う26歳・永井陽右氏の仕事論

「Realization」は「理解する、気づく」という意味のほかに「形にする、現実化する」という意味もあるんですね。それを知った時、これこそがまさに僕の考えを表す単語だと思ったんです。というのは、数ある国際協力系のサークルの中には、ただ支援先の相手国の人と話して対等な立場で理解し合うというのがメインの活動内容というサークルもたくさんありました。ただ僕自身は、理解なんてものは当たり前で、その上で何を現実化するかが重要だろうと考えていたので、「Realization」を知った時、真っ暗闇の中、一筋の光明が差したような気がしたわけです。英語なのでソマリア人も理解できるので、この言葉を「日本ソマリア青年機構」の理念の1つとしました。

それでソマリア人メンバーとのスカイプミーティングや実際にソマリアやケニアのソマリア人難民が集まるイスリー地区に通って、現地の状況把握と、現地の人たちが何をしてほしいのか徹底的に調べるニーズ調査を始めました。その結果わかったのが、「治安の改善」と「若いソマリア人の日本への留学」でした。

イスリー地区はソマリアギャングたちの巣窟になっていたため、日常的に抗争が起こり死者が出るほど治安が非常に悪かった。国連や日本の外務省も入れないし、入っちゃダメだと勧告してるくらい危険な地区なんですね。だからここの治安の改善は大人でも手をこまねいている難しい問題であり、僕たち若者がどうこうできることじゃなかった。だから「留学」の方をやろうとあしなが育英会さんと一緒にソマリアの紛争孤児を日本に留学させて教育を受けさせるプログラムを企画、実施しました。その他にもスポーツを通して関係を構築しようと日本でサッカーボールなどの中古スポーツ用品を集めてソマリアに送ったりもしました。少しずつ目に見える活動ができるようにはなったのですが、まだ悶々としていました。

苦悩の日々

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──なぜですか? それもソマリアのためになる立派な活動じゃないですか。

もちろんこういった活動にも価値がないことはないのですが、留学の斡旋と中古スポーツ用品の寄付がどれほど現場の紛争解決に寄与しているのかというとほとんどゼロなわけですよね。だから非常にどうでもいい活動しかできていないことに忸怩たる思いで、自分たち若者にしかできないことってこういうことじゃないだろうと毎日思ってました。

先程もお話しましたが、真の国際協力とは姿勢、覚悟が大事だと声高に叫んでいたんですが、いいのは威勢だけで実際にやってることがしょぼいわけです。姿勢・覚悟と実際のアウトプットがかけ離れすぎてることにすごいジレンマを抱えていました。だから大学1、2年生はすごく苦しい時期でした。でも3年になってようやく活路が開け始めてきたんです。

──そのきっかけとなったことは?

先程もお話した通り、治安の問題は僕らには手に負えないからずっとスルーしていたのですが、ある時現地メンバーと話をしている中で、その原因はギャングなんだけど僕らと同年代の若いギャングだと言ったんですね。僕らと同年代というところにピンと来て、もっと詳しく教えてくれとそこからいろいろ聞いていきました。その結果、ソマリアのイスラム過激派で“アフリカで最も危険なテロ組織”と呼ばれている「アルシャバーブ」の関係者がギャング組織と繋がっていて、妻1人と車1台、50万円の月収を保証するなど破格の条件で若者を引き込み、構成員として抗争に使っていたことがわかったんです。ただでさえ犯罪行為に手を染めているのに、それに加えて彼らはいずれアルシャバーブのメンバーとして襲撃や自爆テロを行うようになるかもしれない。

大人たちは彼らを駆逐の対象としてしか見てなくて、しかもアクセスもできず駆逐もしきれていない。ならば同年代の僕らなら彼らにアクセスして、こちら側に取り込むことができるんじゃないか。そうすれば治安を改善できると思ったんです。この考えが浮かんだ時、これこそ僕たち若者だからこそできることだと確信しました。

ギャングをいかに取り込むか

──同じ若者とはいえ、よく危険なギャングをこちらに取り込もうと思いましたね。

そこは結構考えました。ギャングってテロ組織と同じで駆逐しきれないんですよ。隠れちゃうし一般人に紛れ込んでいるので誰がギャングかもなかなか特定できないし、後からどんどん生まれてくるから。どうしようかなと考えた時に、先程2011年に国際協力ブームが起こったとお話しましたが、そのブームの中で大きな世界的なトレンドとなっていたのが「若者=ユース」だったんです。国連は「若者よ、立ち上がれ。世界を変えるのは若者だ」と檄を飛ばしていたし、いろんな国際会議でも「若者」というのがキーワードになっていました。そういうトレンドの中で、僕もユースリーダーとしてやってやるぞという気持ちがあったわけです。

