NHKネット配信実施で、ネット視聴でも受信料支払義務が発生?
NHKネット配信でネット視聴も受信料支払義務が発生!?
NHK受信料制度等検討委員会は、テレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」を実施した場合、テレビを持たずにインターネットだけで番組を視聴する世帯からも受信料を徴収することに「一定の合理性がある」とする答申をNHK会長に提出したとの報道がありました。
この点については、テレビで視聴する世帯とインターネットで視聴する世帯との受信料負担の公平性を保つという観点から合理性があることは否定できないと思われます。特に、デスクトップ型のパソコンを所有してインターネットによる視聴をする場合は、屋内に機器を設置して視聴するという意味では、テレビで視聴する場合とほとんど同じですので、テレビによる視聴だけ受信料を徴収するというのはアンバランスに感じます。
スマホを持っているだけで受信料支払義務があるとするには疑義
ただ、モバイルパソコンやスマートフォンの場合は、別の問題が生じます。現在の放送法64条1項は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(中略)のみを設置した者については、この限りでない。」と定めているため、モバイルパソコンやスマートフォンを所有するだけでは、「受信設備を設置した者」には該当せず、NHKと受信契約を締結する義務はないと解釈し得ますし、仮に、これらが「受信設備」に含まれるものと解釈し得たとしても、同条1項但し書の「放送の受信を目的としない受信設備」であるとも解し得るから、受信契約を締結する義務はないと解釈する余地があります。
以上の点は、平成26年7月、当時のNHK会長が「ワンセグが付いていないスマホユーザーからも受信料を徴収する」との意向を明らかにした際に、そもそもワンセグ付きスマホの場合でも受信料支払義務があるのかといった問題の中で指摘してきた論点です。
放送法を分かり易く改正した上での実施が望まれる
テレビを持たずにインターネットだけで番組を視聴する世帯からも受信料を徴収することについては、受信料負担の公平性を保つという観点から合理性があるとは言えても、放送法の文言との整合性がなく、あるいは法的な疑義を残したままでは、紛争の種になりかねません。
前記の答申において、「個別の利用に応じて料金を支払う仕組みや、一定の期間は負担を求めないといった暫定措置を検討することも求めた」とされているのは、おそらくはそういった問題があることが念頭にあってのことと思われますが、そうであれば、国民の理解を得るために、いっそのこと、放送法を分かり易く改正した上で実施した方がスッキリするのではないでしょうか。
(田沢 剛/弁護士)
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