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深海2,000mの激闘! 海底探索レース「Shell Ocean Discovery XPRIZE」日本代表に迫る!

我々を乗せた船は5月の駿河湾の海風を切って快調に進んでいく。いつもは両舷に10人ずつほどの釣り人を乗せて航行する小さな釣り船だ。今、船上にいるのは、大手新聞社と「TIME & SPACE」の2メディア。甲板で波しぶきを受けては声を上げ、目の前に巨大な富士山を認めてはテンションを上げる。駿河湾の約10km沖合、港から1時間ほど走ったころ、「それ」は姿を現した。

台船にクレーン車が固定され、ヘルメットに作業着の人々が見える。クレーン車の奥にはコンテナとプレハブの小屋がL字型に配置されている。

今年10〜11月に開催される「Shell Ocean Discovery XPRIZE」第1ラウンドに向けてのテストがここで行われているのだ。

Shell Ocean Discovery XPRIZEとはなにか

それは、「XPRIZE財団」というところが開催している海のレース。

「XPRIZE」って聞いたことあります? 「Google Lunar XPRIZE」。あれは38万km離れた月面での、宇宙レース。月までロボット探査機を送り、着陸地点から500m以上移動し、高解像度の動画や静止画を地球に送るというもの。日本からは「TEAM HAKUTO」が参戦し、auがスポンサードしています。

なにを競うのかというと、海底地形図の作成と海底画像の撮影。スポンサーはロイヤル・ダッチ・シェルという世界的な石油会社だ。海底油田の開発には事前の海底地形の調査は必須で、このプロセスにめちゃくちゃコストがかかるらしい。ダイバーが直接潜るケースもあれば、有人潜水艇を使ったり、洋上から遠隔操作無人探査機をケーブルで操ったり、AUV(Autonomous Underwater Vehicle=自立型海中ロボット)に探査させたりと、海底の調査にはさまざまなやり方がある。

調査方法は調査対象に応じて選べばいいのだけれど、どの手段であっても「目的の海域まで船で行く」ということが前提となる。しかもその際、調査対象の専門家と、各種装置を扱う技術者をそれぞれ連れて行かねばならないのだ。

こんなふうに。

たとえばAUVは非常に調査精度が高いが、そのぶん扱うのが難しい。調査海域で海中に放つのも船上から監視するのも、回収するのも高いスキルが必要。そうした技術者を長期間確保せねばならないし、研究者も日程を合わせて船旅をしなければならない。ものすごく卑近な心配だがリアルに大変な「船酔い」もある。海洋研究者と海洋技術者のスケジュールを合わせ、一定期間拘束し、実際に現地まで“船旅”することが必要になるわけで、コストがかかりそうな感じ、ありありと伝わりますよね?

海底油田の開発だけでなく、海底ケーブルの敷設や鉱物の採掘などにも事前の海底地形調査は必須。
このコスト軽減こそが「Shell Ocean Discovery XPRIZE」最大の目的。それは、海底でお仕事をするありとあらゆる産業に恩恵を与えることになる。

で、そのために今回のレースで設定された最大の条件が「現場の調査海域に人が行かずに、全部、陸上から遠隔でやろう!」 というものなのだ。

具体的なルールは以下のとおり。

<目標>
超広範囲(500㎢)の海底マッピング。

<ルール>
有人支援母船レスでのオペレーション(海域へのロボットの展開・回収含む)
持込制限:40feetコンテナ 1個
調査時間制限:調査後48時間以内の海底地形図の作成

<実海域試験Round1>
2017年10~11月開催。
水深2,000mで16時間以内に最低100㎢以上の海底地形調査、海底ターゲットの写真撮影(5枚)。

<実海域試験ROUND2>
2018年9月開催。実海域試験Round1を勝ち抜いたチームが進出する。水深 4,000mで 24時間以内に最低250㎢以上の海底地形調査、海底ターゲットの写真撮影(10枚)。

2015年12月に開催を発表。翌年9月に参加登録を締め切り、今年2月に書類審査で世界32チームから21チームに絞られた。日本からは3チームがエントリーし、選ばれたのが「Team KUROSHIO」。
我々が目指す台船(作業用の箱船)の主だ。

このチームは、JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、国立大学法人東京大学・生産技術研究所、国立大学法人九州工業大学、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、三井造船株式会社、日本海洋事業株式会社、KDDI総合研究所、ヤマハ発動機株式会社からスペシャリスト達が集った。

昨年12月から、何度かテストを実施しており、我々は5月の海域試験にお邪魔したのだ。

Team KUROSHIOはどんなふうにレースに臨むのか。

ここから先、英語の頭文字略語が頻出するが、言い換えようがないので、頑張ってついてきていただきたい。Team KUROSHIOはASV(Autonomous Surface Vehicle=洋上中継器)を1機使い、3機のAUVとともに調査海域まで航行。ASVは陸上からの電波を海中のAUVへ音波で中継し、AUVからの通信を陸上へ送り返す役割を担う。

このオレンジの3つの機体がAUV。手前から自動的に海中の地図をつくる「AE2000a」、真ん中が詳細な3D画像観測をし、海中の写真を撮ってくる「AE2000f」。これら2機は東京大学生産技術研究所が開発したもの。奥の丸い機体がJAMSTEC開発の「航行型2号機」。潜水艦っぽいが、ロボットだ。

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