【料理実験】ステーキ肉を超やわらかウマ~くするための研究【理系メシ】

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やってまいりました、やわらか肉ステーキ選手権!

茉衣ちゃんは肉は好きですか?

「好きです! A5の飛騨牛か三田牛をレアで食べたいです!」

ぜ、ぜいたくだな。

今回はそういう、「お高いんでしょう?」な肉ではなく、庶民の味方、普通のスーパーでリーズナブルに買えるオーストラリア産ビーフだ!

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「でかっ!」

でかいだろう。これで1,099円。

「安!」

ほぼ600グラムだからな。立ち食いステーキ食べてる場合じゃないぜ。オーストラリアの牛は、主に飼料として牧草を食べているそうなんだな。

でも、主に牧草を餌にしている牛の肉は硬くなりがちと言われているんだ。さらに臭みがあるとも言われている。そこで、でかいけど安いオーストラリア産の肉を、もっとおいしくいただきたい。それもできる限り低コストで!

そういうわけでエントリー1番、ジャガード

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「なんですか、これ?」

業界用語でジャガードという便利グッズだ。硬い肉は筋が多い。だから筋を切ってやればいい。これで押しつけると肉の筋を一気に切れる。

「おもしろ〜い」

ブスブス、ブチブチと筋を切って、肉をやわらかくする。ジャガードは安いものだと1,000円ぐらいだから、ステーキ好きなら買っておくとお得だ。

続いてエントリー2番! マイタケ

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「ええっ? これでお肉がやわらかくなるんですか?」

そうなんです。テレビの某人気検証番組のHディレクター直伝のマイタケ酵素、リターンズ!

ヨーグルトに漬けるとか牛乳とか果物とか、いろいろとガッテンしてみた結果、マイタケがぶっちぎりで最強だった。マイタケの前ではライバルですらないから。タンパク質分解酵素マイタケプロテアーゼは、超絶レベルで肉を軟やわらかくする

こういう比較をすると、ワインは? とかオイルは? とかいう人もいるけど、それもすでに某検証番組で検証済み。その結果の最終かつ最強がマイタケ。

前回は水を加えたマイタケジュースに肉を漬けたが、今回はもっとダイレクトに行く。マイタケをちぎって……

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ミキサーで粉砕じゃあ!

包丁でみじん切りにして、少量の水と合わせても良いぞ。

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できたマイタケペーストを、

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肉に塗る!

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「脱毛ワックスみたい」

こんな風なの? あ、そう。へえええ。

次、 エントリー3番! 肉やわらか粉末・業務用

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マイタケと同じくタンパク質分解酵素、こちらはパパイヤ由来のものが含まれている。さらに主成分はトレハロース

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トレハロースは砂糖と同じく糖の一種。タンパク質は熱が加わったら凝固するけど、トレハロースはタンパク質凝固を抑制する

つまり焼いても固くならない。

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保水性も高く、肉の臭みも軽減させる。これを肉に振りかける。焼いた肉がパサパサするのはタンパク質凝固のせいだから、それを防ぎ、かつ肉汁が抜けないように保水もするわけだ。

最後がエントリー4番! 炭酸水

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「炭酸で? なんで?」

PHが酸性に傾いてもアルカリ性に傾いても、タンパク質は分解する。タンパク質は中性なんだが、「酸性になる=プラスの電荷が増える」ということ。タンパク質を構成するアミノ酸がプラスに帯電し、プラスの電荷同士が反発して、ぐにゃぐにゃにからみ合っているアミノ酸がピンと伸びて外れてしまうわけだ。

「……」

まあいいや、とにかく肉の線維がほどけてやわらかくなるんだよ。では炭酸水に肉を漬けこもう。

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肉をソーダ水に漬け込んで、ひと晩経過。

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では手前にある炭酸水バージョンからやってみましょう。

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なんだか肉が白いな。ついでに炭酸水が真っ赤だ。

こりゃ肉汁、逃げまくりだろ。

まあいいや。焼くぞ。

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なんだろうな、これ。

やわらかいよ、やわらかくなっているんだが……水っぽい。味が薄い。肉汁が抜けちゃったんだな。漬けこむのが短時間ならいいかもしれない。

次、マイタケ!

