いまはもう幻のメニュー「ユッケ」をアノ魚で再現してみた【ブリ&コンソメ】
幻のユッケが食べたい
ども、メシ通レポーターの松沢直樹です。
つい先日、久しぶりに韓国料理系の焼肉屋さんに行ったんですが、今は「プルコギ」とか「サムギョプサル」なんていうメニューが人気なんですね。
はたと気づいたんですが、その影で消えてしまったメニューがあります。
そう、「ユッケ」。
少し前まで、焼肉屋さんに行くと必ずといってもいいほど「ユッケ」がありました。
「ユッケ」をご存じない方に、簡単に説明を。
要は「韓国風お肉の刺身」なんですが、お肉独特のうまみと、ねっとりとした食感がたまらないんですなこれが。
お刺身や、生もの好きな日本人のツボを心得たメニューといえましょう。
とはいえ、牛肉の生は、取扱いがよほどしっかりしていないと、衛生上心配です。牛の腸の中に潜んでいる病原性大腸菌(O157など)が、解体中にお肉に付着すると、深刻な食中毒の原因になります。さらに、無鉤条虫(さなだ虫)などの寄生虫に感染する可能性もあります。
非常に残念ですが、2011年には大規模な食中毒事故が起きてしまいました。そのため、現在では「ユッケ」を楽しむことは難しくなっています。
食べられないならば、他の食材で作れないかと考えるのは世の常。
ええ、実はあるんです。
「マグロのユッケ」なる、マグロで代用したものがあるんですね。
たしかに、これはこれでおいしいんですよ。
ただ、「マグロのユッケ」は、生肉を使った「ユッケ」のような、ねっとりとした食感とお肉のうまみは感じられません(あくまで私見ですよ)。
マグロ以外で、「ユッケ」のあの食感と風味をリアルに再現できないものか。
かなーり無茶ぶりな企画ですが、松沢もメシ通レポーターのはしくれ。
本気出して考えてみました。
ブリならアノ食感に近づける
そもそも、「マグロのユッケ」なるものが、なぜイマイチに思えるのか。
私が思うに、二つ原因があると思うんですね。 お肉のうま味がない(魚だから当たり前なんですが) お肉の脂と違って魚の脂は、低い温度で溶ける。そのため、どうしてもお肉を使った「ユッケ」のような、ねっとりした食感とうま味が出ない。
要はこの二つをクリアしてあげれば、意外にいけるんじゃないか?
で、編み出したのがこのアイデア
↓ ↓ ↓ ↓
お肉のうま味をコンソメの素で代用し(コンソメの素は、たいてい牛肉を使って作られています)、脂のねっとりした感じをごま油で演出し、マグロよりも脂が強いブリで作ればうまくいくんじゃないか?
思いつきで試してみましたが、意外なくらい本物に近づきました。
作り方もメチャ簡単です。たれを作って、ブリのお刺身を漬け込むだけなのですから。
まず材料から 。
材料(2人前) ブリの刺身(200g程度)
漬けこみ用タレの材料 コンソメの素……固形1個(粉末のものは小さじ1杯) コチュジャン……大さじ2 日本酒……大さじ10 ごま油……大さじ1 しょうゆ……大さじ1 はちみつ……小さじ1/2(砂糖で代用可) にら……1本(万能ねぎなどでも代用可ですが、その場合おろしにんにくを小さじ半分加えること) トッピング用の卵黄(お好みで)
漬け込み用のタレを作る
それでは、漬け込み用のタレの作り方からご覧ください。
コンソメの素は、ボウルに入れて砕いておきます。粉末のものならそのまま小さじ1杯分を入れてください。
次に日本酒を加えます。電子レンジで30秒くらい温めるとさらにベスト。
スプーンでかき混ぜてよく日本酒にコンソメを溶かします。
しょうゆを加えてよくかき混ぜます。
ここにコチュジャン(韓国の唐辛子みそ)を加えてよく混ぜます。
コチュジャンは、最近はスーパーや100円ショップでも簡単に手に入ります。
コチュジャンは少し溶けにくいのでしっかり混ぜてくださいね。
上の写真のようになれば大丈夫。
さらに、はちみつ小さじ1/2を加えます。
もし、はちみつがない場合は、同じ量の砂糖で代用しても大丈夫ですよ。
次に、ニラを刻みます。包丁を使うのが苦手な人は、スライサーやキッチンはさみを使ってもOK。
