30代はどんなリフォームをしている? 「老朽化対策」ではなく「好みの空間」がキーワード
住宅リフォーム推進協議会では、住宅リフォームの実態を把握するために、毎年、リフォーム事業者に対してリフォーム工事が完了した住宅についてアンケートを実施している。平成28年度の「住宅リフォーム実例調査」では、リフォームを行った施主の年代によって傾向が異なることが分かった。ここでは、30代に着目して詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成28年度 第14回住宅リフォーム実例調査」を公表/住宅リフォーム推進協議会
リフォームを行った人のうち、30代以下は1割に満たない
まず、今回の調査で、30代以下の施主は、どのぐらいいるのだろうか?
調査全体(2191件)のうち30代が占める割合は8.3%、20歳以下は0.7%で、合わせても9.0%にすぎない。一方で、50代以上は全体の約8割を占めている。所有する住宅の老朽化を理由にリフォームすることが多いので、リフォームを行った人の年代も上がると考えられる。
ただし、リフォームした住宅がマンションの場合は、一戸建てに比べると若い層の比率が高くなり、一戸建て(1765件)では30代以下の占める割合は8.3%なのに対し、マンション(338件)では30代以下の占める割合は12.4%まで上がる。【図1】施主の年齢(出典/住宅リフォーム推進協議会「平成28年度 第14回住宅リフォーム実例調査」)
リフォームした住宅については、当初「中古住宅として購入した」住宅(購入後すぐにリフォームした場合や何年か住んだ後にリフォームした場合がある)と「親からの相続等」によって取得した住宅が、他の年代より多いことが30代以下の特徴だ。特にマンションでは、中古住宅購入比率が64.4%にも達している。【図2】施主の年齢別・住宅の取得方法(出典/住宅リフォーム推進協議会「平成28年度 第14回住宅リフォーム実例調査」)
一戸建てでは、基本性能を向上させるリフォームも
リフォームの目的を見ても、30代以下には特徴がある。【図3】施主の年齢別・リフォーム工事の目的(複数回答)(出典/住宅リフォーム推進協議会「平成28年度 第14回住宅リフォーム実例調査」)
他の年代と比べて、「使い勝手の改善、自分の好みに変更するため」が高いことに加え、「中古住宅の購入に合わせて」が特出して高い。マンションで54.8%、一戸建てで23.0%が、中古住宅の購入を契機にリフォームしている。
ただし、同じ30代でも、一戸建てとマンションでは少し違いもある。
マンションでは、住宅や設備の老朽化や省エネ化に対応したリフォームを行っているが、一戸建てでは広範囲に大規模なリフォームを行っていることが分かる。具体的には、老朽化対応だけでなく、省エネ性や耐久性、耐震性といった基本性能を向上させるリフォームを行い、長く快適に住める住宅にしようという傾向が見られる。また、他の世帯との同居に対応するリフォームも、他の年代より高くなっている。
マンションの構造部分は、頑丈な鉄筋コンクリートが一般的ではあるが、共用部分であるために自由にリフォームできないのに対して、一戸建ては構造部分までリフォームでき、手を加えることで住宅の基本性能を引き上げられるといったことも、影響しているのだろう。
長く住むためにしっかりとしたリフォームを行う?
この調査では、30代以下のリフォームについては、購入した中古住宅や相続した住宅をリフォームする比率が高い。マンションでは、リフォームした住宅を賃貸にして副収入を得る、といった事例もあるだろうが、多くは自分が住むためにリフォームしているのだろう。
特に一戸建てでは、長く快適に住めるように広範囲なリフォームをしていること、他の世帯と同居するリフォームをした事例もあることなどからもそれがうかがえる。広範囲なリフォームの結果、30代以下の一戸建てのリフォーム契約金額は1000万円超が34.5%と最多で、他の年代より高くなる傾向が見られる。
一方、リフォーム瑕疵(かし)保険の加入状況を見ると、30代以下のマンションのリフォームで19.0%が加入しており、最も多くなっている。この保険は、リフォーム工事の欠陥などが見つかった場合に補修費用をまかなう保険で、検査とセットになったもの。30代以下のリスク管理の高さがうかがえる。
こうして見ていくと、30代以下のリフォームは、老朽化対応としてやむなく行うというより、暮らしやすさを追求したり、好みの空間につくり替えたりという“暮らし優先”の傾向が強いように感じられる。
一方で、長く快適に住めるように基本性能を引き上げるリフォームをしたり、瑕疵保険に加入したりと、リフォームのメリットやリスクを、きちんと理解しているようにも感じられる。賢い消費者であることが垣間見えた気がする。
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