「オジ旅」は新しい“中年グルメ旅行”のスタイルだ!【2017年のキーワードになる?】

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「オジ旅」というウェブサイトをご存じだろうか。

オジサンたちの旅だから「オジ旅」。

その中身はというと、押しも押されぬ中年のオジサンたちが安旅をしながら、現地で酒を飲むという、ホントにただそれだけ……。

考えてみれば、昭和の中年男たちの旅スタイルの定番は「飲む打つ買う」だった。対して、こちらの「オジ旅」は「飲む、(サイト更新のためにキーボードを)打つ、(平日から遊んでいるという点でひんしゅくを)買う」。

世に旅行や酒場めぐりブログはたくさんあれど、ありそうで意外になかったのがこのスタイルかもしれない。

それどころか最近はPRの仕事まで請け負っちゃって「仕事」にすらなっているというから、世間もその存在自体を認めてきつつあるのだ。

この中年男たちはいったいナニモノなのか。

「オジ旅」の魅力や、目指すものは?

いろいろ聞きたくなってインタビューにしてみることに。

中心メンバーのムーシャリョータ氏(以降ムーシャ)、知らないおじさん(以降、おじさん)、登呂山拓哉氏(登呂山)氏にあれこれ聞いてみた。もちろん、飲みながら。

「オジ旅」とは何なのか

──お三方は普段どういうお仕事をされているんでしょうか。

僕はフリーランスのライターとしてWEB媒体や紙媒体で書いています。(ムーシャ)

小さな会社の経営者をしています。(おじさん)

私は主にブログを書いて生活しています。(登呂山)

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▲「オジ旅」主要メンバー。左から、知らないおじさん、ムーシャリョータ氏、登呂山氏。決して塀の中の人たちじゃありません

──やはり時間が比較的自由に使える人たちばっかりなんですね。そもそも「オジ旅」はどうやって始まったんでしょうか。

東京北区の十条に「埼玉屋」っていう有名な焼きとん屋さんがあって、そこで2年前に初めて僕とおじさんが知り合って。そのときに登呂山さんもいたんですけど「いまLCCがすっごく安いから今度、四国の高松へうまいもん食いに行く」みたいな話で盛り上がって、じゃあ僕もってことで一緒に行ったんですよ。それが「オジ旅」のはじまりですね。(ムーシャ)

──やっぱり実際の旅から始まった、と。

でも、旅先でひどい目に遭っちゃったんです。高松の飲み屋さんで知り合った地元のオジサンに気に入られちゃったのか「いいお店があるから飲み行こうよ」って言われて、オネーサンのいるお店に連れて行ってもらって。そういう場合って普通、誘った方がおごるかなって思うじゃないですか。そしたらきっちりワリカンにされて。さらにほかのお店にも連れて行かれ、誘った人は先に帰っちゃって、知らない夜の街に放り出されることになって。(おじさん)

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▲乾杯は、ほんのあいさつみたいなものです

──まんまとハシゴする方もする方ですよね。

そういうお酒がらみの笑える失敗談ってやっぱりネタになるよね、みたいな話があって。「じゃあ特に観光の予定も立てず、ノープランでひたすら酒を飲むだけの安旅をブログ形式で実況しちゃおうぜ」って盛り上がったんです。(登呂山)

──サイトのトップページに書いてあるコンセプトは「CHEAP BUT FUNなオッさん旅」ですから。

金にモノ言わせたラグジュアリーな旅行は、誰かに任せておけばいいやって。(おじさん)

旅の数だけ失敗がある

──そう考えると「オジ旅」っていうのは、LCCがメジャーになった今だからこそ出来たスタイルなのかもしれないですね。第1回目の2015年の熊本編からかなり珍道中になったとか。

成田発熊本行きのLCCが早朝便なんだけど、前夜にお台場にある某スーパー銭湯に泊まるとバスが出ているから安く行けるって聞いたんです。ところが、ああいうスーパー銭湯って、お酒が飲めるところが完備されてるでしょ。だから湯上がりに調子に乗って大ジョッキ、がんがん飲んでたらベロンベロンになって。結局、熊本ツアーでいちばんお金使っちゃったのがスーパー銭湯だった。LCCは片道3,000円くらいしかかかってないのに、前夜で2万円使っちゃったんです。(おじさん)

──本末転倒もいいところじゃないですか!

