「トランプ現象」は突然生まれたものではなかった?
ついに現地時間1月20日、トランプ新大統領政権が誕生します。その動向に国内外から注目が集まるアメリカですが、皆さんの中でアメリカとは、いったいどんなイメージでしょうか。私たちが普段よく観るアメリカ映画では、弱く貧しい人々、肌の色が違うさまざまな人々が力を合わせ、差別や不正と戦う姿を通して自由、平等、進歩、ヒューマニズムを表現している印象が強いかもしれません。
しかしそれに対して映画評論家の町山智浩さんは著書『最も危険なアメリカ映画』の中で、次のように指摘しています。
「それはいわば”よそゆき”の顔。その陰には、差別的で狂暴で愚かなアメリカの素顔を描いた映画もあった」(本書より)
本書ではそんなアメリカの”素顔”が映し出されてしまった映画の数々が登場しています。そしてその中には、あのウォルト・ディズニーが敵国の首都を直接爆撃する戦略を政府に提唱した、いわば”東京大空襲のススメ”とも言える映画「空軍力による勝利」も紹介されています。
この映画の原作本の著者であるアレクサンダー・P・デ・セヴァルスキーは第一次世界大戦時、帝政ロシア軍のエースパイロットとして活躍していました。彼はロシア革命でアメリカに亡命した後、飛行機製造会社を設立し、空軍力の重要性を説いていたそうです。セヴァルスキーは南太平洋の小島に拠点を持っていた日本を”足を広げたタコ”に見立てて首都爆撃の必要性を訴えています。
「タコの足ではなく、頭を叩け。武器を作る工場を破壊しろ」(本書より)
これはつまり周りの島ではなく東京を襲撃せよ、ということに他なりません。
このフィルムは英国のチャーチル首相に送り届けられたあと、第32代アメリカ大統領であるフランクリン・D・ルーズヴェルトの元でも試写が行われました。さて、この作品がアメリカ軍の戦略爆撃にどれほどの影響を与えたかはわかりません。が、セヴァルスキーと敵対していたアメリカ海軍軍人であるリーヒ提督は回想録でも原爆投下をこのように批判していたそうです。
「女子どもを殺して戦争に勝ったとは言えない」(本書より)
この他にも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「フォレスト・ガンプ」など、有名作品の楽しさの裏側に秘められた密かな毒も暴かれています。本書を読めばアメリカをまた違った角度から眺めるきっかけになるかもしれません。
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