世界平和にも貢献!? 電力を低コスト化する「超伝導直流送電」とは

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「超伝導直流送電」を研究する山口作太郎教授

  新しい電力網の技術である「超伝導直流送電」を研究している中部大学の山口作太郎教授は2011年11月16日、ニコニコ生放送「世界を変える『超伝導直流送電』って何ですか?」に出演。山口教授は、電力コストが低下するという超伝導直流送電のメリットを語りつつ、「これから10年の技術の進歩は非常に楽しみ」と実用化に期待を込めた。また山口教授は、超伝導直流送電の普及によって、国家間の対立が抑止される可能性にも触れた。

 超伝導直流送電とは、超伝導材料などの新しい技術を用いた送電システムのことだ。山口教授によると、現在主流の交流送電方式では送電の際に電気が熱となり、全体送電量の約6%が損失するのに対し、超伝導直流送電ではその損失が現行の10分の1以下に抑えられるという。

 超伝導直流送電の技術を導入しようとする一例として、最近ではドイツなどがけん引する「DESERTEC(デザーテック)」と呼ばれるプロジェクトがある。デザーテックでは、北アフリカや中東の砂漠に太陽光や風力の発電施設を作り、ヨーロッパとネットワークを結び、そこから送られる電力をヨーロッパの電力源の1つにする。山口教授によると、デザーテックの送電部分に超電導直流送電技術を採用しようとする動きがあるそうだ。

■超伝導直流送電は国家間の対立を抑制する!?

 番組では、「日本発! 世界を変えるエコ技術」などの著書を持つ山路達也氏が「超伝導直流送電の技術が実用化されて、普及して、低コストで使われるようになった時に、世界でどのような変化が起こると思うか?」と山口教授に質問をぶつけた。これを受けた山口教授は、「(太陽光のような)再生可能エネルギー(で発電した電力)を世界中で結ぶことを考えているが、太陽が当たっているところから送電をして暗い所へ送るようなイメージになる。地球はくるくる回っているので、送電する向きが逆方向に変わる」と説明した上で、

「例えば、隣の国がけしからんと送電線を止める話もあるが、止めると12時間後には自分の国が困るわけだ」

と述べ、国家間の対立をけん制する抑止力になるのではないかと示唆した。さらに山口教授は、米ソ冷戦時代の米国で、抑止力としての大陸間弾道核ミサイルが「ピースキーパー」と呼ばれていたことになぞらえ、「『ピースキーパー』と呼んでいいんじゃないか」と語った。

 実用化に大きな期待が寄せられる超伝導直流送電。山口教授の研究所では現在、200メートルのケーブルで実験中だという。山口教授は「あと1年くらいで200メートルで取らないといけないデータが取れる。その次に2キロぐらいに伸ばしたい。企業と本格的に一緒にやるようにしていって次は20キロぐらいのものを作りたい」と語り、実用化に向けた展望を明かした。山口教授超伝導「これからの10年の技術の進歩は非常に楽しみ」と語り、新電力網の実現へ期待を寄せた。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 「超伝導直流送電が普及した時に世界で起きる変化は?」から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv70961672?po=news&ref=news#42:21

(安田俊亮)

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