愛情深い表現がたくさん詰まった『幸福な質問』という本を大事にしている ——アノヒトの読書遍歴:和田裕美さん(前編)
作家・営業コンサルタントの和田裕美さん。23歳のとき、外資系教育会社でフルコミッション営業の仕事に就き、「経費はすべて自腹、契約がとれなければ給料もなし」という状況下で働いていたそうです。そんななか、徐々に契約件数を増やしていき、世界142カ国中第2位の成績を収めるまでに至りました。その後、自身の体験をもとに、2003年に『世界No.2 営業ウーマンの「売れる営業」に変わる本』を上梓し、作家デビュー。それまでにない営業手法が大きな反響を呼び、なんと20万部のベストセラーを記録。以降は50冊以上を上梓し、昨年11月に『ママの人生』を出版。累計出版部数は200万部を超えます。今回は、そんな和田さんに日頃の読書の生活についてお話を伺いました。
——まず最初に、和田さんと「本」との出会いはいつ頃でしょうか?
「小学生の頃でしょうか。私はたくさん本を読む家庭にいたわけではないので、活字ではなく漫画ばかり読んでいたような……雑誌『マーガレット』ばかり読んでいた気がします。特に、くらもちふさこさんの作品が好きでした。男の子がむちゃくちゃ格好良くて、テンションが上がるんです(笑)。なかでも『天然コケッコー』は大好きでよく読んでいましたね」
——小さい頃は漫画を多く読まれていた感じでしょうか。
「そうですね。ちなみに、漫画ではないですが……小学校2年のときに、読書感想文で賞を取った思い出があります。そのとき読んだのは『かわいそうなごちそう』という本です。『鶏を絞めて食べる』というただそれだけの話なんですが、飼っていた鶏をお祝いだからと言って絞めて殺すんですね。それで子供が泣いたりするんですけど、命を捧げてくれたという……『かわいそうだけどご馳走なんだよ』というような本でした。これはいい本に巡り合ったなっていう感じがありましたね」
——なるほど。こういった類の本はよく読まれるんですか?
「『かわいそうなごちそう』のような、『リアリティ』のある本はよく読みます。ですが……私の中で大事な本として持っているのは、おーなり由子さんが書いた『幸福な質問』という本です。この本は、ワンちゃんのカップルが一緒に住んでいて、彼女の方が彼氏に次々に質問をしていくんです。その質問が、何ともきゅんとするんです(笑)」
——どちらかというと、”癒し系”の本でしょうか。
「はい。たとえば、『もし明日起きて私が真っ黒なクマになっていたらあなたどうする?』とか、そういう質問をしていくんです。すると、彼氏の方が『そりゃびっくりするなあ』『僕を食べないでって言うよ』『それから朝ごはん何が食べたいか君に聞いて用意してあげる』『やっぱりはちみつが好きかな』という返事をするんです。これ、ダイレクトに『君が好き』と言ってないけどちゃんと『好き』と言っているんですが、もうね、女子的にはこういうことを言われたくてたまらないんですよね(笑)。普通の男性なら『何だよそれ』って終わりそうですけどね」
——先ほどの「リアリティ」のある本とはまったく正反対な感じの内容ですね。
「実はこの本、一つ一つの言葉や行間に思いが込められていて、こういう愛され方とか愛の表現とかってすごい大事だなって、私たち普段から言葉ちょっと足りないなって思います。こういう大事な言葉をもうちょっと吐くと、もっともっと人との距離が縮まって良くなるのになって思うんですね。それで、普通だったら男の人って、最後まで女の人に付き合わないと思うんです。でもこの彼氏のいいところは、ずっと最後まで答えてあげていて向き合う。子育てもこれとまったく同じで、子どもが『何で何で』って聞いて、それに対してお母さんが飽きずにずっと答えてあげる。さらにその答え方が相手を幸せにする答え方だと子どもも愛も育っていくんだと思います」
——とても深いお話ですね。
「ぜひこれは好きな人とか大事な人とか、たとえばカップルで一緒に読んでくださいって思います。あと結婚式の日に、新郎新婦にプレゼントするとか。そういうものとして、私は大事な本として持っています」
——ありがとうございます。後編では、和田さんが影響を受けた本について紹介します。お楽しみに。
<プロフィール>
和田裕美 わだひろみ/京都府出身。作家。営業コンサルタント。
23歳のときに外資系教育会社でフルコミッション営業の仕事に就き、最初の数カ月間は、もやしと納豆ばかりを食べて生活をしていた。試行錯誤の末、顧客の98%から契約を獲得し、世界142カ国中第2位の成績を収めるまでになる。その体験をもとに、2003年に『世界No.2 営業ウーマンの「売れる営業」に変わる本』で作家デビュー。20万部のベストセラーとなる。以降、50冊以上を上梓し、2016年11月には『ママの人生』を出版した。累計出版部数は200万部を超え、女性ビジネス書作家の先駆けと呼ばれる。
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