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まずマイタケペーストを洗い流そう。茉衣ちゃん、よろしく。

「は〜い」

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ああ、切ってみるとわかるな。すでにやわらかい。

しゃっきりしてないもの。

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焼いて食べてみたら、これはおいしい。おいしくなっているが、キノコの味が強いな。おいしいけど、肉だけの味が食べたい人には向かないかも。

次はジャガード肉だ。

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ジャガードでスジ切りした肉は、見かけは変わらない。味は……やわらかいというよりは、粗いハンバーグみたいな食感だぞ。当たり前か、肉を切っているんだから。

最後に「肉やわらか粉末」!

うーん、これもタンパク質分解酵素の作用で確実にやわらかくなっているものの、個人的には……どうも肉が甘く感じられる。トレハロースを振ったのだから当たり前だが、これはステーキよりもハンバーグとかに合うのかもしれない。

塩コショウを合わせても駄菓子みたいな甘さになってしまった。

味を客観的に見てもらうために、お店のお客さんに協力してもらった。

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「マイタケがおいしいですね。他は、うーん……」

ですねえ。炭酸は味が抜けてガッカリ、スジ切りは肉質が別物で、マイタケが一番マトモにおいしくなっている。とてもやわらかい。風味はキノコ味のソースなりをかければOKでしょうね。でも、なんかモヤモヤする。

「何もしない、最初の肉が一番おいしかった」

企画をちゃぶ台返しかよ。まったく。ん? なに?

「そういえば、肉をもんだらおいしくなるってテレビで言っていたんですが……」

ホントに? 茉衣ちゃん!

「はい!」

じゃあ、肉をもんで!

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握りつぶすんじゃなくて、もむの!

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そうそう……どんな塩梅?

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うわ、見るからにぐにゃぐにゃだ。

「やわらか〜い」

15分ぐらいもみまくったもんな。よし焼いてみよう。

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おお? 肉がパンパンしてきたぞ?

「おいしそう」

よし、切ってみよう。

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これだろう!

うまいもんは見かけから違う。よし、食べてみよう……。これだ! 炭酸水に漬け込んだものと違って肉の味がしっかり残っているし、ジャガードを使った肉のように線維もばらけず、マイタケやトレハロースを使ったときのような無駄な風味もなく、それでいてやわらかい。

これはおいしいぞ。ヒレ肉みたいだ。

「私の愛情の勝利ですね、うふふ」

結論!

ひたすらにもむ。最低15分はもむ。

するとだんだんスジや肉の硬さがわかってくるので、そこを重点的にもみほぐす。

すっかりコリがとれたなと思ったら焼く。これである。

翌日、もんだ肉の余りを焼いたら、パサパサで食べられなかった。組織がもみほぐされたために、肉汁がひと晩で全部抜けてしまったのだ。

食べる前にもむ、現時点で最強の安肉ステーキのうまい食べ方である。

※ちなみに肉の臭みは、焼く時にニンニクを一緒に炒めたり、塩コショウ以外にもローズマリーなどのハーブを使い、表面をしっかり焼き固めることで気にならなくなる。ようは焼き方なのだ。強火で表面を一気に焼き固め、一度火からおろして1〜2分程度休ませ、肉の中に余熱が通ったら再び火にかける。これを数回繰り返すとおいしいミディアムレアになる。

※肉をやわらかくするためのテンダライズ処理(針状の金属の刃などを用いて,肉の原形を保ったまま,筋及び繊維を短く切断する処理)をする場合は、雑菌に注意し、肉の中心部までしっかり加熱するようにしましょう。

書いた人:川口友万

川口友万

サイエンスライター。科学情報サイト『サイエンスニュース』の編集統括。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。東京・武蔵小山で、毎週日曜日のみ、肉に電気を流して食べたり、ワインを超音波で振動させて飲むイベントバー『科学実験酒場』を主宰。 サイエンスニュース:サイエンスニュース 科学実験酒場:科学実験酒場 友の会 アシスタント高実のブログ:高実茉衣の♥こあく茉衣にゃん茉衣ペースブログ♥

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