それで冷静に考えてみると年齢的にギャングもユースじゃん、だったら彼らを同じユースとして仲間に取り込んで活用するのが一番いいんじゃないかと思ったんです。この、ギャングやテロリストを駆逐の対象としてじゃなくて同じユースとして見るというのが先駆的で画期的なことだったんですよ。もしギャングにアクセスできて彼らと何かできるのが同年代の僕らしかいないとなると、非常に価値が生まれてくるわけです。ですので、今まで知識も英語力も技術も経験もキャリアも何1つもってない学生なんかにソマリアのためにできることなんて何もないと言われていたのが、その学生であることが強みになるかもしれない。これこそがずっと探し求めていた、学生だからこそできることだとようやく突破口が見えたような気がしました。

それで2013年8月、ユースギャングの更生と社会復帰プログラム「Movement with Gangsters」を立ち上げたんです。1つようやく僕らならではの武器をもてた瞬間でした。このプログラムをソマリア人難民移民居住区であるイスリー地区で実施し始めたわけです。

Movement with Gangsters

──その「Movement with Gangsters」は実際にどうやって進めていったのですか?

よくよく調べてみると、若いギャングたちはソマリアのアルジャバーブというテロ組織やソマリアの民兵組織からも狙われていたので、彼らに取られる前に取らなきゃ、つまりまずはアルシャバーブらからのリクルートを遮断しようと。さらに、すでにギャングになってしまっている若者も説得して足を洗わせる。この2つが紛争解決につながる方法でした。

──でもすでにギャングになってる若者は危険なやつらじゃないんですか?

確かにギャングには武装しているやつもいます。でもギャングも一枚岩じゃありません。下層のギャングはその辺のチンピラみたいな感じです。みんなドラッグやってますしね。ラリってるやつもたまにいます。

──そんな人たちとちゃんと話はできるんですか?

ぼちぼちできます。レッテルを張らずに会話してくれたことがうれしいと言うギャングも多いです。

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▲ギャングたちと彼らのたまり場で

ギャングと一触即発

──話に行って危険な目にあったことはないんですか?

あんまりないですね。一番最初にギャングのところへ行った時に相手と胸ぐらをつかみ合ったことはありますけど。目が充血してたギャングで、「何かしたいんだったらその前に俺の目を治せ」とわけわかんないイチャモンつけてきて。でも「俺は医者じゃないから無理だ」と言い返したんですが、しつこく「治せ!」と言いながらどついてくるんですよ。後ろにメンバーがいたので僕がビビったら士気が下がるじゃないですか。だから僕も譲れなくてふざけんなって掴みかかって殴り合いになりそうだったんですが、その寸前でソマリア人のメンバーが落ち着けと止めてくれました。

──若いギャングをこちら側に取り込もうとするのを、ギャングのボスにばれたら危ないんじゃないですか?

確かにそれは非常にセンシティブです。だからボスにバレないようにそーっとこちら側にリクルートするわけです。それを担当するのが元ギャングのソマリア人メンバーだからできるわけです。イスリー地区のギャングはガチガチに統制が取れているわけじゃないのでそれほど難しくはないんです。

そもそもギャングを辞めさせるということを最終的な目的としていません。もちろん結果として辞めたらいいのですが、それよりも人を殺さないギャングにして、ギャングであっても俺は社会を変えるユースリーダーだというアイデンティティをもつようになれば成功です。各々ギャングになった背景があるので、いきなりギャングを辞めさせるのは実は過激でいろいろなリスクをはらんでいるんです。

──じゃあギャングのままでも、こちら側に引き込めればいいんですね。

そうです。彼らがギャングになる理由はたくさんあるし、ギャング組織が生まれた理由も、存続している理由もたくさんあるので、とにかくギャングはダメだと弾圧することはあまり得策ではないのです。もしこれをやればもっと彼らは過激になって、全員アルシャバーブに入るかもしれない。彼らは社会に対して相当強い怒りをもっているし、絶望や孤独もすごく感じていて、それらがギャングの道に進ませたり、過激化につながっている。だからそこに寄り添う形じゃないと過激化を防ぐことは難しいのです。

「若者だからできること」を信条に、ギャングをこちら側に引き込んで地域のリーダーにするという「Movement with Gangsters」を始めた永井さん。目覚ましい成果を挙げますが、中には悲しい事例もあったといいます。次回は「Movement with Gangsters」の具体的な進め方、成果などについて語っていただきます。乞う、ご期待!

文:山下久猛 撮影:守谷美峰

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