広島優勝の原動力!良いチームを作るための信頼の醸成とは?
前評判の低かった広島が優勝!その理由は?
9月10日、プロ野球セ・リーグで広島カープが25年ぶりの優勝を決めました。
シーズン前の評論家による順位予測では、8割方がBクラスとし、優勝を予想したのは数名に過ぎませんでした。
理由は、昨季の戦いぶりにあります。
2015年は近年まれに見る充実した戦力を擁し、優勝への期待感が高かったにも関わらず、シーズン中に一時は最下位に落ち、最終成績は4位に終わりました。
この結果に対して、監督就任1年目だった緒方孝市氏へ、厳しい批判の声が向けられました。
特に地元の広島ファンの落胆は大きく、采配ミスを重ね戦力を活かしきれなかった監督を更迭すべきだという声が高まりました。
また、昨年の緒方監督は、ファン、選手、報道陣全てに対してフレンドリーな態度ではありませんでした。
試合後の取材では、質問を一切受け付けずに一方的に話をして終わらせる独演会方式をとり、選手とのコミュニケーションをコーチに任せて自分で直接話しかけず、ホームでの最終戦で恒例となっていた監督からファンへの挨拶もしないという具合です。
さらに負けた試合後のインタビューでは、選手のせいにするような発言もありました。
こうした姿から、緒方監督は「独りよがり」で「ぶっきらぼうな性格」だというイメージが周囲に出来上がっていました。
ところが、昨年オフ、松田オーナーが強い姿勢で、2016年も引き続き緒方体制を全面バックアップすることを打ち出すと同時に、緒方氏にもっと成長するように直々にゲキを飛したことで、監督としての変化が生まれたといいます。
チーム内に信頼が醸成されたコミュニケーション・スタイルの変化
具体的には、主力選手を食事に誘い、じっくり話合いながら目指す野球の共有に努めました。
また、選手に対しては、起用においては平等を心掛け、アドバイスを伝えるときは、試合後の監督室への呼び出しはやめ、開放感のあるグラウンドで、翌日に声を掛けるように変えました。
試合後のインタビューでも、活躍した選手を褒め称えるのは当然として、陰で貢献した選手についてもスポットライトを当てることも忘れず、負けても『選手は悪くない。オレの責任』と潔く振る舞うようになったのです。
こうした緒方監督のコミュニケーション・スタイルの変化によって、昨年のチーム内に欠けていた「信頼」が今季は生まれ、戦力的には前田投手のメジャー移籍によって昨季より劣るにも関わらず、チーム力をアップさせ、優勝に結び付けたのが、今季の広島カープです。
信頼を生み出すコミュニケーションには言うことよりも聞くことが大切
コミュニケーションは、意思疎通のために不可欠ですが、その語源はラテン語のコミュニカーレ(共有する)であることを踏まえると、信頼を築くためのコミュニケーションには、単に指示や事実を「伝えること」以上の深さが必要です。
では具体的に、優れたコミュニケーションとは、何を交換し共有するのでしょうか。
それは、お互いの「気持ち」です。
人間は、自分の気持ちが分かってもらえたという安心感が出来て、はじめて相手に心を開くのです。
そして、相手はどういう気持ちなのだろうかとか、この人の言うことを聞いてみようという信頼を生むのです。
今季の緒方監督は、口数が増えたり選手を褒めるようになったりしたことで、発信力が高まりましたが、信頼を生み出すコミュケーションにおける最重要ポイントは、発信力ではありません。
「どんな褒め言葉に惑わされない人間でも、自分の話に心を奪われる聞き手には惑わされる」とは、ノンフィクション作家ジャック・ウッドフォードの言葉ですが、言うことより聞くことの方がもっと大切なのです。
「士は己を知る者のために死す」とは、よく言ったものです。
ただし、コミュニケーションを通じて気持ちを共有し信頼を培うことは、一朝一夕で出来る簡単なことではありません。
でも、一方で信頼を培うことに向けて、小さい一歩を踏み出すことはそれほど難しくないはずです。
要は、もう少しお互いを「知る」「関心を持つ」ことでよいのです。
「知る」ことが、お互いの仕事、そして人間性について関心を持つことに繋がり、その関心が、価値観を知ること、さらには信頼へと高まっていくからです。
仕事や家庭において、ますます高いコミュニケーショ能力が要求される時代になる一方で、能力の欠如を嘆く人が増えていますが、原因は、コミュニケーション能力を「自分の言いたいことを適切に、確実に相手に伝える力」だと誤解しているところにあります。
それはコミュニケーション能力のごく一部であり、しかも副次的なものに過ぎません。
信頼を生み出すコミュニケーションが、まず相手の話を聞き、事実だけではなく気持ちをくみ取ること、そして同時に自分の気持ちも理解してもらうことである以上、真のコミュニケーション能力とは、発信力ではなく、「コミュニケーションの場を起ち上げる能力」を意味します。
その意味で、今年の広島カープは、緒方監督が選手やスタッフとの間にアクティブな交流経路をいくつも持ち、真のコミュニケーション能力を発揮することで、チーム内に信頼を生み出した好例と言えるでしょう。
(清水 泰志/経営コンサルタント)
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