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国策クールジャパンの暴走、経済産業省主導で行う官民ファンド産業革新機構を使った法令無視の公金横流しスキームの実態(ヒロ・マスダのブログ)

その証拠に、ANEWは第4期の決算公告に2057万5000円の「賞与引当金」を計上している。また、第6期決算公告には初めて売上高1500万円を記録している。これは産業革新機構が株式譲渡を発表したプレスリリースにある「年内中に製作開始予定の作品」の脚本が売れた金額と推測できるが、ANEWの6年間の売上高は、経営者が自分たちで決められる自分たちへの1回のボーナスに満たない。ちなみに第4期といえば、すでに「3年で利益が出る」といった将来見通しの破綻が判明している年である。

ANEWとは単なるハリウッド投資での金儲けではなく、「日本を元気にする知的財産戦略」の一環として日本の産業再生までが約束事で公金投資が認められた事業である。しかし、こうした公的資金投資の社会的意義より、自分たちへの2000万円のボーナスを優先されている。これは「国の金だから」という甘えに他ならない。

こうした無秩序経営が行われ、巨額国民財産を毀損していても、利益相反の取締役会、株主総会では何の問題もないとされて来た。さらには、官民ファンドと国の関係が明確に定められてていても、経済産業省も本来定められた行政の役割と責任を果たすことなく、国民に虚偽の説明を行い、国策クールジャパンの暴走の片棒を担いできたといえる。

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”合法投資手続き”の瑕疵、経産官僚があらかじめ用意した大臣意見書

産業革新機構に関する法令には、経済産業大臣に対し出資先の対象事業者に対する意見を伺うことが定められている。

行政開示文書によると、平成23年6月27日に産業革新機構社長の能見公一氏(当時)が送った書面に対し、海江田万里経産大臣(当時)は同じ日の6月27日に「社会的意義を有するものとして高く評価できる」と回答している。また、能見氏と民主党の海江田大臣の関係であるが、能見氏はそもそも民主党が連れてきた社長であると政府関係者が発言している。

複雑な海外映画事業の書面と資料を受け取り、即日、その投資に成長性、革新性、社会的意義が認められると回答することは到底できるものではない。また、ANEWにおいては今日の結果が示す通り、映画ビジネスの専門性から見れば、事業そのものが一目でナンセンスだと判断できる虚業である。

すなわち法令で定められた大臣承認は形式的なものに過ぎず、経済産業省の関与が明らかなANEWは、官僚主導の出来レースであったと考えるのが自然である。従って、法令に定められた経済産業大臣の職務怠慢も今日の結果を招いた一因であるといえよう。

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ANEWの不当廉売による日本IPの独占

官民ファンドガイドラインには、「競争に与える影響の最小限化」も定められている。しかし、ANEWが行ってきた業務は、ANEW決算にある過去の売り上げ高が示す通り、日本企業IPの英語資料を作り、契約、法務、交渉を無料で行い、さらには脚本家に係る経費までANEWが負担するというものになっている。

ハリウッド映画コンサルティングであれば、本来対価を得るべきサービスであり、これを無料で不当廉売し、さらには採算性を度外視しで、開発資金を公的資金で支援するお土産までつける。まして国策支援の看板をつけて業務を行えば、国内で独占的な立場を獲得できる立場になりえ、競争における影響は多大だったといえる。

国はガイドラインで認められた職員出向だけは直ちに行っているが、こうしたチェックは行って来なかった。経済産業省報政策局文化情報関連産業課課長の伊吹英明氏においては『2012年5月15日内閣府コンテンツ強化専門調査会第10回』で、「日本のコンテンツはここに預けないとそもそも仕事ができない」などとANEWの独占的事業を宣伝している。

お墨付きを与える政府御用会議

ANEWには「コンテンツ強化専門調査会」と「知的財産本部、評価、検証、企画委員会」という政府会議も深く関わっている。

これらの会議は中村伊知哉氏が座長を務めており、同氏はANEWに言及した著書『コンテンツと国家戦略』角川出版から発売している。

「評価、検証、企画委員会」においてはANEWの検証を求める意見が委員から出されていた。しかし、ANEWを推進する「コンテンツ強化専門調査会」でも座長を務めた中村氏や、経営説明をしてきた経産省伊吹英明課長は、検証意見に一切答えることなくこれを聞き流していた。

