洋風居酒屋「Deseo de Estrella MAEDA」の”サングリア”が、ノスタルジーの世界へいざなう?【静岡】

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静岡人と”サングリア”

「“サングリア”といえば、紺碧(こんぺき)の海を望む洋館を思い出す」

そんな人は、きっと静岡市出身ではないかしらん。

ナゾナゾのような始まりになって恐縮ですが、それはさておき、みなさんは静岡市出身者は子どもの頃から“サングリア”に親しみがあるって知っていますか? あれ、またナゾナゾになってしまいましたね(笑)。

こんにちは。昔からナゾナゾがすこぶる苦手なメシ通レポーターの間覚です。

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謎解きをすると、実はくだんの“サングリア”とは、久能山東照宮にほど近い海の目の前に建つ老舗のスペイン料理レストランの店名のこと。もう40年以上の歴史があるレストランは、昔と変わらない趣のある洋館の佇まいで、とても存在感があるんですね。

とくに、まだ洋風の建物が珍しかったおよそ40年前、僕を含めて当時の静岡の子ども達にとって、その海を望む洋館の存在は、インパクトがあったんです。おしゃれなフレーズがツボだったのか“サングリア~”って連呼しながらチャリンコを乗りまわす、謎の”子ども暴走族”まで出現するくらい、少なくとも僕の小学校では、”サングリア”のことはほとんどの子どもが知っていたと思うんです(まあ極論かもしれないですけどね)。

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時が流れて、お酒が飲める年になって首都圏で働き出したころ、赤ワインに果物を漬け込んだ甘口のワインを「サングリア」ということを知って、僕はプチホームシックになったのを覚えています。「サングリア」という言葉の響きによって、あの洋館の映像とともに幼少期の淡い思い出が蘇るのです。

それ以来、お店に「サングリア」があると、ついついたのんでしまうようになり、「サングリア」がうまいというお店の噂を聞きつけたら、行ってみずにはいられない大人になりました。ワインは、それほど興味なかったんですけどね。「サングリア」はそんな風に、ずっと別枠のお酒でした。

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だから先日、飲食店を営むIから「美味しい洋食とサングリアを出す洋風居酒屋さんがありますよ」と、女性2人で切り盛りする「Deseo de Estrella MAEDA」を紹介してもらったときも、さっそく次の日には行ってみようと決心したのは、言うまでもないのです。

連日大繁盛の 店内は、女性オーナーのお店らしい可愛らしい雰囲気

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JR静岡駅から歩いておよそ8分。飲食店が建ちならぶ常磐町の味わい深いテナントの1階に「Deseo de Estrella MAEDA」はありました。外観は、格子状の細工を施した外壁が印象的な、まるで雑貨屋さんのような佇まい。

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おそるおそる店内に入ると、接客担当の上村真由美さんが、女性らしい柔らかい笑顔で出迎えてくれました。

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かわいらしい照明や絵本のキャラクターのネズミのポスターなど、さすがは女性の切り盛りするお店といった空間が広がります。

4人掛けのテーブル席が3つ。カウンター6席。奥には6人まで座れる座敷の個室も設けられています。週末ともなると、予約なしではなかなか入れないほど、大繁盛のお店。訪れたのは平日、オープン直後の午後6時。それにもかかわらず、続々とお客さんが入店してきます。

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おもしろいのは、奥の調理場だけ雰囲気がちがうこと。オーナーで料理人の前田裕美さんが、もくもくと調理中のガスコンロの前には、使い込まれた鉄のフライパンがならぶ、どことなく男性の調理場の雰囲気。ショートカットの前田さんの真剣な顔からも、料理に一切妥協しない、男前の職人気質の風情がみてとれます。

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お店はオープンして、まもなく6年。以前から洋風居酒屋さんをやりたかったという前田さんが、上村さんを誘って以来、今まで二人三脚で人気店を築き上げてきました。

白、赤それぞれの「サングリア」と、洋風の創作料理のマリアージュ

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さて、洋風居酒屋さんでありながら、ワインから焼酎まで揃う「Deseo de Estrella MAEDA」。料理のメニューも豊富で、「スパニッシュオムレツ」といったスペイン料理の定番から、「レンコンの土佐揚げ」など鰹節を使った焼酎や日本酒に合う一品まで、さまざまな創作料理を食べることができます。

今回は、一杯目は白、二杯目と三杯目は赤の「サングリア」をいただくことにして、食べ物のメニューは、前田さんのアドバイスをいただきながら白に合う「アメーラトマトとアボカドのサラダ」と、赤に合う「アスパラベーコンの1本巻きフライ」と「ガーリックチキンソテー」の三品を注文しました。

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▲お通し スパニッシュオムレツ ポテトサラダ 鯵のお刺身 (500円)

まず驚くのが、お通しとは思えないボリューム。これを楽しみにしている常連客も多くいるようで、スパニッシュオムレツとポテトサラダと日によって違うお刺身のバラエティーに富んだ三品のお通しのスタイルは変更することができないとのこと。洋から和まで一皿で楽しめるのがうれしいところです。

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▲サングリア白(550円)

