体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

今明かされる「au Design project」初期の名作コンセプトモデルの舞台裏

自動車メーカーが新車を発表する際、コンセプトカーをモーターショーなどに出展し、市場の反応を見ることはよく知られている。その手法を通信業界に初めて持ち込んだのが、今から15年前のau Design project(以下aDp)だった。ケータイにデザインとファッション性を与えるべく2002年に誕生したaDpは、斬新なコンセプトモデルを次々と発表し、世間を驚かせた。

aDpは2012年までに製品化未製品化を合わせて36を超えるコンセプトモデルが存在する。今回、開発プロジェクトの砂原 哲に、「INFOBAR」の発売前後、つまりaDpのごく初期に作られたコンセプトモデルを振り返りながら、コンセプトモデルの“生い立ち”について語ってもらった。

「auはこんなブランドを目指します」を伝えるために、コンセプトモデルが作られた

「もともとKDDIは通信会社なので、自社企画でモノを作る必然性はなかったんです。でも2000年に生まれたauブランドの方向性を指し示すために、コンセプトモデルを発表することにしました。ただの携帯電話会社ではなく、新しい価値観を生み出す会社だぞ、という表明です。そのために、商品化を前提としたものではなく、コンセプトを視覚化し具体的なかたちにして、まず世に示していくことが目的でした」

そして発表されたのが「info.bar」だった。「INFOBAR」ではなく、「info.bar」。コンセプトモデルである。


「INFOBAR」のコンセプトモデル「info.bar」(デザイン:深澤直人)

「当時、2つの課題がありました。ひとつはコギャルブーム全盛で世間に溢れた“デコる”ケータイではなく、ミッドセンチュリーや裏原系のような、ファッションやデザインに対する関心が高い人々のための選択肢をつくること。

ふたつめはテクノロジーの文脈。3Gという高速データ通信時代の到来があって、当時まだ元気だったPDA(現在のスマホのような携帯情報端末。PCと連動したが、ネットには単体では接続できなかった)が、いずれは単体でネットに繋がり進化するのか、それともケータイがさらに進化していくのかということ。

これらの課題をうまく統合したところになにか答えがあるはずだと、当時、IDEO JAPANの代表をされていたプロダクトデザイナーの深澤直人さんにコンタクトをとったんです」

初のコンセプトモデル「info.bar」は、名機「INFOBAR」に

こうして完成したコンセプトモデル「info.bar」は、前面はタイル型のキー&タッチパネルのカーソル、裏面は全面タッチパネルという、現在のスマホのような時代を先取りした仕様になった。さらにそれをゴーグル型アタッチメントにセットして覗けば、ARやVRゴーグルにできることまで見越して作られていた。近年ようやくスマホで実現できたことを、アイデアとして先取りしていたデザイナーの先見性は、さすがとしか言いようがない。


「info.bar」の背面

「当時は販売も決まっていないし、実現したいと思いつつもどうしたらいいか分からなかったんです。ただ、デザイン雑誌などに掲載をお願いしたり、『このケータイがほしいですか?』とビデオカメラ片手に展示会場でインタビューしたりしたところ、かなり手応えを得られたんです。そこで商品化に向けて動き出しました」


「INFOBAR」(デザイン:深澤直人)

こうして開発が決まったaDp初のコンセプトモデルは、開発メーカーを決定して「INFOBAR」と命名。03年10月、ついに発売される。技術的な問題でタッチパネルのカーソルや背面の全面液晶は省かれたが、コンセプトモデルのデザイン要素をしっかり受け継いだケータイに仕上がった。

製品化されるかどうかは、技術だけでなく“運”も大事

「INFOBAR」によってaDpは、ケータイの新たな方向性を指し示すさまざまなコンセプトモデルを発表していく。「info.bar」のように製品化にこぎつけたものもあれば、コンセプトのまま終えたものまでさまざまだ。一例を挙げれば、02年に発表された「ishicoro」。河原で拾った石ころを3Dスキャンして誕生した折りたたみ型ケータイは、世間の注目を集めたが・・・・・・、


「ishicoro」(デザイン:深澤直人)

「商品化には運もあるんです。それは“その子”が持っているもの。『ishicoro』は私たちも製品化したかったですし、技術的に実現できたと思います。ただ、いろいろな事情やタイミングで実現しなかった。どうしても波に乗れなかったんですね」


「rotaly」(デザイン:二階堂隆)

このようなケースはほかにもある。たとえば01年発表の「rotaly」。その名の通り液晶が回転ヒンジを軸にクルッと回る仕掛けが付いている。今となっては実現できそうな形状だが、当時としては「ほぼ不可能」なシロモノだったらしい。

1 2次のページ
TIME & SPACEの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。