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三上博史が10代の頃に影響を受けた寺山修司の言葉とは?

三上博史が10代の頃に影響を受けた寺山修司の言葉とは?

日本有数の巨大新聞社が販売部数の低迷を受けて身売りを画策。外資を率いて買収を狙う一人の日本人が新聞社に突きつけた驚くべき要求とは――。

4月30日よりWOWOWで放送開始予定の『連続ドラマW 社長室の冬-巨大新聞社を獲る男-』は、既存メディアの衰退、ネットニュースの隆盛、フェイクニュース問題など、日本のメディアが大きく揺れている昨今の状況を完全に網羅した社会派ドラマだ。

その主人公であり、ドナルド・トランプを彷彿とさせる苛烈な経営者・青井聡太を演じるのは、俳優の三上博史さん。『連続ドラマW 下町ロケット』では夢を追う中小企業の社長を演じた三上さんが、正反対ともいえる役柄をどのように演じるのか期待がかかる。

今回は主演の三上さんと、作家で『社長室の冬』の原作者(集英社刊)である堂場瞬一さんの対談が実現。

ドラマ&原作『社長室の冬』について、今のメディアについて、そしてお二人の「本の読み方」と「想像力」の話について、たっぷりとお話をうかがった。

(新刊JP編集部/金井元貴)

■堂場「インターネットが頑張っていないから新聞が残っている」

――まずは三上さんにお話を伺いしますが、青井という人物についての第一印象はどうでしたか?

三上博史さん(以下敬称略):ものすごく格好好い役だなと。僕はどちらかというと格好悪い役の方が得意で(笑)、這いつくばったり、打ちひしがれたり、女々しいほうが役として入りやすいので、これは難しそうだと思いました。

堂場瞬一さん(以下敬称略):青井はすごく強い性格ですからね。

三上:しかも自分の人生を表に見せないから、難しさを感じましたね。

堂場:特に途中までは、ドラマを見ている方々は青井をドナルド・トランプと重ねるでしょうね。そこから後半で印象がどう変わるか。

三上:そうですね。後半で一気に彼のナイーブな部分が出てきます。もともと原作の小説では青井が主人公ではないのですが、そういう(背景を表に出さない)理由もあって堂場先生はこの男を主人公にしなかったんだろうと思っていました(笑)

――原作では買収先の大手新聞社「日本新報」の若手社員・南(福士誠治)が主人公でした。堂場さんにとっては、青井がメインになったことに意外性があったのではないですか?

堂場:もともとこの作品は映像化されないだろうと思っていたので、ドラマ化自体が意外でした。ただ、全体的にキャラクターを濃く描いていないので、人物についてはいじくりようがあるだろうなと思いましたね。

――とにかく声をあげて自分の考えを押し通していく青井は、堂場さんのおっしゃる通りドナルド・トランプ大統領と重なりました。

三上:でも、プロデューサーが何かにつけて青井とトランプを重ねるので、実は取材される時に困るんですよ(笑)。トランプを引き合いに出せば(記事を)書きやすいのは分かるんだけど、僕はトランプの真意や本当の性格を知らないですから。

ただ、にっちもさっちもいかない状況で、こういう強い人があらわれたら、救いを求めてしまう気持ちは分かります。「今すぐ変える!」と言われたら、それは支持しますよね。

――その意味では、フェイクニュース問題を含めて2017年の空気をかなり取り入れているドラマになっているのではないですか?

三上:僕は世間に疎くて、普段は必要最小限の情報しか取り入れないんです。だから、こういう役が来ると自分なりに(社会を)研究をするのですが、背景にさまざまな問題が広がっていて奥深いなと思いましたね。

フェイクニュースに関しては送り手だけではなく、受け手側も考えないといけない。個人がどのようにモラルや正義を持つかという話でもあるし。

堂場:そういう意味では、20年前はインターネットがもっと良いものになると思っていました。でも、今の状況をみると、アラン・ケイ(*1)は泣いているんじゃないかな。

紙のメディアがなくなるという話はもう20年前からあって、僕もそうなると思っていたんですよ。でも、意外となくならない。インターネットは意見発表の場としては革命的でしたが、既存メディアに変わるほどニュースの掘り起こしができていない。ネット発のニュースがどんどん出てくれば、新聞はもっと衰退していたと思います。

(*1:「パーソナルコンピュータ」という概念の発明者)

三上:今はインターネットの環境が良くなっていくための過程を辿っているんじゃないですか?

堂場:そうじゃないと困るんだけど、実際の状況はあまり良くないよね。

――『社長室の冬』は堂場さんにとってメディアをテーマにした3部作の最終巻にあたりますが、その全体のテーマが「劣化」でした。最近では「マスコミ」を「マスゴミ」と呼ぶなど視聴者からの批判の声が高まっていますが、その点についてはどのようにお考えですか?

堂場:マスコミ批判については、以前から存在していたのだと思います。ただ、インターネットによって見えるようになり、批判の声も上げやすくなっているだけでしょうね。

三上:でも、批判の声は本当に多くなりましたね。僕たちは表に出ている人間だから叩かれるのは仕方ないけれど、例えば番組をつくっているプロデューサーまで叩かれるでしょ? 裏方なんだから勘弁してあげてと思う時もあります。

堂場:バックグラウンド側の人を表に出そうという動きもここ20年くらいのものですが、それが叩かれやすい状況を演出しているんでしょうね。

三上:なんだか世知辛さを感じますね。

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