テレワークに二の足踏む企業 働き方改革の柱となることは可能か?

テレワークに二の足踏む企業 働き方改革の柱となることは可能か?

雇用型と自営型に分けられるテレワーク

ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方として注目を集めているテレワーク。
テレワークは、就業形態により、雇用型と自営型に分けることができます。
雇用型には、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務等があります。
自営型は、個人事業主のような企業と雇用関係を持たないような労働者のことをいいます。
このようなテレワークは、今話題の働き改革にも有効な手段として期待されています。

テレワークの企業側と従業員側のメリット

働き方改革の一手段としてのテレワークですが、導入することによる企業側と従業員側のメリットは何でしょうか。
まず企業側ですが、優秀な人材の確保に繋がります。
柔軟な働き方ができる、ということは、大きなインセンティブになります。

また、業務の効率化による生産性の向上、地震などの有事の際にBCP(事業継続計画)の速やかな実行がしやすくなる、通勤手当等が不要になってコスト削減になる、等のメリットがあります。
従業員側のメリットとしては、時間や場所の制約を受けずに仕事ができるのでワークライフバランスが実現できる、通勤による疲労がなくなる、住む場所の選択肢が増える、等の効用が挙げられます。

企業がテレワーク導入に二の足を踏む理由

このようなメリットがあるにも関わらず、総務省による平成27年度通信利用動向調査では、企業におけるテレワークの導入率はわずか16.2%。
別の調査では中小企業ほど導入率は低い結果となっています。
企業がテレワークの導入に二の足を踏んでいる理由は何でしょうか。
 
まずは、労務管理の難しさが挙げられます。
日本では、営業職などの一部の職種を除けば、一緒の職場・空間で働くことが馴染みのあるワークスタイルです。
そこでは、職務は細分化されておらず、職場全体で仕事を共有するスタイルをとっていることが多いのです。
そのため、一部の職務だけを切り離してテレワーク化するということがやりにくい、テレワーク化できる仕事がない、という問題があります。

また、在宅勤務者について時間管理がやりにくい、評価をどうしたらよいか分からない、情報漏えいが心配、といった点が労務管理の側面から挙げられます。
次に、IT技術の活用能力に不安がある、という声もあります。
と同時に特に中小企業においてはIT設備導入コストの資金面での問題も挙げられます。
さらに、自営型テレワーカーへ仕事を委託する際に、個々の契約の仕方が分からない、といった懸念もあります。
このような理由から、企業はなかなかテレワークの導入が進まないものと考えられます。

テレワークを普及させていくには?

では、上記のような課題をどのように解決すればよいでしょうか。
まず、労務管理の点ですが、今後ますます同一労働同一賃金の話が進んでいけば、日本においても職務の細分化が進み、テレワーク化しやすい職務が増えていくものと考えられます。

時間管理の問題については、技術上ネットを通したモニタリングはすでに可能になっていますし、要件を満たした在宅勤務者には事業場外みなし労働時間制(労働基準法38条の2)を適用することで、労働時間の算定を容易に行うことができます。
人事評価については、労働者が職場に出勤しないことから、業績評価等について懸念を抱くことがないように、評価制度、賃金制度を構築することが大切です。
なお、テレワークを進める際、マネージャークラスの管理者には是非テレワークを体験してもらい、理解を深めてもらいましょう。
実際にテレワーク従事者を評価する管理者に働き方への誤解や理解不足があっては、適切な評価は期待できません。

IT技術の活用能力に対する不安やコスト面に対しては、専門の業者やコンサルタントにお願いする方法があります。
最近ではIT導入に対する補助金や、生産性向上に繋がる設備導入やコンサルタント費用に対して助成金があり、国も力を入れています。
ベンダー各社は、働き方改革の風を受けてますますサービスの向上や競争によるコストダウを進めていくものと思われます。

自営型テレワーカーとの契約ついては、仕事の内容、進行のチェック、成果の評価、報酬の算定・決定方法、納期遅延の場合の対処、等について個々の契約書にしっかりと書き込んでおくことが大切です。
口頭は後々トラブルの元になりますので、絶対やめて下さい。
また、逆に自営型テレワーカー側から言うと、報酬の未払い等を防ぐためにもしっかりとした契約書を取り交わさない企業とは契約しないことをおすすめします。

時間的・空間的な枠を超えた柔軟な働き方は今後ますます求められる社会になってきます。
テレワークは働き方改革の一手段としてだけでなく、他の働き方改革の中でも柱となって、そのようなニーズに応えることが出来る制度になっていくでしょう。

(三谷 文夫/社会保険労務士)

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