休みがないのは売れっ子タレントの証!?労働基準法は?「タレントの労働」について弁護士に聞いてみた!
今年の年始特番も、バラエティ番組やドラマ、ドキュメンタリーなど、様々な番組が放送されました。中にはお正月から生放送で放送される番組も。やはり売れっこ芸能人に正月休みなど無いようです。
ところで、バラエティ番組などで良く「今年に入って数日しか休んでいません」など、とにかく仕事ばかりで休みが無い事をアピールするタレントさんがいらっしゃいます。一体タレントさんの労働条件ってどうなっているのでしょうか?
ただでさえ労働条件が厳しいと、“ブラック企業”と叩かれる世の中です。そこで今回は、タレントさんの労働について弁護士の先生に色々とお話を聞いてみました。今回「タレントの労働」について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の岩沙好幸先生です。
–記者
世の中には様々な雇用の形があるとは思いますが、一般的にタレントと我々一般人で、雇用の形に差異はあるのでしょうか?また、その差によって労働に関する法律の取扱いは変わるものなのでしょうか?
–岩沙先生
タレントの方も、一般の方も、会社等とどのような内容の契約を結んだかによって、労働に関する法律、例えば労働基準法の適用があるかが変わります。
契約形態としては、労働契約(雇用契約)、請負契約、委任契約等があります。どの契約に当たるかは、契約内容や就業実態等から判断されます。タレントが労働基準法上の労働者にあたるかどうかの判断基準として、通達があり(昭和63年7月30日基収355号)、
1 当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること
2 当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと
3 リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあってもプロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと
4 契約形態が雇用契約ではないこと
この4つの要件を満たせば労働者には当たらないものとされています。
労働基準法上の労働者に当たる場合には、原則1日8時間以内、1週間40時間以内といった労働時間の規制、有給休暇の取得、労働災害の補償、解雇の制限等の点で、請負契約等とは異なることとなります。
–記者
テレビなどを見ていると、良くタレントの口から「今年はまだ1日も休めていない」などの言葉を聞く事があります。番組演出上のリップサービス的な“盛り”があるのかもしれませんが、一般企業に当てはめるとありえない労働条件になる気がします。法律的な見解はどうなるのでしょうか?
–岩沙先生
働かれている方が労働者に当たる場合には、会社や事務所等の使用者は、毎週1日以上の休日を与えるか、4週間のうちに4日以上の休日を与える必要があります(労基法35条)。使用者がこれに違反すると、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます(労基法119条1号)。
ですので、タレントの方が労働者に当たることを前提とすると、「今年はまだ1日も休めていない」というのがリップサービス的な“盛り”ではなく本当であれば、芸能事務所等の使用者の労働基準法違反ということになります。
–記者
芸能界には子役がたくさんいます。未成年や子供の労働に関して、労働に関する法律でも明確なルールが定められていると思いますが、具体的にはどのような規則になっているのでしょうか?
–岩沙先生
労働基準法は、満15歳未満の児童を労働者として働かせることを禁止しています。(56条1項)。ただし、例外として、映画の製作又は演劇の事業については、満13歳未満の児童を修学時間外に働かせることはできることとなっています(労基法56条2項。)ですので、芸能事務所は、子役が13歳未満であっても仕事をさせることが可能となります。
使用者は、満18歳未満のものを働かせる場合には、その者の年齢を証明する戸籍証明書を、満15歳未満の児童については、さらに修学に差支えがないことを証明する学校長の証明書、親権者等の同意書を事業所に備え付ける必要があります(労基法57条)。
労働時間について、満18歳未満の者は、1日8時間以内、1週間で40時間以内とすることが原則とされていますが、満15歳未満の者については、修学時間を通算して1日7時間以内か1週間40時間以内とすることと規定されています(労基法60条)。その他、深夜時間の労働の禁止(61条)、クレーンの運転等危険を伴う業務や毒劇物など身体に有害なものを取り扱う業務、坑内労働の禁止(62条、63条)等の規定があります。深夜の時間帯の生放送番組では、子役が出演していないのは、労働基準法61条の深夜労働の禁止の規定に配慮したもの考えられます。
–記者
ちなみに、子役に限らず、子供(乳児・幼児含む)に対しての報酬について何か法律的な規制はあるのでしょうか?報酬に見合う仕事をしているのであれば、子供自身がそれなりの報酬を得る事自体は問題ないのでしょうか?
–岩沙先生
未成年者は、自身で独立して報酬を請求することができます。親権者が未成年者の代わりに賃金を受け取ることは禁止されています(労基法59条)。未成年者であっても、働いた以上は、その対価として報酬を得ること自体に問題はありません。
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というワケで、今回は“タレントの労働”について、弁護士の岩沙先生に色々とお話を伺いました。雇用契約の内容によるとの事でしたが、タレントさんの場合は我々のような「労働者」では無く、労働基準法が適用されないケースがあるようです。だからこそ、「1日も休みがない」などと公言出来るのかもしれません。
取材協力
岩沙好幸(いわさよしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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