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▲スーパー銭湯でのプレ宴会の様子(熊本編より)

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▲旅立ちを目前に、湯上がりの男たちと林立するジョッキ。嫌な予感しかない(熊本編より)

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▲熊本へ飛び立つ前夜に、お台場でテイクオフする「オジ旅」メンバー(熊本編より)

あと格安の高速夜行バスも結構使ってます。あ、思い出した。「オジ旅」メンバーには女性が何人かいるんですけど、富山に高速夜行バスで行ったとき、その女性が以前ファンだったいうJリーグの元サッカー選手が富山のサッカーチームのGMをされているという情報を事前に入手していて、僕らが女性には内緒でサプライズで会えるようセッティングしたんですけど、またしてもサプライズ決行日の前日に飲み過ぎて……(おじさん)

──またその展開ですか!

ホテルのチェックアウトまで寝てて、たたきき起こされながら待ち合わせ場所に向かって行って。結果、その女性に元Jリーグ選手を会わせることはできたんだけど、その女性はうっすらメイクしていただけだったので、会った瞬間にフリーズ。その後すぐに慌ててトイレへメイク直しに行って。(登呂山)

──憧れの選手にほぼスッピンでご対面……。男性には計り知れないほどの恐怖です。

ノープラン、ノールール

──今、「オジ旅」メンバーはどれくらいいて、何人で飲み歩くんですか?

いま現在は20人弱ですかね。これまで20カ所くらい行きましたけど、いちばん多いときの旅で、一度に8人くらいの参加者がいたかな。(ムーシャ)

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▲ひと仕事終えて飲んでいる現場作業員ではありません

──どれくらいのペースで「オジ旅」を?

一応、毎月行こうって決めてるんですよ。最近は2カ月に一度は東京を昼間から飲みに歩いてそれも「オジ旅」にしちゃってます。そこに関しても、あえてルールを決めてないですね。縛られると窮屈になるんで。(おじさん)

──ノープランで、ノールール。でも決して無法地帯じゃない。

そうですね。「オジ旅」で「これはやらないようにしよう」って決めているのは「マウンティングはしない」ってこと。エラソーな態度とか、オチのない自慢話、あと仕事の話はあまりしないですね。ひたすらバカでくだらないトークに終始しますもん。(おじさん)

──そもそも40代のオジさんがキャッキャッ言いながら、束になって旅行するのってあんまり見たことないですもんね。

バイクのツーリングとか、キャンプ、フェスくらいだったらあるのかもしれないけど、わざわざLCC使って地方へ飲みに行く旅ってことでいうなら、他にはあんまりないかもしれませんね。(ムーシャ)

──かといって、城めぐりとか合戦場行くようなノリでもない。ましてや昭和のオッサンたちみたいな、人に言えない遊びを求めて東南アジアへ行っちゃう感じでもないし。

そもそもの共通目的はお酒だけなんで。だから組織というよりも、互いが対等でいられる「コミュニティ」に近いかもしれない。ブログの文章も極力「かっこよく」映らないようにしています。サイトではオジさんたちがキャッキャッ言い合ってる姿が伝わればいいかなって。(登呂山)

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▲「オジ旅」には、ほぼ毎回うまそうな食べ物や極上の酒がいやというほど紹介されている

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▲なんだかんだいって、こうした写真や情報に惹かれてしまうのだ

