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ゲームアワード最多ノミネートの注目作『Virginia』 失踪事件の裏でFBI新人捜査官に課せられた「重大な任務」の謎とは?

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世界各国のゲームクリエイターからの投票によってゲームが選ばれるイベント「GDC(Game Developers Conference)」は、その年に話題となったタイトルが名を連ね、数多くのゲーマーが受賞タイトルをチェックしている。GDCの期間中に開催し、インディーゲームを対象として選ばれるIGF(Independent Games Festival)も年々注目が集まっているイベントだ。

今回は、そんなIGFのゲームアワード「IGF Awards」において、Playdeadが開発したアドベンチャーゲーム『INSIDE』の3部門ノミネートと共に、「物語・音響・美術・斬新さ」の4部門で最多ノミネートされた注目作『Virginia』の紹介をしたい。

小さい町で起こる失踪事件を追う新人捜査官

インディゲームデベロッパー「Variable State」によるミステリーアドベンチャーゲーム『Virginia』。PC版はゲーム配信プラットフォーム「Steam」にて980円で販売されており、PS4/Xbox Oneにも配信されている。

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FBI新人捜査官「アン・ターヴァー」。プレイヤーは彼女を操作する

本作は1992年アメリカのバージニア州にある小さな田舎町を舞台に、少年の失踪事件の捜査を任されたFBI新人捜査官「アン・ターヴァー」が、ベテラン捜査官「マリア・ハルペリン」とコンビを組み事件を追うという物語。プレイヤーは、「アン」となり事件を追う中で、もう1つ上司から重要な任務を命じられることになる……。
 
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上司から与えられたもう1つの任務とは一体
 
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マリアの部屋は警察署地下の奥深くに位置している。ベテラン捜査官なのに何故?
 
プレイヤーはアン捜査官を操るわけだが、住人への聞き込み調査や自分の手で捜査資料を探るという行動は取ることができない。決められた箇所をクリックしていけば話が進むので、ミステリーアドベンチャーの中では操作性が少ない作品にあたる。物語についても、作中で1から10まで手取り足取り解説はされないため、正解や意味を考えることを楽しめる人に向いている作品といえるだろう。

演出と音によって世界観に飲み込まれる

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失踪した少年の家の様子。不自由ない家庭に見えるが……
 
町の中を自由に歩き回るということができない操作性のため、移動は「ジャンプカット」によって行われる。少し歩いている内に次のシーンへとジャンプし、警察署、自宅、タクシー、カフェなど突然飛ばされる。次々と場所が飛ぶのに加え、過去の体験や夢、別視点、そして、幻覚のようなシーンにも切り替わってくるため、「」で描かれた状況の把握が求められる。

『Virginia』の話をする上で欠かせないのが、サウンドだ。オーケストラによる演奏が物語に緩急を付け、気づいたら世界に没入している。ラストのシーンは、アクセル全開で加速し続け、怒涛の展開で思考が鈍り、何が真実かが分からなくなるほどだ。

本作は、デイヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス』の影響が節々で感じ取られる。ビジュアルもその1つだ。シンプルなグラフィックでありながら、記憶に残るカットや、スクリーンショットを撮りたくなるほど美しい街並みが目の前に広がる。

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明かされない会話内容を「想像して読み取る」

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『Virginia』には「セリフ」が存在しない。登場人物たちは、会話こそ行っているのだが、何を話しているのかが分からないのだ。ミステリーにおいて、セリフから得られる情報というのは大きい。口調、ボイス付きであれば声色、言葉の細かなニュアンスから推理の材料となる。物語の謎を紐解いていく段階で、「セリフ」が無いのは痛手だ。

では、このゲームでは何を参考に推理を行うのか。そう、キャラクターの表情で感情や行動の違和感を読み取るのだ。この演出は非常に巧みなものとなっており、本作を読み解く上での醍醐味となる部分でもある。

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ミステリーゲームは、一般的にリプレイ性が低いと言われている。たしかに、先の展開や結末を知っている状態で物語を進めていくのは退屈かもしれない。しかし、本作は違った。筆者は、1週目と2週目で、想像しているセリフと違う場面がいくつかあった。また、1週目では何も気にならなかったシーンが意味を持つようになったり、新たな解釈が生まれたりして深く楽しむことができた。

他にも、周回することで住民が抱えている思想についても何か発見があるかもしれない。これらは、セリフが無いからこそできた想像であって、『Virginia』がもたらす広がりであり深みである。プレイする際は、脳内で登場人物にアテレコをしながら遊んでほしく、ぜひとも周回プレイを推奨したい。

バラバラに見える「」をプレイヤー側で繋ぎ合わせ「」にして補完する。この完成した線についても各プレイヤーによって解釈が変わってくるかもしれない。そんな、考察や論議が行われるのも『Virginia』の魅力なのだろう。

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中には、物語が不完全だと感じてしまう人もいるかもしれない。しかし、ここまで読み進めてもらい興味を持った人であれば、きっとハマってしまうゲームに違いない。本作の世界をアンの目を通し、あなたなりの解釈で、彼女が感じた物語を体験をしてもらいたい。

[作品情報]
タイトル 『Virginia』
開発元 Minority Media Inc
パブリッシャー 505 Games
プレイ時間 2時間程度
価格 980円

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