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「日本は民主主義社会ではない」 大塚英志×宮台真司 対談全文(前)

■「”民主主義の危機”は日本に存在しない」

「僕は橋下さんについてそんなに悪い感情を持っていない」

宮台: ちょっと同じような調子で喋るのが難しくなったんだけども。僕は、橋下さんについてそんなに悪い感情を持っていないし、橋下現象についても特異なことが起こっているとは思わないけれども、橋下さんに対する批判に関して、やはりちょっとおかしいなと思うところがたくさんあるので、ちょっとそれを申し上げると絡むかなという気がするんですね。

 たしかに民主主義社会の多くは、特に先進国の多くは非常に危険的な状態にあるんですね。よく言われるのが、例えば北朝鮮の核問題については、ブッシュ(元)米大統領が就任する前の時点で、実はかなりある種の図式が出来上がっていて。要は、核を持つ北朝鮮側の理由は「体制の保全と援助」を引き出すということなんですけれども。そうした方向のロードマップに合意しつつあったところで、ブッシュさんがポピュリズムで強硬路線を取るということをやったわけです。

 同じようなポピュリズムはイラク戦争においても見られたわけで、これが例えばアメリカの自滅を早めてしまったという帰結もさることながら、それが民主主義的なプロセスで動員されてきたというところに多くの政治学者達や社会学者の一部は注目しているんですよね。つまり、グローバル化が進みますよね。そうすると従来の中産階級が先進国でどんどん沈んでいくんですよね。

 それはさっき言った利潤率金とかの法則で。要は、どのみち中国・インド・ロシア・ブラジルに追いつかれるような産業領域で、先進国がそれでも頑張ろうとすると労働者がどんどん貧しくなっていくんですよ。それが中産階級の崩壊という現象の本質なんですけども、それが多かれ少なかれどこの先進国でも起こっている。そうすると、右肩上がりではなくて、まさに右肩下がりでしかありえないというふうな将来イメージになり、右肩上がりの時にあり得たような将来構想や自分自身のセルフイメージを持ちにくくなってしまう。

 だから簡単に言えば、信頼よりむしろ不信が、どんどん前面に出てくるわけですよ。あるいは、安心よりも不安がどんどん前面に出てくるわけですよね。そうした不安や不信を、いわば”餌”とするポピュリズムというのが、もちろんこれはアメリカだけじゃなくてフランス、その他の国でも駆動するというのはまったく自然なこととして起こっているんです。なので、多くの政治学者が従来の”民主主義的なるもの”へのナイーブな信頼を続けていく場合には、どのみち行政官僚がより大きな権力を握っていくことになるでしょうから。したがって、「分権化と自治を進めるか」でなかったら「政治的な独裁を進めるか」のどっちかしかないというふうな議論があったりしているわけです。

 こうした議論から見ると、日本も不安や不信でポピュリズムが起こっているというふうに見える側面もあるので、山口二郎(北海道大教授)さんほかのリベラルな方々が「この橋下現象は民主主義の危機だ」というふうに、日本がほかの先進国並みであるかのような議論をするのは、分からないでもないけれども。僕に言わせると「大笑いだ」と言うほかにない。なぜかと言うと、日本は”民主主義社会”じゃないからなんですね(笑)。だから”民主主義の危機”なんかは、民主主義ではない以上、日本には存在していないんですよ。

■”近代化のない日本の虚ろな議論”

大塚: だから”民主主義の危機”だったらよかったんですけどねぇ(笑)。

宮台: そうなんですよね(笑)。”民主主義社会の危機”と言ってる人たちって、何のこと言っているのか、僕は全然分からなくて。むしろ民主主義社会に相当するものが日本に存在していない。だから大塚さんは、近代主義的な振る舞いをしておられた。「近代化をすすめよう」「啓蒙化をすすめよう」としておられた。僕の方は、日本は昔からずっと田吾作であり続けたように、多くの人はずっと田吾作であり続けるでしょうから。要は、田吾作とユダヤ・キリスト教文明圏の間を橋渡しするような、メディエイター、インタープリター、あるいは中間地帯を作っていく必要があるんだとずっと議論していて、そういう存在を養成しようともしてきていたということなんです。

 そこの問題意識、大塚さんと僕の間で、とても重要な対立であるかのように以前思っていたんですよね。大塚さんは国民全体の民度を上げられると思っていらっしゃって、僕はそれは不可能だと思っているので、一点突破・全面展開的に一部の人材を、それこそ柳田が帝国官僚に期待しようと思ったのと同じように、期待しようと思った。それは能力ということではなくて、まさに愚民種の反対ですよね。自分を送り出してくれた故郷の人間たちに恩義を感じるがゆえにリターンを返そうという倫理観を持ったエリート。なおかつ優秀なエリートを生み出すことに賭ける。中国やその他のアジアの諸国が賭けてきたのと同じような構成で、「日本もそれを目指していたのに」と多くの人たちが思っているはずで。そうした方向を目指そうとした。この違いが今日に至ってみると、さして大きな違いではなかったということですよね。

大塚: うーん。まぁ、期待しすぎていたんですね。

宮台: そうなんです。どちらも期待をしすぎたというふうに言えるし、残念ながら日本が民主主義社会ではないし。いわゆる近代的といわれるような要素をいくつか決定的に欠いていることに関する自覚が、残念ながら思ったように広がらなかったので、今でも非常に無防備なまま国益の議論をしたり、外交の議論をしたり、日米関係・日中関係の議論をしているところが非常に御粗末でね。大塚さんが見放したくなる気持ちは僕も本当によく分かりますね。

■「維新の会」を利用する?

大塚: だから、大阪の人は、せめて今、橋下に乗っかれば絶対議員になれるわけだから、その時にもう自民党いっても民主党いっても当選しないような人が、市議会選で当選しないようなどうでもいいような政治ゴロみたいなのじゃなくて、もう少しまともにモノを考えていく人間たちが橋下のところに行って、維新の会を乗っ取って、気が付いたら橋下とか全部追い出して、少し真面目な政治をやるとか。そういうのだったら利用のしがいもあると思うんですけどもね。だから、そこの辺りどうするかとかは、大阪の人の選択なんじゃないですか。

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