ニラの代わりに、万能ねぎや長ねぎを利用する場合は、漬け込み用のタレに、すりおろしたにんにくを、カットしたねぎと一緒に少し加えてください。
刻んだニラを加えてよく混ぜます。
最後にごま油を加えたら、漬け込み用のタレが完成です。
ブリを薄くスライスする
次は、ブリを切っていきます。
今回は、安く作るためにサク取り(長方形の状態に加工されたブリのブロック)を使いました。
面倒くさいと思う方や、包丁を使うのに自信がない方は、すぐに食べられるように薄く切られて盛り付けられた「切り身」を使うとすぐにできますよ。この場合、薄くカットされたブリのお刺身を、作ったタレに漬け込んで1時間冷蔵庫で寝かせるだけ。
でも、ちょっと勇気を出して包丁を使うと、ひと味違うブリのユッケがたくさん作れます。友達と飲み会をするときとか、おつまみを安く作れますから、試してみてくださいね
では、サク取りしたブリを切っていきましょう。
食中毒を防ぐために、包丁とまな板は清潔に洗って、可能なら消毒用のエタノールスプレー(薬局で500円くらいで売っている)で消毒してくださいね。
手もよく洗って、刺身を直接手で扱ったりせず、調理用の使い捨てのポリエチレンの手袋を手にはめて作業するのがベストです。
包丁を使う時は、20度くらいの角度に包丁を寝かせて、包丁の手元を刺身に当てて、手前にゆっくり引いてやると、うまくカットできます。
ここで飲み会で使える「小ネタ」をひとつ。
包丁を手元に引いてくる手法で刺身をカットするので、板前さんは「刺身を切る」といわずに、「刺身を引く」という言い方をします。
まあ、諸説あって、武家社会では「切る」=「切腹」を連想するため、刺身を引くというようになったという説もありますが。
ふつう、ブリは厚めに切ったほうがおいしいんですが、「ユッケ」を再現するために今回は少し薄めにカットしてみました。
カットし終わった状態。
このまま、漬け込み用のタレに投入。よく混ぜてあえます。
このままラップをして、冷蔵庫で1時間寝かせてください。
コンソメ、グッジョブ!
さて、冷蔵庫で寝かせて1時間後です。
いい感じに仕上がっていますね。
盛り付けてみましょう。
小皿に盛って、卵黄をドロップ。
ユッケ完成!!(ブリのね)
お、なんだか、気のせいか見た目がお肉のユッケに近い感じですね。
では、さっそく試食してみましょうか。
卵黄にカットイン!
よく混ぜてからいただきます。
さっそく試食してみます。
おお!
ブリなのに、お肉を使った本物の「ユッケ」にも通じる、あのねっとりした食感。
意外にも、コンソメがいい仕事してます。
魚のうま味とコンソメ本来のお肉のうま味が重なって、濃厚になった感じです。
追いかけるようにニラの香りとコチュジャンの辛さ、そしてごま油の香り。
言われなければ魚だと気付かないレベル……。
これは成功じゃないでしょうか。
ごはんに盛って丼にしたらどうでしょう?
なんかいい感じじゃないですか?
ビビンバみたいに、混ぜていただいてみます。
めちゃくちゃ合う!
しかも、見た目魚なのに、本物のお肉使ったユッケ丼の味と食感。
手前味噌ですが、これは悪くないですね。かみ締めるたびにご飯のうまさとコンソメで肉の味を移したねっとりしたブリ、そしてニラ、ごま油の香り、そしてコチュジャンの辛味とはちみつのわずかな甘さが波状攻撃してくる感じです。
生卵の濃厚な風味もたまりません。
こちらは、わずか2分で完食となりました。
ブリのお刺身もそれなりのお値段ですが、牛肉を買うよりは安いはず。
すぐに食べられる刺身の状態にしてあれば、簡単に作れますから、ぜひお試しくださいね。
※この記事は2017年5月の情報です。
書いた人:松沢直樹
1968 年福岡県北九州市生まれ。SE、航空会社職員などを経て、1994年よりフリーランスの編集者・ライターとして活動。主に扱うジャンルは、食全般、医療、 農業、安全保障、社会保障など。マグロ解体ショーの実演、割烹の臨時板前などとして、メシを作ることも。近著に「うちの職場は隠れブラックかも(三五 館)」。 Twitter:@naoki_ma
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