まさかのビジネス展開

──最初こそ遊びで始めた「オジ旅」ですけど、最近は企業からPR仕事の依頼が来たりしてるわけですよね。観光地紹介とか、飲食レポとか、工場見学とか。

メジャーなところで言うと、タイ・ローソンとか、福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズの依頼を受けて現地へ行ってるわけでしょ。これは正直すごい! と思ったんです。「オジ旅」、実は世間で結構注目され始めているんだなぁと。

「オジ旅」を始めるときに、「いずれスポンサーがついてタダで旅できるようになったら最高だね」って言ってたんですけど、思ったより早く仕事を頂けたんですよね。知り合いヅテに「『オジ旅』でリポートしてもらえませんか」って言われて。(ムーシャ)

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▲PR仕事では、なぜかタイのローソンをリポート。Tシャツが……

▲スパリゾートハワイアンズ編より。ウォータースライダーから次々とすべり降りてくるオジさんたちの姿はシュールですらある

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▲静岡県にある藤枝酒造でもPRをやらせてもらった

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▲酒と一緒に写り込むとき、おじさんたちの目はいつもキラキラしている

──「オジ旅」のどこがクライアントの目にとまったんでしょうか。

んー、どうなんですかね。いままでのPR案件で、KPIを求められたことは一度もないし、「オジ旅」のPVを聞かれたこともないんですよね。(登呂山)

ただ、オジさん向けの情報で、ラグジュアリーじゃない方向で発信したいっていうときに意外と媒体がないっていう話はよく耳にしますね。それと、手頃な費用で、平日の昼間から動けて、継続的に発信していてっていう意味では僕らに頼みやすいのかもしれませんね。(ムーシャ)

──おそらく競合もいませんし。

でも最近やたらと聞かれますよ、いくら儲かってるの? とか、誰が裏で糸引いてるの? オーガナイザーはどこの代理店? とか。全然儲かってないし、裏も何にもないのに(笑)。(ムーシャ)

権威にはなりたくない

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▲館山編より。おじさんたちはユニフォームが大好きだ

──結局、「オジ旅」って何が魅力なのかなって思ったら「いい年こいてるのに気楽で自由」ってところなのかなって思ったんです。中年になるとみんな仕事や家庭で忙しいし、同年代でバカやる機会って減るじゃないですか。でも、それをわざわざ旅行までしてやってるっていう。

ハハハ。あえて言うなら「旅先で失敗したい」ってことですかね。自分の経験上、旅行で記憶に残っているのって失敗したことなんですよ。予定通りに行った旅って意外に覚えていないもんなんですよね。全然面白くない。でも、失敗だけは予定に組み込めないから(笑)。ノープランにもちゃんと理由があるわけです。って今思いついて言ってるだけだけど。(おじさん)

──今後の抱負は? とか聞いてもあんまり意味なさそうですね。

よくお分かりで(笑)。「オジ旅」は自分らだけの商標でもないし、いってみれば概念みたいなもんなんですよ。「オジ旅」っていうハッシュタグを他の人が使ってくれるとうれしいですね。(登呂山)

──今年中にはそんな現象が起きるかもしれません、マジで。「俺も『オジ旅』に入りたい」とか「オジ旅風の旅行がしてみたい」いうオジさんたちが増えるかも。

ただ、権威にはなりたくないっていうか、メンバー選ぶ立場じゃないから、やりたい人はどんどんどうぞっていう。っていうか『メシ通』のスタッフも今度一緒にどうですか?(おじさん)

──ぜひお願いします! でもどうしますか? 「オジ旅」が流行語にノミネートされるようになっちゃったら。

いやー、それも野暮だな。そうなるとムズがゆくて自分らが「オジ旅」って言えなくなっちゃいますよ。(ムーシャ)

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▲お三方、ありがとうございました! くれぐれも肝臓だけはいたわってください

聞き手:メシ通編集部 取材協力:「豚組 しゃぶ庵 六本木」

※この記事は2016年12月の情報です。

※金額はすべて税込みです。

書いた人:メシ通編集部

メシ通編集部

食を楽しみたい人のためのWebマガジン「メシ通」編集部です。 Twitter:@mesitsu

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