“2番じゃダメ”なスパコン「京」 開発チームの隠された工夫とは
精神論で捉えられがちなチームワークを論理的な視点で考えることで戦略的な課題解決や目標達成を目指す「ロジカルチームワーク」。このロジカルチームワークを推進するロジカルチームワーク委員会(サイボウズ株式会社による運営)は2011年11月25日、「チームワーク・オブ・ザ・イヤー2011」の表彰式を行った。
「チームワーク・オブ・ザ・イヤー」は、その年にチームワークを発揮し顕著な実績を残したチームに贈られる。今年は、独立行政法人理化学研究所の京速コンピュータ「京」開発プロジェクトチーム、日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す」プロジェクトチーム、羽田空港国際線旅客ターミナルの旅客サービスプロジェクトチーム、パナソニックグループの三洋電機「GOPAN」プロジェクトチームの4チームが受賞した。
■広く知ってもらうことに力をいれた「京」
今年6月と11月と2期連続で演算速度世界一の座を獲得したスーパーコンピュータ「京」。その開発プロジェクトリーダーである渡辺貞氏は、「チームは新しいアイデアが出たとき、それをどのように受け止めたか」との質問を受けると、
「我々は国のお金、税金でやっている。したがって、奇抜なアイデア、新しいアイデアはどちらかというと否定される。仮に奇抜なアイデア、新しいアイデアを採用しようとすると、そのベースになった理由、やることによるメリットの説明が必ず求められる。事業仕分けで『2番じゃダメなんですか』と言われたのも、我々がプロジェクトの意義や成果を正しく説明できていなかったところにある」
とし、「チーム中でもコンセンサスを取らなければならない。コンセンサスで何が大切かと言うと、情報を共有すること、あるいはターゲットをクリア(明確)にすることに気を付けている」と話した。
さらに、渡辺氏は「広く知ってもらうこと」をキーワードに挙げた。現在、神戸にある「京」開発プロジェクトの拠点近くの駅名は、「京コンピュータ前」だ。元々の駅名は「ポートアイランド南」だったが、渡辺氏らが「市が新しい駅名にすると聞きつけ、市長に陳情して採用してもらった」のだという。また、渡辺氏は「仙台、京都、東京など全国行脚をして市民を集めた説明会を開いてきた」と、税金が投入されたプロジェクトならではの苦労話を語っていた。
世の中のニーズを的確に把握し、モノを開発しつつ、関連業者などが積極的に協力・PRしてくれるような商品を見つけ出す。あるいは商品開発をするだけでなく、その商品の良さや意義を関係者や消費者に伝える努力。また、開発チーム内に留まらず、関連業者、あるいは消費者まで巻き込む広い意味でのチームワークを意識することでよりよい結果を残す。これらチームワークとしての成功事例は、他のさまざまなビジネスにも応用が利きそうだ。なお、ロジカルチームワークのホームページからの一般投票を通して決定する最優秀賞には、「京」開発プロジェクトチームが選ばれている。
◇関連サイト
・ロジカルチームワークの公式ホームページ
http://team-work.jp/
・[ニコニコ生放送]4チームのパネルディスカッション部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv71968047?po=news&ref=rews#2:05:40
(大塚千春)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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