「トラが木の周りをぐるぐる回ったらバターになる」が通じない世代【ジェネレーションギャップ】
「トラが木の周りをぐるぐるぐるぐると回り、バターになりました」
そう聞いて「ああ、アレね」とわかる方はある作品のタイトルを思い浮かべると思います。そうです絵本『ちびくろサンボ』のクライマックスですよね。
しかし、ある世代からはこの言い回しを伝えても「ちょっと何言ってるかわかりませんね」と返ってきてしまうのです。アラフォー(いやアラフィフ)の筆者からすると「え! なんで」と動揺を隠せません。
筆者の周りの反応はこちら。
・トラがどうしてバターになるのか意味不明
・「トラがバターになる」というワードだけは知っていた。大人になってから元ネタを知ったので図書館で読んでみた
・ちょっと何言ってるかわかりませんね
・ヤバい薬の話ですか?
『ちびくろサンボ』はヘレン・バンナーマン作、イギリス発の絵本。日本版のあらすじは次のような内容でした。
―― 帽子や洋服を新調して散歩にでかけたサンボくん、出会ったトラたちに食べられそうになったので、身に着けているものを譲ることで許してもらいます。裸にされて泣くサンボくんの一方で、戦利品をめぐって仲間割れするトラたち。奪い合いをしながらヤシの木の周りをぐるぐるぐるぐると回っているうちに、トラはバターになってしまいます。サンボくんは取られたものを取り返し“トラのバター”を使ってパンケーキを焼いて食べました。
こうして文章に書くと荒唐無稽な感じですが、1953年(昭和28年)に岩波版が発表されて以来のベストセラーだけあって、昭和生まれからすると非常になじみ深い懐かしいストーリです。『ちびくろサンボ』は『はらぺこあおむし』や『ぐりとぐら』に並ぶメジャータイトルでした。
しかしそんな『ちびくろサンボ』、主人公が色黒の男の子でこのタイトルがついていたため「差別的ではないか」という議論に巻き込まれます。
Wikipedia『ちびくろサンボ』の項目によると、1988年には“一斉絶版”になり、「事実上すべての出版社がこの絵本の出版を自主的に取りやめて」しまったとされています。日本では絵本の定番のひとつだった『ちびくろサンボ』はしばし姿を消してしまいました。
その後、著作権が切れたことにより2005年に『ちびくろサンボ』は復刊を果たしました。しかし空白の17年間は『ちびくろサンボ』ロスを生み出した、というわけなのです。
ちなみに、ゲーム『ダンガンロンパ』(スパイク・チュンソフト)や『クロノ・トリガー』(スクウェア)にも“回ってバターになる”場面があるそうですが「なんで回るだけでバターに?」と思いながらプレイしていた人も多かったはず。これらも『ちびくろサンボ』絶版がもたらした、思わぬジェネレーションギャップと言えそうですね。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。