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テレビの視聴状況を人体認識アルゴリズムで分析──TVISION INSIGHTSが挑む「視聴質」とは?

誰が・どのようにテレビを見ているのか明らかにする「視聴質」

録画機器やデジタルデバイスの普及に伴い、テレビ番組の視聴率の定義が変わりつつある。関東地区では、2016年10月より、放送日から7日以内(168時間以内)のタイムシフト(録画)視聴率を算出するようになった。

とはいえ現状、計測しているのは「テレビのオン・オフ」のみ。電源が点いていても、テレビの前に人がいるとは限らないし、その番組を確かに見ていたかどうかもわからない。

そこで登場したのが「視聴質」という概念だ。これは、その番組を誰が見ているか、どのように視聴しているか(ながら視聴など)、コンテンツの内容にどう反応しているかといった、番組視聴の「質」を評価する指標である。

TVISION INSIGHTSは、Kinectに搭載された人体認識センサーを用いて、視聴者の表情や顔の向きなどを読み取り、テレビの前での視聴態勢を数値化している。

具体的には、視聴者がテレビの前にいるかどうかを「滞在度」(Viewability Index=VI値)、画面に注目しているかどうかを「専念注視度」(Attention Index=AI値)という2つの指標で表した。過去半年間の標準値を1.0と定め、それと比べて高いか低いかを数値で評価している。

この指標は、日米のマーケティング、視聴率、統計の専門家とセッションを繰り返して決めたもの。この指標によって算出された数値を、リクルートジョブズをはじめとするリクルートグループ、メルカリ、LIXIL、大手飲料メーカー、大手消費財メーカーなどに、テレビCM放映時の滞在度、注視度データとして提供している。

TVISION INSIGHTS 取締役 営業責任者の河村嘉樹氏は、

「これまで、テレビ番組の作り手は人々をいかに没入させるかに心を砕いてきました。『視聴者が番組に没入しているか』という、この主観的で曖昧な概念を『滞在度』『注視度』という数値で算出できるようになった。それが、このテクノロジーの最大の特徴です」

と意気込む。

TVISION INSIGHTS株式会社 取締役/営業責任者 河村嘉樹氏

同社は中国・上海で女性向けアパレルブランドやデジタル広告代理店を起業していた劉 延豊(ヤン・リュウ)氏によって、2015年にアメリカ・ボストンで創業した。

「着想のきっかけは、電源のオン・オフデータだけで莫大な広告予算の動くテレビについて、もっと詳細な視聴データを取得したいと考えたことでした。
そこでリュウはMIT(マサチューセッツ工科大学)のMBA(経営学修士)に留学し、コンピュータビジョン(画像認識)のテクノロジーでこの疑問を解決することを思いつきました」(河村氏)

この考え方に賛同したのが、アメリカ・ノースイースタン大学准教授のRaymond Fu氏。ビッグデータ、マシンラーニング、コンピュータビジョンのスペシャリストである同氏は、TVISION INSIGHTSの創業メンバーに加わり、チーフ・サイエンティストとして開発を牽引している。

顔認識には、Xbox One Kinectセンサーを使用し、そこに独自のアルゴリズムを組み込んだ。当初は、WiiやPlayStation4、ウェブカメラなどさまざまな方法を検討し、大手家電メーカーにかけあって、テレビの筐体にカメラを内蔵することまで考えた。

しかし最終的には、家庭のリビングに違和感なく溶け込み、安価であるKinectを採用することに決めた。

「我々のようなスタートアップが、自社でゼロからハードウェアを開発するのは難しい。そこで既存のハードを活用して、ソフトウェアの部分で独自性の高いソリューションを提供しようと考えました。なかでもKinectはコストパフォーマンスが高く、データがきれいにとれます。ハードウェアとしての性能が良いと感じました」(河村氏)

従来の視聴率調査は、ユーザー本人が機器のボタンを押して誰が見ているか登録する必要があった。

しかしカメラによる顔認識なら、ユーザー側の操作がまったく必要ないため、「普段通りの」自然な視聴態勢を知ることができる。

Kinectセンサーで毎秒ごとに視聴態勢データを取得

使用機器はXbox One Kinectセンサーに加えて、ハンディサイズのミニPCを用いた。

Kinectをテレビ画面の上部にとりつけ、内臓のカメラとDepthセンサーで取得した視聴態勢データを、テレビ脇に設置したミニPCへ毎秒リアルタイムに送信、プライバシーに配慮し、映像データでの蓄積は行わず、画像にあるような0-1ベースのログデータに変換している。

こうして取得した膨大なデータを毎日決まった時間に同社のサーバーへアップロードしている。

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