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食品をプリントする!?オランダTNOのフード3Dプリントへの取り組み

FDMで造形するときに重要となってくるのは、形にするためのバランスだ。崩れないように形を作ること。そのためのパラメータや値の組み合わせは食材によって、かなり異なってくる。たとえば、パスタの材料は時間経過とともに変化してしまうので、同じ品質で生産することが難しい場合がある。

また、チョコレートのプリントは温度と時間管理が非常にシビア(キャンディよりもチョコレートのほうがずっと難しいそう)。

さまざまな造形方法(プレゼン資料より引用)

外装をシリコンで造形するのとは異なり、最終的に食べ物として人が口にするわけで、一番重要なのは味だ。どんな食材を混ぜたらおいしくなるか、あるいは粒子の大きさはどれくらいがよいのか、粘着力はどうか、解像度や出力のスピードも関係してくる。こういった非常に多くの課題があり、それらを1つ1つ解決へ進めているところだという。

電子レンジのように「入れて何分間か経ったら出来上がり」という使い方ができるよう、コンシューマ向けの機器の研究開発もすでに始まっている。

TNOが考える未来のフード3Dプリンタ(プレゼン資料より引用)

フードにおける3Dデジタルデザイナー

フード3Dプリンタの活用としてビジネスにしやすいのは、高級レストランなどで提供する付加価値の部分だが、将来的に大きな可能性を秘めているのは、いわゆる「代替フード」の部分だ。

代替フードというとちょっと語感が異なるかもしれないが、最終的には、パーソナライズドフード、自分がその日食べたいものを自分に必要な栄養素を入れて作ることもできるのではないか。

いま進んでいるのは「フードのリバースエンジニアリング」、つまり既存の食材の構造を真似て新しい食材を作る研究だ。炭水化物、タンパク質、脂肪など、さまざまな栄養素から構造の異なる新しい食材を作ることができないかということ。これは製薬開発、化粧品開発にも応用できる研究で、アメリカの企業でもこうした食べ物のテクスチャ、構造について研究が始まっているという。

TNOが作成したサンプル。上下のレイヤは空隙率が高く、真ん中は緻密な構造を取る(プレゼン資料より引用)

ただ、食品ということで安全性の保証は最重要だ。実際、各国で食品に関する規制があり、食品を扱う以上、相応の認可を受ける必要がある。

先にフード3Dプリントの造形方法をいくつかあげたが、そのうちレーザーを用いるレーザー焼結は、技術開発と同時に食の安全性を実証していく必要がある。この点について、田中浩也氏が補足で説明してくれたのだが、レーザー焼結だけ、化学反応の中で何が起こっているのかわからないところがあり、そのため加工したものが本当に安全かどうかはちょっとわかりにくい。

それ以外のFDMやバインディングによる造形については素材が安全で機械が衛生なら大丈夫と見ている(FDMが「食材を加工しているから危ない」というなら、電子レンジやフライパンで調理することも大丈夫かという話になるので)、とのこと。

2週間前にオランダに行き、TNOを訪問してきたという田中浩也教授

このあたりは遺伝子組み換え技術が登場したときのような議論になるのだろうか。

当日参加していたケイズデザインラボの原雄司氏は、フード3Dプリントに興味を持った理由を「3Dプリント、3Dデータでさまざまな構造体、テクスチャを作る技術が進み、工業の世界では成功している。今度はそれを食感にうまく応用したい。フードに対する3Dデジタルデザイナーという分野が必要なんじゃないかなと思っていて、その部分の基礎研究をしたい」と語る。

自身格闘技をしているという原氏は、最終的に、自分に必要なパーソナライズフードをプリントしたいという TNOの日本の食と健康部門の代表 西出香氏。今後、TNOとのパートナーシップにおける日本での窓口となる

技術的な部分で、フード3Dプリントは形状や中に何を入れるかという素材についてほぼ確立し、今後は、誤ロットをどう減らしていくか、さらにテクスチャ、構造をどう3Dプリントで再現するかの部分になる。

ただ同時に、フード3Dプリントの可能性とそれによるメリット/デメリットを踏まえ、コンシューマがフード3Dプリントをどう受け入れるかの議論やそのための体験も必要になるだろう。

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