結局、こうした会議は官僚たちの「私達こんなことにお金使いました」の発表会に過ぎず、無駄事業にお墨付きを与えるだけの御用会議化になっている。

2016年末には内閣府に「映画の振興施策に関する検討会議』が組織された。2017年に施策方針が取りまとめられた。そこでは、新たな官民ファンドのクールジャパン機構を利用したリスクマネーの供給を行う施策を講じることが取りまとめらている。これは第2のANEWになりかねないか今から注視する必要があるように思える。ちなみにこの会議の座長もまた中村伊知哉氏が務めている。


中村座長(@ichiyanakamura )「検証すべきと意見がでましたが、これを受けて行政は何かありますか?」

経産省伊吹課長「…」

大臣が冒頭に言ったハリウッド映画作りへのビジョン、官製会社で2年前からやって、こうして自白する発言機会もあるのに無視。本当にしらじらしかった

経済産業省と産業革新機構の責任を追及せよ

私は、ANEW設立の発表直後から5年間に渡りその産業支援のやり方に警鐘を鳴らしてきた。そもそもロサンゼルスと虎ノ門にオフィスを構え、アメリカ支社にはANEW Productionsなる子会社まで作り、ころころ変わる専門性を持たない役員や経産省出向役員を雇い、売上高0円ながら数千万円のボーナスを計上するような経営で利益が出るような映画企画開発ビジネスなど最初から存在していない。しかしこんな法令無視の虚業が「日本を元気にする知的財産戦略」の大成果だと評価され、結果国民財産の大きな毀損を生んだ。

ANEWの問題は単なる損得の問題ではなく、ANEWにおいては「莫大な国富を国内のクリエイティブ産業に還元し、日本のエンタテイメントを再生する」までが公的資金投資に含まれていた約束である。日本のエンタテイメント産業には未だ問題は山積で、多くの「困った人」がいる。こうした働く「人」を無視し、国民財産を毀損させた国策の損失は、決して金銭的損失にとどまらず、日本のクリエイティブ産業の発展や国際競争力という別の大きな損失を生んでいることになる。

個人的な意見としては、民間でファンドマネージャーが顧客の18億円を毀損させたら、その者の将来にこの分野の職があるとは思えない。ましてや毀損した原因が自らが設計し、経営する会社に100%投資した結果なら、出資者から訴えられるのが当然である。仮に民間の映画プロデューサーが「日本ではうちしかできないことだ」「3年で利益が出る」、経営途中で「撮影準備中の映画があり経営は順調だ」と偽り、金集め、5年後に映画すら存在していない場合、映画投資詐欺の罪で刑務所行きもありうる話だと思う。

ANEWへの投資については、規制、監督する立場の経済産業省が出向し、法令に反し偽りの業績報告を国民に対し行い、国会では虚偽の経営報告まで行っていた。法令、ガイドラインこそあるものの、現状では、それを行政がそれを歪め、本来定められた国民に対する説明責任も全て闇の中にできるのが官民ファンドの制度になっている。

映画ビジネスにおける「需要」と「供給」とは、日本の公的資金で食べるための「需要」と「供給」ではない。形骸化された民主主義制度を作り上げ、国民財産の損失を自己利益にかえるような不適切な投資が「クールジャパン万歳」「日本再生のて目の適正な投資」というのはあってはならない事である。

ANEWの件おける経済産業省と産業革新機構の責任追及は絶対に必要であろう。


後の事実を知ってから産業革新機構プレスリリースを読むと白々しさへの怒りが倍増

”INCJでは、映画製作開始の目途がついたことに加え、ANEWの今後の事業展開やFVCとの提携による成長可能性を慎重に検討した結果、保有する全株式をFVCに譲渡することが適切という判断になりました”

読者が普通の注意でこのリリースを読めば産業革新機構が何かいいことしたような印象を受ける。実際は「INCJは22億2000万円を投じ、役員が代表取締役と社外取締役を務める利益相反経営を続けてきましたが、何の成果も出ず潰れそうなのでこの度3400万円でExitする判断しました、てへ」

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*1:2016年11月28日 『WEDGE Infinity』
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*2:2016年01月14日 『ヒロ・マスダのブログ』
https://hiromasudanet.wordpress.com/2016/01/14/anew_3/

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*3:2014年10月31日 『ヒロ・マスダのブログ』
https://hiromasudanet.wordpress.com/2014/10/31/all_nippon_entertainment_works_2/

官製映画会社ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKSの検証:産業革新機構を使ったクールジャパン映画事業の腐敗と天下り
*4:2013年06月22日 『ヒロ・マスダのブログ』
https://hiromasudanet.wordpress.com/2013/06/22/article_01_all_nippon_entertainment_works/

執筆: この記事はヒロ・マスダさんのブログ『ヒロ・マスダのブログ』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2017年09月27日時点のものです。

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