甘口の白ワインに、パイン、巨峰、オレンジ、グレープフルーツを漬け込んでいます。さわやかな甘みの中に、グレープフルーツなどのほのかな苦味もあるので、サラダなどと合わせると相性も抜群の一杯です。

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▲アメーラトマトとアボカドのサラダ(1,000円)

静岡産の糖度の高いアメーラトマトとアボカドを、奥深いうま味があとをひくアンチョビとオリーブの温かいソースでいただきます。女性の作る料理らしく、彩り豊かで美しい盛り付けが目を引きます。ソースには、ケイパー、胡桃、イタリアンパセリなども存在感たっぷりに入っていて、トマトのみずみずしさと、アボカドのねっとり感とともに、ソースの食感も楽しい一品です。

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▲サングリア赤(550円)

甘口の赤ワインに、イチゴ、パイン、洋梨を漬け込んでいます。濃厚なフルーツの甘味がミディアムボディーの赤ワインの味わいに深みを与えています。適度な重厚感もあるので、お肉料理や揚げ物に合わせても、相性◎です。

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▲アスパラベーコン1本巻きフライ(850円)

特大サイズのアスパラを覆い隠すほどにベーコンを巻きつけて揚げています。アスパラに巻きつけるベーコンに使っているのは、なんとパンチェッタ。アスパラのシャキシャキの食感とうま味の濃いパンチェッタの塩味が絶妙に絡み合います。セロリとマヨネーズのソースが、ほのかに爽やかなアクセントになっています。

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▲ガーリックチキンソテー(1,080円)

チキン、じゃがいも、パプリカ、ズッキーニを、ニンニク、しょう油、バターでシンプルにソテーしています。それぞれ大きめにカットしていているので、シンプルな味付けの中に素材の味わいがいきています。ニンニクの効いたガツンとくる一品のため、ほどよく重みのある赤の「サングリア」とも相性はバッチリです。

”サングリア”と前田さん

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カウンターで「サングリア」をいただきながらほろ酔い気分でいると、料理がひと段落して柔らかい表情に戻った前田さんが、気さくに声をかけてくれました。

「いかがですか『サングリア』の味は。」

──とても美味しいです。やっぱり「サングリア」は人気があるんですか?

「そうですね。常連さんなんかは、こればっかりという人もいます。季節によって漬け込む果物が変わって旬の味わいを楽しめるので、飽きずに飲んでもらっているのかもしれませんね。」

──料理もすごく美味しいです。なにより他にはないオリジナリティーを感じますけど、こだわりはありますか?

「ありがとうございます。もともと私は若い頃から自分のお店を持ちたい夢があって、スペイン料理やイタリア料理をはじめ、いろいろな料理を勉強してきました。なので、せっかくだから、それらの知識を全部いかしたいですし、それをいかせるのは洋食居酒屋さんしかないと思ったんです。料理を作るときに大切にしているのは、心を込めて一から手作りというのはもちろん、うちのお店ならではのひと工夫やひと手間を加えることですね。」

──なるほど。ところでボリュームもかなりありますね。

「それぞれの料理が4人くらいでシェアしても全員が満足できるボリュームがあると思います。できればがっつり食べたいという男性にも、もっと来てもらいたいですね。」

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その後もいろいろ話を聞いていくうちに、びっくりしたことがひとつ。それは前田さんが料理をはじめたのは、冒頭で紹介した、あのスペイン料理レストランの“サングリア”だったということ。

なんでも、あこがれの料理人が“サングリア”にいて、彼にスペイン料理をイチから教えてもらったとのことで、スペイン料理への思い入れもひとしお。「Deseo de Estrella MAEDA」のメニューにスペイン料理が多いのもうなずけます。

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「やっぱり“サングリア”は、静岡人の心を動かす魔法の言葉じゃないかしらん

前田さんの“サングリア”にまつわるストーリーを聞いた後に、ふとそんなことが頭をよぎり、再び「サングリア」に身をゆだねてノスタルジーにひたる僕。

三杯飲んで酔いがまわってきたんでしょうね。ガラス窓にうつる薄ら笑いのしまりの無いオジサンに目をやると、「もう限界だからおいとましましょ」と言われているようで、思わず我に返りました。

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それにしても、お通しに、ボリュームたっぷりの三品と三杯で5,080円は、とってもお値打ちです。今度は、かつての”子ども暴走族”の一味を連れてきて、いろいろな料理も楽しみたいなと思いつつ、お店をあとに。

冷たい風が吹く師走の夜空には、ノスタルジックな夜にふさわしく満天の星空が浮かんでいました。

お店の情報

Deseo de Estrella MAEDA

住所:静岡県静岡市葵区常盤町1-2-9

電話番号:054-250-8228

営業時間:18:00~24:00

定休日:月曜日

※金額はすべて消費税込みです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

書いた人:間覚(かんかく)

間覚

老舗出版社出身のライター件編集者。間隔ではなく感覚でもなく間覚。間を読みバランス感覚に優れるわけでなく、実際のところはお酒の飲みすぎによる皮膚感覚の低下と頻尿によるトイレに行く間隔の短さに悩みつつある初老。ライフスタイル系雑誌や新聞社などの紙媒体での執筆のほか、自社で雑誌を出版していたこともある。

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